東京電力は、7月21日の夜に所内電源がの電圧が一時的に変動したことで、複数の設備に影響があったと公表した。
現時点で原発の健全性に影響を及ぼす事案は確認されていないが、使用済み核燃料6,000体あまりを保管するプールの冷却が停止したり、5号機と6号機の原子炉建屋の空調が止まるなどしたという。機器の故障などはなく、設備を再起動することで復旧している。
福島第一原発周辺には当時雷注意報が発令されていて、東京電力は電圧変動の原因について、雷の影響も視野に入れて調査を進めている。
このうち、各号機からの使用済み核燃料を集約している「共用プール」では、冷却ファンの不具合によりプールそのものの冷却が午後8時ごろに停止。停止した時点でのプールの温度は33.3℃だった。
この「共用プール」には7月22日時点で6,119体の使用済み核燃料が保管されている。燃料から発せられる熱により、約8日間で周囲のコンクリートの健全性に影響が生じる可能性がある「制限温度」65℃に達する見通しだったため、東京電力が復旧を急いでいたが、午後10時すぎにファンを再起動して冷却を再開。再開までにかかった約2時間での温度上昇は0.4℃と、設備の健全性に問題はなかったという。
また、午後7時40分ごろに「陸側遮水壁」に冷媒を供給するためのポンプが全台停止。「陸側遮水壁」は発生する汚染水の量を減らすべく、地下水が原子炉建屋などに流れ込まないように建屋を囲む「凍土方式の壁」だが、これに冷媒を供給できなくなっていた。
東京電力は、この状態でも数か月は効果を維持できるとしていたが、これも約5時間後に再起動して復旧した。
さらに、5号機と6号機の原子炉建屋の空調、3号機を覆うカバーの排気ファンなども一時的に停止していたことが確認されている。
また、竜巻注意情報(竜巻発生確度2)が発表されたことから、処理水の海洋放出も一時的に手動停止したが、約12時間後に再開。
福島第一原発では7月14日から2025年度2回目(通算13回目)となる処理水放出を開始していて、8月1日までの19日間で約7,800t(タンク約8基分)を海水で薄めて海に放出する予定となっていたが、このスケジュールに大きな変更はないという。
処理水の海洋放出は、放出前の水をためる水槽と海水面の高低差を利用して海に流れるようになっているため、海面が高くなって水が逆流してしまう恐れがある場合や、設備の安全性を確認すべき場合には放出をとめることが定められている。
震度5以上の地震や津波注意報、高潮警報などでも放出を手動停止することが決まっていて、これまで2024年3月にも地震により手動停止したことがある。