福島第一原子力発電所で処理水の海洋放出が開始されてから8月24日で2年となる。
現在、福島第一原発では2025年度第3回目(通算14回目)の放出完了に向けた作業が進められていて、2025年8月25日にも今回の放出分が完了する見通し。
福島第一原発での処理水の海洋放出は2023年8月24日に開始された。
1号機から3号機の原子炉の中に残される事故で溶け落ちた核燃料が固まった“燃料デブリ”に、地下水や雨水などが触れることで発生する“汚染水”から大部分の放射性物質を取り除き“処理水”としたうえで、海水で薄めて海に放出する。
処理水の放出は、敷地を圧迫する1000基あまりのタンクを減らし、廃炉のためのスペースを開けることが大きな目的のひとつ。2025年8月の時点で、処理水等の貯蔵量は放出開始前から約4%減少している。貯蔵されている水の中には、放出の基準を満たせていない“処理途上水”も含まれている。
2025月2月からは、放出によってカラになった溶接型タンクの解体も始まっていて、まずは12基を2025年度中に解体する見込みとなっている。空いたスペースには燃料デブリの取り出しに関する施設を建設する計画。東京電力は廃炉の進捗に伴い、必要な施設を建設するためのスペースを作る計画を立てながらタンクの解体を実施していきたいとしている。
放出から2年となる2025年8月24日、福島第一原発では2025年度第3回目(通算14回目)の放出完了に向けた作業が進んでいる。
同日にも今回の放出計画分が貯められているタンクをカラにし、翌8月25日には放出に使った設備を放射性物質を含まない水で洗い流して今回の放出を完了する計画。今回の放出が開始された8月7日からの19日間で約7,800t(タンク約8基分)が放出される見通しで、2年間で放出された処理水の量は約11万t(タンク約110基分)となる。
2025年度は、今回の放出分を除き、残り4回の放出が計画されている。これまでに海洋モニタリングで異常などが確認されていないことなどから、放出する処理水に含まれるトリチウムの濃度を2024年度よりも高くする方針。東京電力は第一原発周辺海域で海水のトリチウム濃度測定を実施していて、発電所から3km以内で700ベクレルを検出した場合には放出を停止することとしているが、これまでにこの指標に達したことはない。
周辺の海域への影響は確認されていないが、前回(通算13回目)の放出では、竜巻の恐れや津波注意報・警報への対応により当初の計画よりも2日ほど遅れての放出完了となった。
処理水の海洋放出は、放出前の水をためる水槽と海水面の高低差を利用して海に流れるようになっているため、海面が高くなって水が逆流してしまう恐れがある場合や、設備の安全性を確認すべき場合には放出をとめることが定められている。
震度5以上の地震や津波注意報、竜巻注意情報(発生確度2)、高潮警報などで放出を手動停止することが決まっていて、これまで2024年3月にも地震により手動停止したことがあるが、放出開始以降、予定よりも完了が遅れたのは初めてだった。
また、東京電力は2025年7月10日に、異常が確認された場合に放出を緊急停止するための「緊急遮断弁」を動かす通信ケーブルのうち、1つの表面に長さ3cmほどの「削れ」による損傷があったことを公表している。緊急遮断弁を動かすための系統は2つあるうえに、損傷があったケーブルもすぐに予備に切り替えたため問題はないとしているが、放出完了時期として掲げている2051年まで設備の劣化や損傷による不具合が起きないよう向き合っていくこととなる。
東京電力福島復興本社の秋本展秀代表は、8月6日に福島市で開いた会見で「まもなく放出開始から2年を迎えるが、これからも1回1回が真剣勝負で緊張感を持ってやっていく」「時間が経過して回数を重ねると無意識のうちに慣れや隙が生まれがちになるが、それは絶対あってはならない」と強調した。
2年前の処理水の海洋放出に伴い、中国が日本産海産物の輸入を全面的に禁止したことなどから、ホタテやナマコを中心に取引の中止をはじめとする損害が発生。中国は2025年6月、約2年ぶりとなる輸入再開を発表したが、処理水の海洋放出以前から禁輸措置が取られていた福島を含む10都県からの輸入停止は継続される。
東京電力は、福島第一原子力発電所での処理水の海洋放出をめぐり、2025年7月30日時点で約810件・790億円の賠償支払いを完了したと公表した。1か月ほどで約30件・40億円増加している。
国と東京電力が掲げる福島第一原発の廃炉の完了は2051年。
タンク内のトリチウムがゼロになるのも2051年とされている。