アメリカのトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の首脳会談が行われましたが、今後、どうなっていくのか見ていきます。
まずは会談の内容から振り返ります。
トランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談では、「安全の保証」についてウクライナに多くの支援が提供されること、そして、ここにアメリカも関与していくこと。
ヨーロッパの首脳を交えた会談では、領土交換の可能性も議論する必要があることなどについて議論が交わされました。
さらに、トランプ大統領は今後、プーチン大統領も交えた3者会談についても「順調に進めばできる」としていて、これに対しゼレンスキー大統領も前向きな姿勢を見せています。
そして、3者会談の時期について、ドイツのメルツ首相は「2週間以内に行われる」との見通しを示しました。
今回の会談で和平の合意に向けて進展したのか、そして現実的に3者会談はできるのか、ワシントンの千田淳一支局長、モスクワの土井若楠支局長とともに見ていきます。
宮司愛海キャスター:
今回の会談について、アメリカ国内ではどんな評価がされているんでしょうか?
ワシントン支局・千田淳一支局長:
アメリカメディアは、「トランプ氏とゼレンスキー氏が笑顔を交わして非常に和やかな雰囲気で会談が行われた」「関係者全員にとって安堵の展開となった」と伝えていて、今年2月の激しい口論から半年で関係は劇的に改善したと伝えています。ただ、合意内容を決める具体的な協議はこれからとなるため、領土問題も含めて和平への道のりは依然として大きなハードルが残っています。
青井実キャスター:
ロシアは今回の会談をどう評価している?
モスクワ支局・土井若楠支局長:
ロシア国内では、アメリカとの首脳会談の時ほど大きく報じられてはいません。そして、この首脳会談はプーチン大統領から提案があったとゼレンスキー大統領は会見で明かしましたが、これについて一部の専門家は、ロシア側から提案したという形をとることで、和平に対する前向きな姿勢を国際社会に示して、プーチン大統領が交渉で主導権を握る狙いがあるとの見方を示しています。
宮司愛海キャスター:
トランプ氏の側近がSNSに投稿した会談の時の写真が話題になっているが、これは何の写真?
ワシントン支局・千田淳一支局長:
首脳会談の際に示された地図で、ホワイトハウスが用意したもの。領土の譲渡や交換といった和平交渉の鍵となる地図で、ゼレンスキー氏はトランプ氏に対して、地図を指しながら戦況を伝えたといわれています。この場面のエピソードもゼレンスキー氏から説明があり、ゼレンスキー氏はトランプ氏に対して「地図を用意してくれてありがとう」と伝え、トランプ氏は「いい地図だろう」と応じました。さらに「どうやって持ち帰ろうか」「じゃあ、1つあげよう」というような冗談も交わされたそうで、それぐらい互いにリラックスをしながら現況を把握する会談だったということを象徴する写真といえます。
青井実キャスター:
気になるのが現実的になってきた3者会談の行方。会談が実施されるのか、されないのか、ロシアの狙いはどうでしょう?
モスクワ支局・土井若楠支局長:
ロシアとしては、ほぼ掌握したドンバス地域、あるいはクリミア半島の現状をウクライナ側に事実上認めさせる狙いがあるとみられています。そして、ロシアが最も懸念しているのは、ウクライナのNATO(北大西洋条約機構)への加盟です。これまでロシアは、ウクライナを西側諸国との緩衝地帯として位置づけてきたので、やはりこの交渉の中でNATO加盟を阻止することが狙いの1つとみられています。
青井実キャスター:
ゼレンスキー大統領はこれに反対しているわけだが、応じる可能性はあるんですか?
モスクワ支局・土井若楠支局長:
領土問題についてゼレンスキー大統領は、具体的な線引きや条件というのは明らかにしていません。また、領土の引き渡しはウクライナの憲法で原則禁止されているので、やはり交渉というのは難航することが予想されます。
一方、「安全の保証」に関しては、欧米が今回の会談でNATOの集団的自衛権に似た支援を提供しますと表明し、ウクライナもこれに対しては一定の評価を示しています。だからといってウクライナがNATO加盟を断念するのかというのはまだ分からないので、ロシアとの今後の交渉に与える影響も不透明です。
宮司愛海キャスター:
仲介者のトランプ大統領は今度どう出るのか、そして和平合意は本当にできるのでしょうか?
ワシントン支局・千田淳一支局長:
今日の会談でもヨーロッパの首脳からは、ロシアに圧力を求める声が上がったんですけれども、トランプ氏はその声に対してあいまいな態度を示しました。トランプ氏としても、ロシアを刺激せずに、とにかくゼレンスキー氏との会談、それから自身も含めた3者会談に持っていくということを最大の目標としていますので、和平合意に向けた領土問題やウクライナの「安全の保証」に関しても、ロシアの考えに耳を傾けながら妥協点を探る交渉が進められるものとみられます。
青井実キャスター:
山口さん、早ければ今月中ということになりますが和平の道は見えてくるものでしょうか?
SPキャスター・山口真由氏:
和平合意の1つのラインは見えてきたように思いますね。まずロシアが掌握しているウクライナの20%は譲渡を余儀なくされる。ただ、法的に国境を書き換えるのか、事実上の支配下か焦点となると思います。残りの80%については、和平維持部隊にアメリカがどれだけ加わるのか。米軍の駐留とかになるとロシアの反発が強まると思うので、そこのスキームも問題になってくると思います。
そして日本側の観点ですが、石破首相は会談を受けて、安全の保証については「現在進行形で進められている議論をフォローしながら、我が国に何ができるか、法制面、そして能力面も含めてよく検討して、しかるべき役割を果たす」と話しています。
宮司愛海キャスター:
日本は具体的にどんなことができると思われますか?
SPキャスター・山口真由氏:
できることは少なくても、法の支配という国際ルールを守っていくという声を上げていくべきじゃないかと思いますね。