玉名市在住の荒木 聖憲(みのり)さん。『放浪の天才画家』山下 清の作品に感銘を受けて貼絵作家になりました。荒木さんが生み出す作品の魅力に迫ります。

『放浪の天才画家』として知られる山下 清。生誕100年を記念した作品展が熊本県立美術館本館で開催中です。

約190点が並ぶ会場に、玉名市から訪れた青年がいました。

玉名市在住の貼絵作家、荒木 聖憲さんです。

【貼絵作家 荒木 聖憲さん】
(『パリのサクレクール寺院』解説)
「ここの上の屋根の部分、光の当たっている部分と影になっている所の白からグレーになって、そのグレーを(境界の)線に使って影になる所をまた濃いグレーを使って、丸みを帯びた表現にしている。〈ここ、すごいな〉といつも思うんですよね」
(『ゆり』解説)
「花の絵の背景部分、黄色だけ貼ると明るすぎるので、たふん黒で抑えていると思うんですよ。こっちの下の方、黒だけだと暗すぎるので、たぶんちょっと明るい色をつけて、バランスを図ってるんじゃないかな」

3歳児健診を受けて以降、『軽度の知的障害』や『自閉症』と診断されました。そして、中学2年生の時にテレビドラマで山下清のことを知り、貼絵に興味を持ちました。

【貼絵作家 荒木 聖憲さん】
「特別支援学級の担任の先生に話したら、画集を買ってくれて。いろいろ調べていくうちに自分と同じ障害を持っていると知って。〈こんなすごい人が絵を描いていたんだな〉と思って。〈自分も同じようなことができるかもしれない〉と思って、頑張ってきました。会いたかったですね。いろいろ聞きたかったですね。自分にいいことを教えてくれた存在というか、(その存在が)なかったら、今の自分はなかったと思いますね」

(荒尾市/旭製作所)

荒木さんは2013年に熊本県立荒尾支援学校高等部を卒業。現在は平日に荒尾市にある旭製作所で働いています。(ガラス製品の梱包作業などを担当)

【元・熊本県立荒尾支援学校 校長 和久田 恭生さん】
「仕事を夕方までやって、その後、家に帰って毎日2~3時間・・・」
荒木さん(いや、最近5~6時間、やっていますよ)
「すごいなと思って。〈私たちも頑張らんといかんな〉という気持ちになりますね」

(玉名市/カフェギャラリーモカ)

毎日少なくとも3時間は作品の制作に充て、貼絵作家として活動中です。

【貼絵作家 荒木 聖憲さん】
(爪は伸ばしとかないといけないですね)
「いや、きょうはちょっと伸びすぎて、(紙が)ちぎりづらいです」

【貼絵作家 荒木 聖憲さん】
(だいたいできた感じですか?)
「手を加えようと思うなら、ずっとやれるんです」
(延々とやれますよね)
「引き際が結構難しい。〈どこまでやろう〉みたいな」
(やろうと思えば、どこまででもできる)
「ここから100時間かけられるといえば、かけられる。けど、疲れた時は寝ます」

(7/26 熊本県立美術館本館)
7月26日、貼絵の表現を楽しむイベントが熊本市の県立美術館本館で始まりました。(8/3まで開催)

開催中の『山下清展』の同時期開催夏休み特別イベントで、荒木 聖憲さんの作品5点から貼絵の表現技法を紹介しています。

【貼絵作家 荒木 聖憲さん】
「ここの部分なんですけど、僕はいつも暗い色から貼っていて、明るい色を重ねていって、色を表現しています。(色紙には)色がついている部分とついてない部分があって、ちぎる時にちょっと白い部分が出る。そこをうまく剥がして貼っていたら、元から貼ってある(下の)紙の色が透かして見えるようにちょっと微妙な色合いを出したりもしています。近くで見ると、どういうふうに作られているかを知ることができるし、遠くから見たら普通の絵として鑑賞できるので、二つの味が楽しめると思います」

【来館者】
「すてきで、とても。色がめちゅめちゃきれい」
「本当に貼ってあるのかなという感じ」

この日、山下 清のサインが入った絵はがきを持った女性が会場を訪れました。熊本市に住む萩原 公子(はぎわら・きみこ)さん。10歳のときにもらったサインを大切にしています。

萩原さんは、友人の久保 美都子さんと趣味で貼絵を楽しんでいるそうです。

【萩原 公子さん】
「(貼絵は)脳トレ、年女ですから」

荒木さんの作品を見て、驚きの声を上げました。

【萩原 公子さん】
「すごい! のりは何を使っているの?」
荒木さん「『ヤマト糊(のり)』」
「ピンセットを使うの?」
荒木さん「手です」
「私も手だけ」

荒木さんは、初めて会う人と話すのは苦手だそうです。でも、そこには好きな貼絵について話し続ける荒木さんの姿がありました。

【貼絵作家 荒木 聖憲さん】
「(貼絵の)話題が普段ないので楽しかったです。(貼絵は)ならない存在というか、毎日していまから、やらないと気が済まない。(貼絵を)ずっと続けて、作品を知り合いや友人に見せたりして、喜んでもらうのが一番、僕にとっての喜びです」

貼絵と出合い、人生が変わったという荒木 聖憲さん。好きな世界を深く、大きく、広げています。

テレビ熊本
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