特集です。ライクでは、80年目の8月6日を前に、「つたえるつなげる」をテーマに特集をお伝えしています。

今回は、平和記念式典で世界に発信される「子ども平和への誓い」の誕生に密着しました。


≪2024年 平和記念式典 子ども平和への誓い≫ 

「79年前の広島には今と変わらない色鮮やかな日常がありました」

毎年、8月6日に広島の子どもたちが、世界に向けて発信する「平和への誓い」。
その一言一言には、広島の1万人の子どもたちの思いが、込められているのです。


6月終わりの土曜日、朝早くから出かけるのは、皆実小学校6年の関口千恵璃さんです。

【皆実小学校6年・関口千恵璃さん】
Q:よく寝た
「いつも通り6時半に起きて」

この日は、「子ども平和への誓い」の内容を考える大切な会議があるのです。
関口さんは、今年の平和記念式典で、子ども平和宣言を発信します。

【皆実小学校6年・関口千恵璃さん】
「子どもよりも大人はたくさんの知識を持っていて、でもその人たちが何でこんなに悲惨な戦争を引き起こしてしまったんだろうということは感じたりしていました」

「子ども平和の誓い」は、広島市内144校の小学6年生、およそ1万人が「平和への意見」をテーマに書いた作文から、校内審査などを経て、20人を選びます。

<発表会>
その20人による意見発表会が開かれ、「平和のへの誓い」を発信する代表2人が選ばれます。
作文によって選ばれた20人は、平和への誓いを作っていくメンバーになるのです。

祇園小学校6年、佐々木駿君。

今年の平和記念式典で、関口さんと一緒に、「平和への誓い」を発信します。

【祇園小学校6年・佐々木 駿 君】
「あれが原爆ドームです。1915年に建てられましたチェコ人(建築家の)ヤン・レツルがデザインしました」

佐々木君は、小学2年生の時から、平和公園で、外国人に英語で伝える平和ガイドを続けていました。英語は、幼いころから、英語教材を使って、身につけました。
世界中の人に、あの日、広島で起こったことを知ってもらいたい。
「何を伝えるのか?」「何が伝えられるのか?」迷いながら、活動を続けてきました。


【祇園小学校6年・佐々木 駿 君】
「でも被爆者じゃないから、その時のみんなの様子や気持ちが分からないから。ただ絵や話を聞いて感じているだけなので、知らなくても、できる事だけはやりたいと思いました」

検討会議には、広島市内の小学校に通う小学6年生、20人が集まりました。
検討会の前に、原爆資料館を見学します。

これまで、何度も訪れた場所ですが、この日、彼らが捜すのは、そこに記された当時の人たちの言葉や映像や遺品から伝わる人々の思いです。
被爆者の生の声を探していきます。

検討会議が始まりました。
それぞれが感じた被爆の実相を言葉にしていきます。

【参加者】
「賑わっていてすごく密集していたけど急に・・・がれきだらけになって人がちょびっとしかなくて・・」

子ども達が感じたのは、被爆の惨状だけではありません。
そこにいた人たちにも、思いを馳せていきます。

【参加者】
「一人一人の人生だから他の人には再現することはできない。だから一人一人の命を大切にしたい。一人一人が、悩みながら、自分たちが誓うことを考えていきます」

たくさんの気づきや思いが付箋に書き込まれていきます。

【参加者】
「これからどうしていかなければいけないとか、自分たちにできる事とか」

時間の経過とともに、テーマが変化していきました。

【参加者】
「原爆が落とされる前のことを書いて、未来のことをこっちに書いたらいいと思う」
「自分なりにできることが身近な事」
「身近多いね」

探してみると、自分なりにできることが意外に多くある事もわかりました。

自分たちは、未来に何ができるのか?佐々木君は、「平和への誓い」に盛り込みたい言葉がありました。


【祇園小学校6年・佐々木 駿 君】
「例え1つの声でも真実に希望を込めて語れば、世界に変化をもたらすことができると、言ったあとにあなたもこの1つの声になって世界を変えていきませんか、を入れてみたいけど・・・」

自分と向き合って、感じたことや、チームで話し合って、新たに気づいたことが、1枚の紙に整理されていきました。

検討会の最後には、チームごとに伝えたい事を発表していきます。

【参加者は】
「平和に1つの正解はありません。人によって平和の形は違うのです」
「違いは間違いではありません。違いの差を完全に間違いと認めるにはまだまだ早いのではないか、少しは話し合って自分の意見と比べてみる事が新たな世界を作るカギになるのではと思います」

1万人の小学生の代表、20人が懸命に考えた「平和への誓い」に込めるメッセージ。
この日の経験は、子ども達を大きく成長させていました。

【河内小学校6年・林由希菜さん】
「自分にはない意見や未来のことを考える人たちもいて、より深く自分の思いや想像を拡げることができました」

【山本小学校6年・清水琉成 君】
「発表の中でいった違いは間違いではないというふうに、自分と意見が違うからと言って普通に認めて考えていくと、こんなに新しい世界が自分でもできるという事にすごくびっくりしました」

被爆80年を迎える今年。
未来を担う代表として、広島の子どもたちの思いをこの2人の言葉で、世界中に発信します。


【祇園小学校6年・佐々木 駿 君】
「人の平和に対しての思いや戦争はよくないという思いがよく伝わったし、8月6日に向けて日本だけではなくて、世界中にたくさんの人の思いを発信していきたい」

【皆実小学校6年・関口千恵璃さん】
子どもだからこそできる事、大人にはできないけど子どもだからこそできる事を考えました。日本のスケールではなく、世界中だからわくわくしています」
Q:楽しみ?
「楽しみです」

今年の8月6日、子ども達は、世界にどんなメッセージを発信するのでしょうか?未来を担う子どもたちの声に私たち大人は、真剣に耳を傾けなければなりません。


<スタジオ>
きょうのニュースでお伝えした「被爆者の90年はありません」という言葉が私個人的にはすごく胸に響いたんですけれども、そういうことを考えたときに改めて今、子どもたちっていうのはこれから先の未来をどのように変えていくのか、まさにその世代ですよね。

【コメンテーター:広島大学大学院・匹田篤准教授】
「語り継ぎの重要性というのは、すごく感じました。表現する機会、伝える役割っていうものがあると、今の彼らすごく成長しています。本当は私たち一人一人が伝えていかなきゃいけないんだなと改めて思います」

被爆80年ですけれども、今、子どもたちの世代っていうのは、これから被爆90年、被爆100年という世代を支えていく世代ですし、そういった子どもたちに私たち大人がどういう背中を見せられるか。こういったところも問われているのかなという部分を改めて感じました。

テレビ新広島
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