大正時代から100年以上続く、福島県会津美里町の老舗の納豆屋の4代目は、伝統の味を守りながら「納豆を超える納豆」を目指し、新たな挑戦を続けている。
■初代から受け継ぐ「経木納豆」
会津美里町で納豆一筋、創業102年を迎える新田商店の4代目・新田俊さん。
新田商店の看板商品は、アカマツの薄い皮「経木」に包んだ納豆だ。初代から受け継いできた「経木納豆」は、豆の柔らかさと納豆特有の匂いが少ないのが特徴。
「しっかり洗浄して時間かけて浸水させて、炊き方も結構じっくり時間長めにとって、ふっくら炊き上げる。大豆本来の良さみたいな部分が引き出せれば、納豆臭いような納豆ではないのかな」と新田さんはいう。
■地元の人の声に気づかされ
「代々守られてきた新田商店を継ぐつもりは無かった」そう語る新田さんの背中を押したのは、地元の声だった。「とあるおばあちゃんに『私はあなたのとこの納豆じゃないとダメだ』と言われて、先代たちが作ってきた納豆がそういう存在なのだということに気が付いたと」と新田さんは振り返る。
「先代たちが守ってきた味を未来へつなぎたい」そんな思いを胸に、納豆の新たな可能性を追求する新商品の開発が始まった。これまでに開発してきた納豆は、10種類以上にのぼる。なかにはタレに会津の山塩を使った納豆もあった。
■納豆を海外にも
先代たちから受け継がれてきた技術を使って、この日も新田さんは工場に立ち新商品の開発に挑んでいた。
新田さんがいま開発を進めているのは、会津坂下町「二八醸造」の玄米醤油麹とコラボした乾燥納豆。納豆独特の食感が気にならない乾燥納豆は、納豆が苦手な外国人でも受け入れてもらいやすく、海外への販路拡大のきっかけにしたいという狙いがある。
■伝統を守りつつ可能性を追求
新田さんが開発を続ける理由は、先代から繋いできた味を後世につなぎ、納豆の新たな可能性を追求していくためだ。
「既存の納豆をゴールと捉えるのではなくて、まだ先があるようなモノとして捉える。伝統を守っていく部分、ずっと後世に繋いでいければいいなという部分と、新しい納豆の開発を進めていければいいかなと思っている」と新田さんはいう。
2025年2月からは伊佐須美神社にも縁起物として商品が置かれることになった。
新田さんは「地元に愛されるような納豆でありたいですし、県外のお客様にも認知されるような納豆になれば。新しい納豆を超えた納豆が開発できればいいなと思います」と語った。
“納豆を超える納豆”を目指して、4代目の挑戦が続いていく。