北陸新幹線「敦賀ー新大阪間」のルート問題について、参院選後に急展開を迎えている。過去に検討していたルートを「机上の空論」と一蹴していた京都府選出の自民党・西田昌司参議院議員が、参議院選挙の結果を受け、一転してルートの再検証を行う考えを明らかにしたのだ。西田議員の真意はどこにあるのか―取材した。
参院選の結果で“流れ”に変化
北陸新幹線の延伸ルートをめぐっては、与党プロジェクトチームが2016年度に「小浜・京都ルート」で整備することを決定している。だが、京都府や京都市は、地下水への影響や高騰する建設費の費用負担に懸念を示している。

「米原ルート優位はあり得ない」
こうした背景で行われた7月の参議院選挙で、京都府選挙区では、滋賀県米原市につなぐ「米原ルート」を再検討するよう主張していた日本維新の会・新実彰平議員が、西田昌司議員を上回る票を獲得し、当選した。
この結果を受け、西田議員は7月31日、小浜・京都ルートだけではなく「米原ルート」についても再検証するよう国土交通省に求めたと、自身のYouTubeチャンネルで明らかにした。
ただ、西田議員はFNNの取材に対し「建設費の高騰は米原ルートも同じなので、米原ルートが優位になることはあり得ないと思う」と話している。

あくまで「小浜・京都ルート」優位性の確認のため
福井テレビの豊岡猛解説委員長は、次のように解説する。
【再検証するルート案とは】
西田氏は9年前の2016年に与党間で検討された3つのルートについて再検証する、としている。最終決定した「小浜・京都ルート」のほか、東海道新幹線に乗り入れる「米原ルート」、京都府舞鶴を通る「舞鶴ルート」の3つがそれに当たる。

【小浜・京都ルート決定の経緯】
建設費、工事区間、工期など。それぞれ優劣があったが、小浜・京都ルートは福井から新大阪までの所要時間が55分と短く、料金が最も安い。一方、米原ルートでは、北陸新幹線から東海道新幹線への乗り入れが困難ということもあって「小浜・京都ルート」に決定した。

【西田議員がルート再検証を主張する理由】
今回の参議院選挙の結果がその理由。京都選挙区では、北陸新幹線のルート問題が争点の一つになっていた。そうした中、米原ルートへの転換を訴えた日本維新の会の新人がトップ当選し、自民党の西田議員に大差を付けた。西田議員は米原ルートを求める声が強いことを受け「あくまで小浜・京都ルートの優位性を確認するため再検証を行う」と主張している。

地元・小浜は冷静な対応
小浜市を含む若狭地域では、経済界や住民らが一丸となって。、小浜・京都ルートでの早期開業を目指す新たな組織が発足。若い世代を巻き込んだ啓発イベントを開いたり早期着工を求める署名活動を始めたり新幹線誘致の運動が活発化している。
「ルートの再検証を行う」という西田議員の発言について、小浜市の杉本和範市長は「なぜ後戻りするのか捉えられがちだが、西田議員の発言の真意は、優位性を再確認して与野党一緒になって“小浜ルートしかないんだ”と確認した上で、一日も早く全線開業することだと感じている。そこを理解した上で、市民にもしっかり伝えなければと考えている」と冷静に受け止める。
さらに「どんな状況であっても、小浜・京都ルートは国益にとって必要なルートであり、日本の成長にも欠くことができないルートだということを強く訴えて一日も早い開業を国に働きかけていく」と強調する。

今後の展開について、福井テレビの豊岡解説委員長は「与党整備委員会は8月中に会合を開く予定だが、半年ぶりの開催となる。最も肝心なのは『京都での理解を得る活動』だが、参院選もあってなかなか進んでいない状況。ルートの再検証も大事かと思うが『早く大阪までつなぐ』という点では一致している。2026年度の認可・着工を目指すのであれば、ある程度スケジュール感を持って議論を進めていく必要がある」とする。
