データ提供 PR TIMES
本記事の内容に関するお問い合わせ、または掲載についてのお問い合わせは株式会社 PR TIMES (release_fujitv@prtimes.co.jp)までご連絡ください。また、製品・サービスなどに関するお問い合わせに関しましては、それぞれの発表企業・団体にご連絡ください。

プレスリリース配信元:学校法人明治大学

~フードロス削減・企業コスト削減・消費者魅力向上の「三方良し」を実現する美しい食事サービス~




ホスピタリティ業界のフードロスは世界的に大きな問題で、その原因の1つにビュッフェがあります。ホテル経営者は、環境とコストの双方の負担に悩まされながらも、消費者満足のためにビュッフェを提供し続けてきました。ソーシャルメディア、特にInstagramの浸透によって、消費者の評価が変化した可能性があります。旅行者にとってInstagramは必需品とされ、旅行は旅先で楽しむ以上に、写真を通じて楽しむと言われます。写真という観点を踏まえると、以下2つの理由からビュッフェの魅力が崩れる懸念があります。1つ目は、会場には他の顧客が多数いるため、美しい写真の撮影が難しいことです。実際、ビュッフェ営業開始とともに、写真撮影時間を設ける施設がありますが、その場合でも綺麗な写真を撮影できるのは最初に来訪した消費者のみです。2つ目は、自分で美しい盛り付けをすることが難しいことです。実際、ビュッフェで綺麗に盛り付けをすることの難しさをテーマとしたテレビ番組が存在します。一方、完成された料理セットは容易に美しい写真に収めることができます。

そこで、本研究は、ソーシャルメディアのビュッフェに関する投稿を対象として評価した結果、ビュッフェよりも、料理セットの方が高い魅力となることを実証しました。この結果は、ビュッフェから料理セットへの移行により、環境とコストの負担を下げ、かつ魅力的なサービスを提供できる「三方良し」を実現する可能性を示唆しています。
本研究成果は、明治大学商学部加藤拓巳准教授、つくばの湯アーバンホテルを運営する株式会社大三、株式会社hootfolio、マーケティング実践研究会との共同研究によるもので、査読論文「日本感性工学会論文誌」に掲載されました。


本研究のポイント
- ホスピタリティ業界における食品廃棄(フードロス)は依然として世界的に大きな問題です。フードロスを助長してしまうサービスとしてはビュッフェが代表的です。消費者が食べ放題を享受する裏には、大量の食品廃棄が存在し、環境負荷を高める原因の1つになっています。ビュッフェは環境負担が大きだけでなく、経済的なコスト負担も大きいです。つまり、ホテルの経営者は、環境負担とコスト負担の双方に悩まされながら、ビュッフェサービスを提供しています。その理由は、ビュッフェがホテルのサービス競争力の源泉であり、顧客満足を牽引するという実績です。
- しかし、ソーシャルメディア、特にInstagramの浸透によって、その業界の定石は大きく変化した可能性があります。特に旅行者にとってInstagramは必需品とされ、旅行を旅先で楽しむ以上に、写真を通じて楽しむとさえ言われます。この消費者行動の変化を踏まえると、以下2つの理由から、ビュッフェが顧客満足の源泉という定石が崩れる可能性があります。1つ目は、ビュッフェ会場で美しい写真を撮影することが難しいことです。他の顧客が来場する前に撮影しなければならず、1番最初に来訪した顧客だけがその価値を得られます。最近のホテルビュッフェでは、営業開始と同時に写真撮影タイムを設けているホテルがあります。その場合でも、美しい会場写真を撮影できる顧客は限定されます。2つ目は、自分のテーブルで美しい料理を撮影することが難しいことです。混雑するビュッフェ会場での限られた時間内で、かつそれぞれの顧客の料理の好みに偏りがある中で、綺麗に盛り付けることは難しいです。実際、ビュッフェで綺麗に盛り付けをすることの難しさをテーマとしたテレビ番組が存在します。
- そこで、本研究は、「ソーシャルメディアにおけるホテルサービス紹介投稿において、ビュッフェ形式よりも、定食に代表される料理セット形式の方が高い魅力となるか?」というリサーチクエスチョンを設定しました。図1に示すとおり、理想的なビュッフェ会場、現実的なビュッフェ会場、理想的なビュッフェ料理、現実的なビュッフェ料理、料理セットのカテゴリで、各3つの投稿(写真・文章)を制作しました。日本の20-60代の1、000人を対象にオンライン調査環境でランダム化比較試験を行いました。その結果、図2に示すとおり、料理セットが最も高い評価を獲得した一方で、現実的な会場と料理は最低の評価になり、有意差が検出されました。女性、ホテルへの高い関与を有する消費者、インスタグラム利用者ほど、料理セットを高く評価する傾向でした。
- ビュッフェのフードロス削減を目指す既存研究は、消費者への食べ過ぎによる健康の悪影響の説明、小さい取り皿への変更、完食に対する割引といった知見を蓄積してきましたが、効果は限定的でした。そこで、長年の定石であるビュッフェから朝食セットに移行することで、環境負荷と企業のコストを下げ、かつ消費者にとって魅力的なサービスを提供できる可能性があります。実際、完成された美しい朝食セットを提供することで、ホテル・レストラン・カフェの満足度を高めている実例が見られます。本研究の結果は、ホスピタリティ業界の常識に一石を投じています。


図1. ビュッフェ会場・料理の理想/現実と料理セット




図2. 検証結果


論文情報
加藤拓巳・塚本忍・笠原健太・小泉昌紀. (2025). ビュッフェvs定食 -ソーシャルメディア時代におけるホテル朝食の魅力の比較-. 日本感性工学会論文誌, 25(1), 1-9.
https://doi.org/10.5057/jjske.TJSKE-D-25-00010

この記事に関連するページ
加藤拓巳准教授Webサイト
https://takumi-kato.com/

株式会社大三Webサイト
https://www.daisan-ltd.com/

株式会社hootfolio Webサイト
https://hootfolio.com/

一般社団法人神奈川県中小企業診断協会マーケティング実践研究会Webサイト
https://mktlabo.com/

企業プレスリリース詳細へ
PR TIMESトップへ

PR TIMES
PR TIMES