ワシントン条約で、商業目的での取引が禁止されているゾウ4頭を5年ぶりに呼び寄せた兵庫県姫路市の姫路セントラルパーク。
海外から連れて来るには、繁殖や研究目的でなければならないほか、ゾウの生態にあった「群れ」で過ごせる広い飼育場など、厳しい条件が課されています。
その条件の厳しさから、動物園から姿を消すことも珍しくない中で、「姫セン」は5億円をを費やして、アジアゾウの”ふるさと”インドに近い環境を再現したということです。
そして猛暑の中、インドから姫路までおよそ35時間。国内での大移動に密着しました。
■ゾウの大移動「念入りな熱中症対策」コンテナに氷・スイカ・出発を夜に
関西空港に大きな大きなコンテナで運ばれてきたのは…
つぶらな瞳に!なが~い鼻!インドからはるばるやってきた4頭のアジアゾウです。
およそ9時間の空の旅を終え、関西空港に降り立ちました。
【記者リポート】「今、口を開いてトレーラーの中から顔を出そうとしてます。すごく元気そうです!」
ここからおよそ140キロ離れた姫路セントラルパークまで移動しますが、それまでしばしの休憩です。
日本も連日の猛暑。水を飲ませたりコンテナに氷をのせて冷やしたりとゾウの体調管理に余念がありません。
【記者リポート】「スイカが一玉あったんですがすごい勢いで食べてますね」
スイカにバナナ・サトウキビと食欲は旺盛のようです。
【記者リポート】「いま、ゾウの入ったコンテナが慎重に職員の手によって運び出されています。熱中症対策のため時間をずらして姫路セントラルパークに向かいます」
ゾウの熱中症対策のため、当初の出発時間を3時間半ほど遅らせ、涼しくなった午後9時ごろの移動となりました。
■「絶滅危惧種」のゾウがいなくなってしまった動物園は多い
姫路セントラルパークが成功させた「ゾウの導入」。道のりは簡単ではありませんでした。
絶滅危惧種であるゾウは、1975年に発効されたワシントン条約で、商業目的での取引が禁止になりました。
海外から連れて来るには、繁殖や研究目的ではならないほか、ゾウの生態にあった「群れ」で過ごせる広い飼育場など、厳しい条件が課されています。
その結果、ゾウが1頭もいなくなってしまった動物園も珍しくはありません。
【記者リポート】「天王寺動物園にいない動物ということで、ゾウの写真が貼られています」
かつて、ゾウが3頭飼われていた大阪市の天王寺動物園では、7年前に最後の一頭が死んで以降、ゾウがいない状態が続いています。
【天王寺動物園・飼育展示課課長代理 今西隆和さん】「海外からもし連れてくるとなったら、最低でもオスメスのペアで繁殖・研究目的であればペアで連れてきなさいよという条件になっています。そういう所を1つ1つクリアしていって、話をしていかないと」
■「絶滅危惧種」ゾウ連れてくるため”インドに近い環境”およそ5億円かけ整備
こうした中で、なぜ、姫路セントラルパークは4頭も連れてくることができたのか?
【姫路セントラルパーク西角知也園長】「生息地、本来の彼らのふるさとの生息地を飼育環境で再現したいと思って…」
ゾウたちが元々暮らしていたインドの森林。
姫路セントラルパークではインドに近い環境となるよう、小高い丘や木をおよそ5億円をかけ整備しました。
【姫路セントラルパーク西角知也園長】「高い岩とかゾウが背中をこすれるように」
その結果、ゾウを安全な場所で保全するという目的で、迎える事ができたのです。
【姫路セントラルパーク西角知也園長】「あとは無事にきてくれることを願ってますね」
■12時間かけて姫路セントラルパークにたどり着くも…
ついに訪れたゾウを迎え入れる日。
25日午後0時半ごろに関空へ到着したゾウ4頭は、およそ12時間後、姫路セントラルパークにたどり着きました。
【記者リポート】「ゾウを乗せたトラックがようやくパークへ到着しました!ようこそ姫路へ!」
しかしここからが長く、到着からおよそ1時間後、ようやくコンテナをおろす作業がスタートしました。
この作業をコンテナ4個分を行い、かかった時間はおよそ2時間。まだ、ゾウの姿は見えません。
■35時間の長い移送がようやく終わりゾウもお疲れの様子
時刻は26日午前3時過ぎー。
【記者リポート】「扉が開きました。ゾウの鼻が出てきました」
周りには多くのスタッフが集まりゾウの登場を固唾をのんで見守っています。
ついにコンテナから一頭目のゾウが出てきました。
4頭全てのゾウが姿を現わしたのは午前4時ごろ。
この長丁場に、園長も笑顔こそ絶やしませんが、お疲れの様子。
(Q:結構疲れている?)
【姫路セントラルパーク 西角知也園長】「え?まさか…ちょっと眠いだけ」
およそ35時間の長い移送に園長もゾウも少しお疲れのように見えます。
■展示スペースに水遊びする元気なゾウの姿が
そして、28日、展示スペースには元気なゾウの姿がありました。
【記者リポート】「4頭のゾウがこちらに向かってきています。4頭とも本当に元気そうですね。今4頭がそろって水遊びをしています。気持ちよさそうですね~」
■「ゾウへの期待はゾウより大きい」と園長
ゾウ4頭は、新しい施設を気に入った様子です。感慨深そうにその様子を見つめる園長…
(Q:ゾウに期待することは大きい?)
【姫路セントラルパーク西角知也園長】「そうですね。ゾウより大きい」
一般公開は、来月9日です。ゾウ4頭が待ってるゾウ!
■動物園でゾウを見ることは当たり前ではなくなっている
関西でゾウを見ることができる動物園は姫路セントラルパークを含めて4カ所です。
・京都市動物園
・姫路セントラルパーク(兵庫県)
・王子動物園(兵庫県)
・アドベンチャーワールド(和歌山県)
動物園でゾウを見ることは、当たり前ではなくなっています。
【犬山紙子さん】「これからたくさんの人や子供たちに愛されると思うんです。私も子供連れて行った時に、今日のお話も一緒に伝えられたらいいなと思いました。ゾウを守っていくこと、絶滅危惧種であること、そして動物を大事にする心や動物との共生についても語れる機会になるといいなと思います」
日本動物園水族館協会の成島悦雄さんによると、「ワシントン条約などもあり、お金を払って 野生の動物を連れてくるということがとても難しい状況。世界の動物園が連携して飼育下の個体を繁殖させていくことが必要」ということです。
幼い頃に動物園の裏に住んでいたという元AERA編集長の浜田敬子さんは「動物園にゾウがいるのが当たり前だと思ったけど、そうではないということですよね。 日本に4頭も来れたのは飼育員の方達の努力とか、繁殖の研究が進んでることもあると思うので関係者の努力はすごく大きいんだろうなと思いました」と関係者の努力を称えました。
姫路セントラルパークには、オス1頭、メス3頭がやって来ました。繁殖がうまくいくことを願うばかりです。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年7月29日放送)