政府は1日、最大で約29万8000人が死亡すると試算されている「南海トラフ巨大地震」について新たな防災計画を発表した。死者数を今後10年間でおおむね8割減らすことなどの「減災目標」が掲げられた。重点的に推進する対策の一つに「感震ブレーカー」の普及が含まれていたが、街では「知らない」という声が多く聞かれ、認知度が低い現状だった。

死者数約8割減へ…政府が新たに掲げた「減災目標」

今後30年以内に80%程度の確率で起きるとされる「南海トラフ巨大地震」について1日、政府が新たな防災計画を発表した。

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静岡沖の駿河湾から宮崎沖の日向灘までのびる、溝状の海底地形「南海トラフ」で起きるとされる巨大地震。

2025年3月に公表された被害想定では、広域で強い揺れと巨大な津波が発生した場合、最大で約29万8000人が死亡すると試算。

政府は、新たな被害想定を踏まえた防災計画で死者数を今後10年間でおおむね8割減らすこと、235万棟にのぼるとされる全壊・全焼建物数をおおむね5割減らす「減災目標」を掲げた。

推進する「感震ブレーカー」と「スフィア基準」

そのために特に重点的に推進する対策は2つ。

1つ目が直接死を防ぐ「命を守る」対策。住宅の耐震性が不十分なものを解消するとともに火災対策として「感震ブレーカー」の普及を推進する。

しかし街で聞いてみると「ブレーカーなら知ってるけど『感震』って何?」「エレベーターの感震は知ってるけどブレーカー自体は知らない」などといった声が聞かれ、認知度はまだまだだった。

南海トラフ地震で大きな被害が出る地域でも普及率は約8.5%にとどまっている「感震ブレーカー」。

地震の揺れを感知すると自動的にブレーカーを落とし電気を遮断。設置することで通電火災などを防ぐことができる。

火災の危険性が高い木造家屋密集地域を中心に「感震ブレーカー」が100%普及することで火災の焼失を約76万棟から約35万棟に、半分以上減らせるとしている。

そして重点対策の2つ目、災害関連死を減らすための「命をつなぐ」対策では避難所の国際基準「スフィア基準」を満たすことを掲げている。

「スフィア基準」が定める避難所が確保すべき最低限の設備とは、「1人1日あたり最低1.5リットルの水の確保」や「居住空間は最低3.5㎡(1人あたり)」「トイレは20人に1つ以上で男女比は1対3」などで、避難所運営の際に目安となっている。

2030年までに「スフィア基準」を満たす市区町村の割合を100%とし、また避難所など重要施設につながる上下水道の耐震化を引き上げるなど、ライフラインを強化するとしている。
(「イット!」 7月1日放送より)

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