牛乳が入手困難になる恐れもあった「酪農危機」を乗り越え、2025年の酪農業の倒産が4年ぶりにゼロとなった。生産者は、危機を克服した要因を「収益の安定化」にあると分析し、出荷する牛乳だけでなく、自社で作る「チーズ」などの加工品が収益の助けになっているという。
4年ぶりに「酪農業」倒産ゼロ「チーズ」などが収益の助けに
イット!が訪ねたのは千葉県いすみ市の牧場だ。約200頭のメス牛を飼育するこちらでは、毎日約2000リットルの生乳を生産しているという。

一時はコロナ禍で消費が落ち込み、大量廃棄される恐れもあった牛乳などの原料となる「生乳」。生産すればするほど赤字となってしまう状況から酪農家が経営を諦めるケースが相次いだ。
そこで当時政府は“「モ~1杯」飲もう”と、大臣が呼びかける異例のプロジェクトも行っていた。

そんな危機を乗り越え、2025年は一転。
帝国データバンクによると、2025年上半期の酪農業の倒産件数が4年ぶりのゼロになった。

生産者はその要因が「収益の安定化」にあると分析している。

高秀牧場・馬上温香さん:
乳価も段階的に少しずつひき上がっていますし、ましになったと感じている方もすごく多い。
自分で加工しているチーズだったりジェラートだったりは、自分たちが価格は調整できるので、この物価高にすぐに対応して、少し値上げをしたりとかという対応はしやすい。

出荷する牛乳だけでなく、自社で作る「チーズ」などの加工品が収益の助けになっているという。
高秀牧場・馬上温香さん:
チーズにする手間はもちろんありますけど、価格自体は牛乳よりかなり高単価の方になるので、利益の補塡(ほてん)みたいなものにはなり得る。

自慢の牛乳を原料にしたチーズ作りは13年前から始め、今では15種類に拡大。
牧場内で味わうこともできる人気商品だ。
4種類のチーズがのったクワトロフォルマッジは、アツアツのとろとろ。はちみつをかければ味わいの変化も楽しめる。

総務省の家計調査によるとチーズの購入額は年々増加。2024年は10年前と比べて1.4倍となる7096円で、過去最高となるなど右肩上がりが続いている。

さらに馬上さんは「チーズになると、牛乳の栄養もぎゅっと濃縮されているので、熱中症対策にもなりますし、塩分もとれます」と話す。
新たな悩みも…エサ代・電気代・燃料費高騰の“トリプルパンチ”
しかし、チーズが好調な一方で、2025年ならではの悩みもあるという。
室岡大晴アナウンサー:
少し暑さで疲れているような牛の様子も見られます。あちらを見て頂きますと、大きな扇風機があって、これも暑さ対策として取り入れているようです。

6月から続く異例の暑さで牛も夏バテ気味。

そのため、例年よりも早く扇風機を回すことになり、電気代が重くのしかかっているという。

さらにコメ価格の高騰による影響で、餌用の米から人の食用米に生産を切り替えている農家が相次ぎ、エサが足りなくなる恐れもある。

高秀牧場・馬上温香さん:
畑でトラクターを動かすのに燃料をたくさん使うので、その燃料費高騰もかなりの打撃ですし、もうトリプルパンチ。
好転し始めた酪農業だが、まだまだ厳しい状況は続きそうだ。
(「イット!」 7月8日放送より)