2025年の夏は日本列島の広範囲に津波警報が発表されたり、線状降水帯が相次いで発生し特別警報が発表されたりするなど、災害級の現象が多く起こりました。地震や風水害から身を守るために、非常用持ち出し品を備え、ハザードマップを確認するなど、“人間の”防災への意識は高まっているように感じます。しかし、飼っているペットについてはどうでしょうか。

一般社団法人ペットフード協会の調査によりますと、犬や猫の飼育頭数は約1600万頭(推計)。15歳未満の子供の人口は1366万人(総務省/2025年4月1日現在)なので、今やペットの数は子どもの数よりも多くなっています。

しかし、ペットに対する備えができている人はそれほど多くないと思います。災害からペットを守るために備えておくべきこと、ペットを飼っている人と飼っていない人それぞれにできることとは一体どんなことでしょうか。

ペットは原則「同行避難」 環境省が定める理由は大きく2つ

災害が発生し避難が必要となった際、ペットを避難所に連れて行ってもいいのでしょうか。その答えはイエスです。「避難をする際には、飼い主はペットと一緒に避難する同行避難が原則となる」と環境省によって決められています。(ただし、ヘビやトカゲなどの爬虫類は温度管理が難しく、逃げ出すと危険な場合があるので、避難の受け入れが難しい自治体が多いようです)

大きく理由は2つあります。

1つ目は、ペットとして飼われている犬や猫の多くは日本固有の種ではないからです。災害時に家屋が壊れ、ペットが外に逃げてしまうと、野生化して住民に危害を加えたり、生態系が崩れたりするおそれがあります。

2つ目は、飼い主のメンタルにとって大きなダメージとなってしまうからです。ペットの居場所や生存が確認できない状況に陥り飼い主の精神的負担が大きくなることで、飼い主の健康に悪影響を及ぼし、最悪の場合、命を落とす原因となってしまうこともあります。

同行避難する上で飼い主に求められること

ペットとともに避難する際に飼い主が備えておくべきことは多くあります。まずは「ペットフード」と「水」です。これは人間と同じですが、人間は最低3日分の備えを求められるのに対して、ペットは2週間分の備えが求められます。当然のことですが、避難所に提供される物資は人間のものが最優先です。ペットの食料や水は後回しで、届くかどうかもわからないからです。

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また、避難所では家のように放し飼いはできないので、首輪やリード、ケージも必要です。環境が変わりストレスを抱え食が細くなることで首が細くなることがあるので、調節可能な首輪だと安心です。

そして、ケージの中できちんと過ごす、他人に吠えない、咬まないなどの最低限のしつけやワクチンの接種を済ませておくことも、同行避難する上で非常に大切です。

その他、トイレ用品や常備薬など普段から使用しているものを準備しておきましょう。

さらに備えを完璧なものにするために、防災用品を季節に合わせて“衣替え”してほしいです。夏は暑さや熱中症から身を守るために、水を多く準備し冷却グッズを備える、冬は寒さから身を守るために、暖を取れるグッズを準備するなど、服と同じように、人間もペットも季節に合わせた防災用品を準備しておきましょう。

ペットを飼っていない人にこそ知ってほしい同行避難

ペットを飼っていない人からすると、避難所に犬や猫が多くいるということに最初は驚くかもしれません。災害時に人間が大変な思いをしている中、ペットの世話をすることに疑問を抱く方もいらっしゃると思います。もちろん避難所では全てにおいて人間が優先されます。しかし、飼い主にとっては、ペットも大切な家族の一員です。飼い主が衛生面や騒音に関する課題にしっかりと取り組む一方で、ペットを飼っていない人も、人間とペットの共生に理解をしてほしいと考えます。

ペットは時に“癒しの存在”となります。特に子どもたちにとってペットは厳しい避難所生活の中で笑顔をもたらす大きな存在となる可能性があるため、同行避難はペットを飼っていない人にとってもプラスに働くことがあると考えられます。

まずはペットとの同行避難訓練に参加を

いざ災害が起こった時、練習なくしていきなり思うようには動けません。自治体によってはペットとの同行避難訓練が実施されているので、ペットを飼っている人もそうでない人も、訓練に参加し、本番のイメージをしておくことが大切だと考えます。

ペットとともに避難することは思っている以上に大変であることや、避難所にもっていかなければならない無いと困る物など実際に手や足を動かすことではっきりとわかるようになります。

ペットを飼っていない人も、自分には何ができるのか、人間とペットが避難所で一緒に暮らす上で考えられるトラブルとその対策など、見えてくるものがあると思います。

災害時は普段以上に助け合うことが大切です。ペットを飼っている人もいない人も、どちら側の人も円滑に避難所生活ができるよう、ペット同行避難について、9月1日「防災の日」にぜひ考えてみてほしいです。

【執筆:東杜和/ウェザーマップ気象予報士・ペット災害危機管理士2級】 

フジテレビ気象センター
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最新の気象・防災情報や、「なぜそういったことが起こるのか?」現象の背景を徹底解説。フジテレビ気象センターに所属する気象予報士9人の他、日本気象協会、ウェザーマップとも連携し、天気を味方につけて毎日が楽しくなる情報や、つい誰かに話したくなるような情報などお届けします。