大分県内を訪れる外国人客数は8カ月連続で40万人を超えるなど好調ですが、そんな中で唯一、香港からの観光客に陰りがみられます。
こうした不調の原因の背景には科学的根拠のない「うわさ」があるようです。取材しました。
県の観光統計調査によりますと,5月の県内の宿泊客数はおよそ43万7000人でした。
1か月間の県内の宿泊客数が40万人を超えるのは2024年10月から8カ月連続となります。
外国人客はおよそ11万人と前の年の同じ月と比べ40%以上増加しました。
観光客が増える中で唯一減少しているのが香港からの観光客です。
その原因のひとつとされているのが…
日本の漫画「私が見た未来、完全版」です。
初版は1999年で、作者が見た予知夢などの内容が書かれていて東日本大震災の発生を予言していたとして注目されました。
この中で「ことし7月に日本で大津波が起きる」と書かれていたことや、香港の著名な風水師が「この夏に日本で大地震・大津波が起きる」と発言したことがSNS上で拡散されています。
別府駅の観光案内所では、香港からの観光客の利用が2024年の同じ時期と比べて半分以下に減っていました。
また、中国や台湾の観光客からもこんな声が聞かれました…
◆台湾からの観光客
「私の周りでは日本の旅行をやめた人はいないけど信じている人がいる」
◆上海からの観光客
「日本に来る前にこの話を聞いて少し心配していた。戻りの便は6月30日で7月5日までには帰る」
マンガの作者が夢を見た日という「7月5日」。災害が起こる日といううわさの影響が出ていると宿泊施設も言います
TOSの取材に別府市の宿泊施設は「7月5日の宿泊客が普段の3割ほどにまで減少している。通常なら土曜日はほぼ満室なのに」とこぼしています。
また、うわさとの関連は否定していますが、香港航空が熊本県や鹿児島県などと香港をつなぐ直行便について、7月から10月までの欠航を決めています。
大分地方気象台にこのうわさについての見解を聞くと…
◆大分地方気象台南海トラフ地震防災官高濱聡さん
「現在の科学的知見からは地震の発生するとき、場所、大きさの3つの要素を精度よく限定することは不可能。そのような情報はデマと考えられる」
科学的根拠はなく「デマ」だと断言。気象庁は地震や津波の予知は不可能だとして、こうした情報に惑わされないように呼びかけています。
県の担当者もうわさの影響を認めつつも一過性のものとし、「観光客の誘致をしっかり行っていきたい」と話します。
◆県観光局 観光誘致促進室 吉野 亮室長
「やはり7月5日に大地震が起こるという噂があるので日本の安全性を危惧して予約を控えたというふうな(政府の)分析が出ている。非常に残念。やはり科学的な根拠がないというところは間違いないが、ぜひもう1回日本旅行検討してもらえるよう特に大分県に来ていただくように、しっかりとセールスしていきたい」