19日は「土用の丑の日」。
すっかり高級食材になったウナギですが今、価格がさらに上がりかねない事態が。
ヨーロッパの国々などがウナギ取引に規制をかけるよう提案したのだ。
世界最大のウナギ消費国で、流通量の7割から8割を外国からの輸入に頼っている日本にとっては大問題だ。

■EUなどがウナギ全種類を「ワシントン条約」へ掲載するよう提案
昔は2尾で980円という時代もあったウナギは、資源数の減少もあり、その価格も近年はウナギ上りとなっていて、すっかり高級食材。
そんなウナギに今、大きな転換点が訪れている。
先月末、EU=ヨーロッパ連合などがニホンウナギを含むウナギ全種類を野生動物の国際取引を規制する枠組み「ワシントン条約」へ掲載するよう提案したのだ。
これにより大きな影響を受けるのが世界最大のウナギ消費国「日本」。
小泉進次郎農水相:保存管理を徹底しており、十分な資源量が確保されていることから、国際取引による絶滅の恐れはありません、今般のEUの決定は極めて遺憾であります。
実は日本で流通しているウナギの7割から8割は国外から輸入されたものなのだ。

■国産ウナギを一尾使ったうな重を提供する料理店では
この状況をウナギ料理店はどう捉えているのか。
大阪市北区で大正時代から営業を続ける老舗「志津可」を訪ねました。
志津可スタッフ:お持ち帰りでよろしいですね。土用の丑の日でございますので…。
この日も店には土用の丑の日に向けて注文の電話が。
ふっくらと蒸された身と秘伝のたれが食欲をそそる。
客:すご~い。
客:上品に食べてしまう。
その味はもちろん絶品。
この店では、国産ウナギを一尾使ったうな重を、比較的リーズナブルな価格で提供している。(鰻重上・お漬物、肝吸い付で3500円)

■ウナギ料理店は今回の提案には不安
志津可・樽野博明さん:昔からできるだけええウナギを安く仕入れて、お客さんには安く売れと。家訓なんですよね。
しかし、今回の提案には不安を覚えていると話す。
志津可・樽野博明さん:価格競争になってくるでしょうなあ。なんぼで売れとかうちはなんぼで仕入れますとか。
(Qできたらこの価格は守っていきたい?)
志津可・樽野博明さん:いや、これ今はほんま言うたら、米も上がってますし、値を上げたい。
(Qいま、歯を食いしばって頑張っている?)
志津可・樽野博明さん:そういうことですね。

■貿易が規制されると養殖業者にとっては死活問題
さらに、困っているのは鰻料理店だけではないと話す。
志津可・樽野博明さん:養鰻業のところでも『我々、養鰻業は成り立たない』と。
ウナギはシラスウナギという稚魚を養殖で育て出荷される。
しかし、国内のシラスウナギ漁は近年、不漁が続いていて輸入に頼っているのが実状。貿易が規制されると、養殖業者にとっては死活問題なのだ。
その実状を語ったのは徳島県上板町にあるウナギの養殖業者。
犬伏淡水・犬伏正夫さん:水が澄んでいるでしょ。関西圏ではこういう水のほうが、あめいろの水より肉質がいいとされている。
この養殖場でも不漁の年には輸入したものを育てることがあるという。
今回のEUによるワシントン条約への掲載が採択されると、シラスウナギが足りなくなるのではと問うと、意外な答えが返ってきた。
犬伏淡水・犬伏正夫さん:闇の流れ(取り引き)が起こるだけでしょ。

■シラスウナギの“闇取引”の実態
シラスウナギの“闇取引”。
これは、関西テレビが7年前に撮影した密漁の瞬間だ。
記者リポート:水面には無数の光がただよっています。いま見えるのは全て、違法なシラスウナギ漁の船です。

■「シラスウナギ」の取引価格は高値で推移
「シラスウナギ」の取引価格は高値で推移していて、豊漁だったことしでさえも1キロあたり130万円。
そのため「白いダイヤ」とも呼ばれ密漁や密輸が世界中で後を絶たない。
水産庁によると、去年はウナギの養殖池に入れられたシラスウナギは16.2トン。
このうち国内で採られたと報告があったのは5トン、輸入分が9.1トン。
つまり、2.1トン分は出所がわかっておらず、一部は違法取引とみられている。

■EUの提案の背景にはこういった違法行為の横行があるのではと専門家
ウナギの資源管理に詳しい専門家は、EUの提案の背景にはこういった違法行為の横行があるのではないかと指摘する。
中央大学・海部健三教授:実際に輸出入が規制されているヨーロッパウナギはアメリカウナギであると偽られて貿易されているような事例が発覚しています。そのようなことが起きないように、類似種として似ている種として、(ウナギ全種を)リストするということが1つ考えられる。
シラスウナギの段階では種類の判別が難しいため、EUはワシントン条約で絶滅が危惧される他の動物などと同じくウナギの全種類を規制すべきだと主張。

■養殖業者は「違法取引は無くならないのではないか」と話す
しかし、養殖業者は違法取引は無くならないのではないかと話す。
犬伏淡水・犬伏正夫さん:規制してしまったら、ルール違反でもしなかったらシラスウナギが入らない。
(Qどう対応する?)
犬伏淡水・犬伏正夫さん:必ず改ざんがでます(発覚する)から。ウナギを買う以上はなんとか正直に生きていかないと。
EUの提案が採択されると、価格高騰の可能性も指摘され、私たち消費者にも求められることがあると専門家は話す。
中央大学・海部健三教授:高くなることを受け入れなければいけないとは思わないんですけれども、我々の食卓の上に乗っているウナギが、実は遠い海を越えて、犯罪に繋がっていたりする場合があるということも我々は意識するべきだろうと思います。
ウナギをめぐって交錯する様々な事情。日本の夏に欠かせない食材は、今後どうなるのか。

■ウナギが「絶滅しないことを科学的に立証する必要性がある」菊地弁護士
菊地弁護士は、この問題について、ウナギが「絶滅しないことを科学的に立証する必要性がある」と述べた。
菊地幸夫弁護士:小泉農水相が『絶滅しない』と言うのなら、科学的に立証していく必要があるんじゃないでしょうか。ワシントン条約は絶滅危惧種などの保存が目的なので。まず絶滅の恐れがあるのか。そこを日本としてははっきり主張していくのが課題だと思いますよね。
関西テレビ・神崎博報道デスク:日本側としては、資源量は十分あることを科学的なデータを示した上で、日本一国では弱いので、例えば隣国の韓国や中国、台湾などとタッグを組んで、ヨーロッパに対抗して、”アジアチーム”でウナギの資源はあって、規制する必要はないということで、何とか対抗していこうというふうに農水省は考えていますね。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年7月17日放送)
