道路にロープを張り自転車に乗った男性を転倒させて殺害しようとした疑いなどで先週男が逮捕された事件。
もし道路にロープが張られた場合、自転車からはどう見えるのか。
入手した防犯カメラの映像などから現場の様子を再現しました。
検証実験で見えたその危険性とはー。
午後9時20分ごろの大阪府羽曳野市の道路。
【防犯カメラの映像より】「痛った~何やこれ」
突然転倒した自転車の男性。道路に仕掛けられていたのはロープでした。
■なぜ道路にロープが仕掛けられていたのか
大阪府羽曳野市の路上でことし5月に撮影された映像。
男子大学生が乗る自転車が走ってきた次の瞬間。
【被害者】「痛って~」
激しく転倒した男性。背中や頭を打つなどの軽いけがをしました。
【被害者】「何やこれ」
一体、何が起きたのでしょうか。
殺人未遂の疑いなどで逮捕されたのは松見優希容疑者(23)
なぜ道路にロープが仕掛けられていたのか。
■現場周辺に設置された防犯カメラ4台の映像を検証
関西テレビは、現場周辺に設置された防犯カメラ4台の映像を検証。映し出されていたのは卑劣な犯行の一部始終でした。
松見容疑者とみられる人物が現場に現れたのは、事件が起きる2分前。
近くの駐車場に結ばれていたロープを道に張り、立ち去ります。
その後、自転車が来ましたがロープがたるんでいたのか引っかかることはなく、そのまま通過します。
すると、近くで見張っていたのか、再び容疑者らしき人物が現れました。
そして事件発生時刻のおよそ1分前、ロープを手直しすると再び画面から消えます。
画面にもはっきりとロープが映るようになりました。
そのすぐ後、自転車に乗った男子大学生が転倒しました。
■別のカメラにも、トラックに自転車のライトのようなものが反射
別のカメラにも、トラックに自転車のライトのようなものが反射しています。大きな衝突音も聞こえました。
警察によると、松見容疑者は被害者が転倒する瞬間をわざわざ見届けて、その後逃走したといいます。
現場からおよそ100m離れた防犯カメラには走って逃げる松見容疑者とみられる姿が。
その2分後、現場からおよそ300メートル離れたカメラには、遠くまで逃げて安心したのか平然と歩く松見容疑者らしき人物が映っていました。
こういった事件は全国各地で起きていて、2019年には寝屋川市で女性が重傷のけが、2018年には神奈川県でバイクが転倒する事件も発生しています。
■道に仕掛けられたロープはどのように見えたのか
一体、道に仕掛けられたロープは当時の現場でどのように見えたのか。
まず現場の明るさに着目しました。
【記者リポート】「事件発生と同時間帯の現場に来ています。街灯はあるもののロープが張っていても認識しずらいように感じます」
警察によると、松見容疑者が結んでいたとされるロープは、太さが6ミリのナイロン製のもの。
松見容疑者は、駐車場に張られていたロープの片方を外して、道路の反対側にあるフェンスにくくりつけたということです。
■専門家の監修のもと、独自に検証
これらの情報を元に、専門家の監修のもと、独自に検証しました。
まず、当時の現場の暗さを照度計で計測し、実験では可能な範囲で再現。
元京都府警の交通事故鑑定官の小西公昭さんによると、月齢により夜の屋外の明るさは大きく左右されるといいます。
【小西公昭さん】「今日が(月齢が)11.7。ところが発生の時は、(月齢が)3か4なのよね。かろうじて三日月が見える日に発生してんねん。(今より)もっと暗い。この周り全部が暗い」
事件発生時より月の光は明るいという条件で、犯行に使用されたとみられるロープと同じ太さのものを用意しました。
■ロープから50メートル離れた場所に立ってみると…
まずはロープから50メートル離れた場所に立ってみると…
(Q:50メートル離れましたけどまったく見えないですね?)
【小西公昭さん】「まったく見えないよね。当時、条件がもっと悪かったんだから、もっとひどいはず。50メートルでは全く見えないね」
ロープがあると分かっていても認識するのが非常に難しい状態。
■ロープから20メートルの場所では
さらに近づき、ロープから20メートルの場所。
【小西公昭さん】「ここでは意識すると見える。だから静止状態で、前提条件(ロープがあるとわかっている)があって20メートルで見えるけど、それがなかった人にはあれがロープだという認識は起こらない」
微かにロープのような物が認識できますが、これはあくまでロープが張ってあると認識している状態での実験です。
10メートルの場所まで近づくと…
【小西公昭さん】「パッと見たときにあれがロープという認識持ちづらいよね。だってあれが路上の線にも見えるもんね」
ここまで近づいても、ロープというより、路上に書かれた線としか認識が出来ませんでした。
■停止できたのはロープからわずか3メートルの位置
では、実際に自転車で走行するとどうなるのか?
【記者リポート】「実際に走行してみようと思います。今50メートルの地点なのですが全然ロープの存在すらわかりません」
ロープを認識した時点でブレーキをかけようとしますが…
【記者リポート】「全然見えないですね。いまやっとロープを認識できました」
ロープを認識し、停止できたのはロープからわずか3メートルの位置。
小西さんは今回の事件について遭遇してしまえば、避けることはほぼ不可能と指摘します。
【小西さん】「だれがここにロープがあると思うか。(被害者が)若いから防御できるんだろうけど女性とか高齢者だったら多分ダメかも」
一歩間違えれば命を落とす危険性もあった悪質な事件。
松見容疑者は「殺意の認識はしていませんでした」などと容疑を否認、被害者と面識はないことから警察は通り魔的な事件とみて捜査しています。
■元兵庫県警の刑事部長が捜査のポイントを解説
松見容疑者が張ったロープの高さは「約70センチ」だったということです。
イラストにもあるように、子供を乗せた自転車が引っかかってしまう高さです。
実際に引っかかって転倒してしまっていたら、と考えると恐ろしく感じられます。
また子供が運転する自転車だと、首のあたりにロープが来ることも考えられます。
元兵庫県警の刑事部長の棚瀬誠さんは、捜査のポイントを解説しました。
【元兵庫県警刑事部長 棚瀬誠さん】「警察が殺人未遂罪を適用して検挙したということがポイントだと思います。事案が悪質で、重大であるということだと思うんですけど、お子さんであったり、高齢者だったりした場合を考えると本当に危ないですから。まず許されない犯行。
問題は、この時間帯にあそこにロープがあって、どういう張り方をすると自転車に影響があるのか。下手したら土地勘もありますから、どのタイミングで犯行を考えていたのか、どこに隠れて見ていたのかというところで、本人の殺意なり、けがをさせる認識というところが出てきますから そこをどうやって立証するのかが 今後の捜査のポイントになると思います。
殺意を立証するハードルは高いです。ただ、過去にも事件があり、実際に自分があそこにロープを仕掛けて、70センチの高さというのは間違いなく何がしかを意図して張っているので、どういうつもりだったのかというところはしっかり捜査をしていくということになります」
(関西テレビ「newsランナー」 2025年7月8日放送)