この週末も長野県内の山岳では北アルプスなどで遭難が相次ぎました。7件が発生し、転倒、落石により3人が重軽傷を負ったほか、技量不足、体調不良、疲労により行動不能になった遭難者もいました。長野県警は「自分の技量に見合ったルート選びをする」「余裕ある登山計画を立てる」など注意を呼びかけています。
■転倒して負傷
2日午前、長野県の北アルプス北穂高岳では岩手県の67歳の女性が転倒して県警ヘリに救助されました。
救助されたのは岩手県の67歳の会社員の女性です。
女性は7月31日に2人パーティーで上高地から入山し、8月2日は北穂高岳から涸沢に下山していましたが、午前9時半過ぎに標高約2750メートルの南稜取付付近の岩場でバランスを崩して転倒、負傷しました。
同行者が山小屋を介して救助を要請し、午前11時20分過ぎに長野県警のヘリが救助して松本市内の病院に搬送しました。女性は右肩などを負傷していますが、軽傷とみられています。
■心臓マッサージで心拍再開
北アルプス中遠見山付近(標高約2000メートル)で大阪市の会社員の58歳男性が体調不良のため行動不能になり、ヘリコプターで救助されました。
男性は8月2日、2人パーティで中遠見山を下山中に体調不良になり行動不能になりました。
警察によりますと、通りがかりの登山者で女性の看護師が心肺停止の状態で倒れていた男性に心臓マッサージをして、心拍が再開しましたが、意識が混濁状態で、午前11時半頃、警察に救助要請しました。
長野県警ヘリが出動し、午後1時前に男性を救助、会話ができる状態だったということです。その後、男性は松本市内の病院に搬送され、命に別条はないということです。
■「道に迷った」行方不明に
長野県と群馬県にまたがる四阿山(あずまやさん 標高約2354メートル)では行方不明になっていた長野県佐久市の税理士の78歳男性が3日朝、発見されました。けがはない模様です。
男性は8月2日、仲間と3人で四阿山に入山しましたが、下山途中に別れ、その後、行方がわからなくなっていました。
8月2日午後9時前、同行者から「男性が山菜採りに行くと言って別れ、先に下山して待っていたものの、下りてこない」などと110番通報がありました。
3日午前6時から警察、消防、遭対協が捜索を開始する予定で、出発場所の登山口に先に着いていた同行者が午前5時頃、自力で下山してきた男性を発見しました。けがはない模様です。
男性は「道に迷った」などと話しているということです。
■転倒して骨折
北アルプスの涸沢では3日朝、下山中の東京の57歳の大学教授が転倒して動けなくなり、警察などに救助されました。
遭難したのは東京都文京区の57歳の大学教授の男性です。
男性は7月30日に単独で上高地から入山し、3日は涸沢から下山していましたが、午前6時過ぎに転倒して自力での歩行が出来なくなりました。
通りかかった登山者から通報を受けた、常駐の長野県警山岳遭難救助隊員と山岳遭難防止常駐隊員が男性を背負って下山し、午前9時半前に救急隊に引き継ぎました。
男性は松本市内の病院に搬送されましたが、右脚を骨折していたということです。
■体調不良で行動不能に
北アルプス蓮華岳では3日、縦走中の東京の51歳の公務員の男性が体調不良で動けなくなり、長野県警のヘリで救助されました。
遭難したのは東京都三鷹市の公務員の男性(51)です。
男性は3日朝、6人パーティーで山小屋を出発し、蓮華岳の山頂を経て「蓮華の大下り」を降りはじめましたが、午前8時半ごろ標高2400メートル付近で呼吸困難などで行動不能となり、同行者が警察に救助を要請しました。
長野県警のヘリが午前10時40分過ぎに男性を救助し、大町市内の病院に搬送しました。
パーティーは3泊4日の予定で8月1日に大町市の扇沢から入山し、針ノ木岳などを経て4日に七倉に下山する予定でした。
■落石で1人負傷 2人が技量不足で行動不能
北アルプス槍ヶ岳では登山者の神奈川県の男女3人が遭難して、ヘリコプターで救助されました。1人は落石を受け負傷、2人は技量不足により行動不能となりました。
3日、槍ヶ岳の北鎌尾根(標高約2450メートル)で横浜市の公務員の女性(60)が落石を受け負傷、いすれも会社員で横浜市の男性(61)と川崎市の男性(47)が技量不足により行動不能となりました。
午後0時20分頃、遭難した1人から「3人パーティで槍ヶ岳に向かっていたところ、北鎌のコル手前付近で同行者が落石を受け、頭から出血している」と110番通報がありました。また、男性2人も技量不足のため行動不能になったことから、救助要請があり、長野県警ヘリが出動し、午後2時前、3人を救助しました。女性は大町市内の病院に搬送され、左側の頭部にけがをしているということです。
男性2人にけがはありませんでした。
3人は2日、2泊3日の予定で上高地から入山していました。
■疲労のため行動不能
北アルプス烏帽子岳では東京都中野区の会社役員の67歳男性が疲労のため行動不能となり、救助されました。
8月3日午後5時頃、男性の同行者から大町警察署に「同行者が疲労で動けなくなり、救助要請します」と通報がありました。
男性は8月3日、北アルプス烏帽子岳のブナ立尾根を下山中に疲労のため行動不能になりました。
大町警察署山岳遭難救助隊員と長野県警本部山岳遭難救助隊員が出動し、3日午後9時20分頃、男性を救助しました。
男性は2日、2人パーティで扇沢登山口から入山していました。
■技量に見合ったルート選びを
この週末も長野県内の山岳では北アルプスなどで遭難が相次ぎました。7件が発生し、転倒、落石により3人が重軽傷を負ったほか、技量不足、体調不良、疲労により行動不能になった遭難者もいました。
長野県警によりますと、遭難の多くは、下山時に集中しています。特に今の時期は、気温や高度差で体力を消耗し、疲労とともに注意力も散漫となって、整備された登山道でも浮石やガレ場などでちょっとした不注意でバランスを崩して転倒することがあります。もうすぐゴールと油断しがちなタイミングこそ、最大のリスクが潜んでいると考え、最後まで気を抜かずに登山をするよう呼びかけています。長野県内は夏本番の厳しい暑さとなっていて、標高の高い山でも疲労や熱中症などで動けなくなることがあります。
県警は「自分の技量に見合ったルート選びをする」「余裕ある登山計画を立てる」「こまめに休憩を取り、意識して水分・エネルギーを補給する」「下山するまで体力や集中力を切らさない」ことなどを呼びかけています。