7月20日に投開票が行われる参議院選挙の争点の1つが物価高対策です。

給付か減税か、福岡の有権者の考えを取材しました。

福岡市内に暮らす永浦さん一家は夫婦と子供4人の6人家族。

いま、頭を悩ませているのは、物価高です。

◆永浦緑さん
「食費のこともあるし、やはり電気代とかも上がっている。すごく暑いじゃないですか」

そんな中、自民党が物価高対策の柱として打ち出した公約が、国民1人当たり一律2万円、18歳以下の子供や住民税非課税世帯の人にはさらに2万円を上乗せする給付策です。

連立を組む公明党も所得税の減税などに言及しつつ、足並みをそろえています。

◆永浦緑さん
「おぉ、また配ってくれるのかみたいな感じ。もらえることはうれしいのはうれしい」

自民党は2万円の根拠について「年間で1人あたりの食料品にかかる消費税額」と説明していて、逆算すると、1日の食料品支出は685円ほどとなり、その妥当性も議論を呼んでいます。

永浦さん一家は大人2人と子供4人のため、合わせて20万円の給付となりますが…。

◆永浦緑さん
「数ヶ月でなくなるんだろうなとは思います。消費税とかを減税してもらったり、そういう長い目で見る対策がうれしい」

給付策の与党に対し、野党の多くが訴えているのが消費税の減税です。

立憲民主党は原則1年として食料品の消費税をゼロに、国民民主党は実質賃金がプラスになるまで一律5%に、参政党は消費税の段階的廃止を主張するなど、一律に減税と言っても、その割合や期間などに違いがあります。

◆会社員 50代
「買い物する度に、ありがたみが分かるので減税の方がいいのかな」

◆年金受給 70代
「(消費税)5%にはしてほしい。食料品だけでいいから」

共同通信が7月上旬に行った調査で望ましい物価高対策を尋ねたところ、「消費税減税」が76.7%と、17.9%の「現金給付」を大きく上回りました。

高まる減税ムードのかたわら、不安の声をあげている人たちもいます。

福岡市にある視覚障害者の就労支援事業所。

視覚障害者に仕事を紹介したり、織物や小物作りで工賃を支払ったりしています。

◆緒方伸彦 施設長
「視覚障害者の方々が家に閉じこもらずに通える所、居所と言いますか、そういう意味合いが非常に強いんじゃなかろうかと」

スタッフへの給与や家賃など施設の運営費をまかなっているのは社会保障の給付金。

その貴重な財源となっているのが消費税です。

施設長の緒方さんは、消費税の減税が社会保障費の削減につながり障害者や高齢者といった弱者に、そのツケが回ってくることを懸念しています。

◆緒方伸彦 施設長
「福祉関係の賃金は、高齢者施設もはじめ、ちょっと低く見積もられているというか、職業としての定着率が悪くなるとか、そういう懸念もあるんじゃないか」

消費税の税収は今年度の見込みで、24.9兆円。

仮に税率を一律5%に引き下げれば年間10兆~15兆円程度、食料品だけを税率ゼロにした場合は約5兆円の減収になるとされています。

◆緒方伸彦 施設長
「高齢者・障害者・小さい子供、いろんな課題がもう山積していると思うが、個々の立場の方々の状況をよく聞いて、施策に反映させてほしい」

消費税の減税については、専門家でも意見が分かれています。

◆経済ジャーナリスト 荻原博子さん
「世界中で景気が悪かったら、消費税を下げるところはけっこうある。だから日本だって一時的に下げてもいい。コロナの最中はドイツとかフランスとか、消費税下げていた」

◆日経BP 山根小雪さん
「日本は、消費税減税は絶対やってはダメだと私は考えている。何でかと言ったら、1回減税したら、絶対に元に戻せない国だから。ガソリンの暫定税率、いつから暫定かというと1974年です。安易な減税を今のタイミングであわててやるようなことはしてはいけない」

現金給付か消費減税か、それぞれの財源についての主張をまとめました。

現金給付は税収の上振れ分から持ってくるという考え方です。

一方、減税については政府基金の取り崩し、大企業への増税、赤字国債の発行などさまざまな案がありますが、安定した財源を示せているとは言い難いようです。

それぞれデメリットもあります。

現金給付は、実際に市民に給付するのは各自治体なので、その事務負担が大きく、福岡市の場合はいわゆる「コロナ給付金」では事務費として10億円もの経費がかかったと明らかにしています。

一方、消費減税は法律の改正も必要なうえ、スーパーなどのレジの改修も発生するため、かなりの時間や経費がかかるという懸念もあります。

テレビ西日本
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