瀬戸内市のハンセン病療養所邑久光明園の83歳の入所者が、療養所の将来構想の策定を目指して国に要望を続けています。入所者の高齢化が進む中、歴史を次の世代につなげようと活動を続ける男性の思いを取材しました。

(邑久光明園入所者自治会 屋猛司会長)
「約90年間縛られたのはどこにもない。日本だけ。こういう歴史があったことだけは、これから大きくなる子供たちに知っていてほしい」

ハンセン病療養所、邑久光明園で入所者自治会長を務める屋猛司さん。2023年、全国の療養所の入所者らでつくる「全療協」の会長にも就任し、忙しい日々を送っています。

多い時で1万人を超えていた全国13の国立療養所の入所者の数は639人。平均年齢は88.8歳と高齢化が進んでいて今後、施設をどう残していくか、貴重な資料をどう管理していくかが、大きな課題となっています。

(邑久光明園入所者自治会 屋猛司会長)
「厚生労働省と地域自治体が責任をもってまとめる。選択肢はありません」

屋会長は今、国に対し施設の将来構想を策定するよう要望活動を続けています。それに先立ち、全国の入所者自治会などに将来構想の要望をまとめるよう依頼していますが、入所者の数が8人となった鹿児島県の奄美和光園など療養所の半分以上は、要望をまとめられず、厳しい運営状況が浮き彫りとなりました。

(邑久光明園入所者自治会 屋猛司会長)
「将来構想は、残された入所者が最期まで尊厳ある人権という形で地域の人たちと交流しながら、安心して医療看護介助を受けられる形で全うする。当事者がもの言える間に頑張ってほしい」

将来構想は国の責任で策定すべきと訴える屋会長。国は、入所者が眠る納骨堂や交流会館については保存の方針を示していますが、施設や資料の保存については決まっていません。

屋会長は2024年、日本弁護士連合会の渕上玲子会長に対し、将来構想の策定について国に働きかけるよう要請書を提出。これを受け、2025年3月に発表された会長声明では「入所者の療養生活を将来にわたって保障するには程遠い状況」と指摘、そのうえで将来構想を速やかに策定し実行するよう国に求めるとしています。

(邑久光明園入所者自治会 屋猛司会長)
「これから動く時に日弁連の力を借りなければならない、厚生労働省に話をするのに力強い味方ができた」

6月22日は、「らい予防法による被害者の名誉回復及び追悼の日」。これに合わせ、6月19日に東京で行われる式典に出席した後、屋会長は、国の担当者と協議を進める予定です。

(邑久光明園入所者自治会 屋猛司会長)
「(Q:どうしてそこまで?)責任感もあるし、皆さんの思いですよ。生きて良かったと思えるような最期を全うしてくれたら一番ありがたい、亡くなる前に心配事があるままは忍びない」

全国の入所者の思いを背負い、屋会長の活動は続きます。

岡山放送
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