訪日外国人の消費税の免税制度をめぐり、自民党の有志の議員による勉強会が免税制度を原則廃止することなどを盛り込んだ提言を、小野寺五典政調会長、宮沢洋一税調会長にそれぞれ提出した。

免税措置は「役目を終えた」

提言のタイトルは「真の観光立国を目指して」。

夏の参議院選挙を前に、与野党が掲げる給付や消費税減税などの物価高対策の財源に注目が集まる中、「税収を増やす新たな策」として、年末にかけ行われる、2026年度の税制改正に向けた議論が注目される。

提言では、2024年に過去最高の3687万人が日本を訪れたことに触れ、「観光立国として成熟期に向かおうとしている我が国において、高級ブランド品や高級腕時計、医薬品、家電製品、化粧品といった本来観光とは無縁の物品まで税制によって後押しする時代は過ぎた」と指摘。

「購入場所は大都市圏の百貨店や量販店に偏っており、高級ブランド品などの外国人観光客への販売を税制によって後押しすることが果たして国民の理解を得られるものか大いに疑問がある」としたうえで、「訪日外国人に対する消費税の免税措置はその役目を終えたものとして廃止するべき」と明記した。

また、購入した商品を日本国内で転売する不正利用が横行している点も指摘されている。

政府は2025年度の税制改正で転売などの防止策として、出国時に購入品の国外持ち出しを確認してから消費税を還付する「リファンド方式」を2026年11月から導入することを決めた。

これについて、提言では「数万人規模の出国者に対して全員の免税商品を開封確認することは物理的に不可能」としたうえで「制度の盲点を突き、かえって不正の巧妙化を招くおそれがある」と指摘。免税の廃止を前提に、この方式への移行を速やかに停止するよう求めた。

一方、空港などで地元の名産品や工芸品などを販売している「保税売店」については、「地域の振興に寄与する有効な手段となりうるため積極的に支援を進めるべきだ」としている。

税収を増やす“新たな策”としても注目

この「免税廃止」を最初に国会で提唱したのは、自民党の中西健治元財務副大臣だ。

JPモルガン出身で金融・財政などの分野に明るく、“免税廃止勉強会”の実務を取り仕切る「事務局長」を務める。

申し入れに先立って、石破首相に対し財政健全化の実現を目指す提言を行った、党の「財政改革検討本部」や、海外からの直接投資を呼び込むための施策を提言した「対日投資拡大議連」でも事務局長を務めており、政策を進めるうえで必要な財源確保に向けた取り組みを加速させている。

訪日外国人の免税廃止については2024年、中西氏がSNSで発信したところ、約97万人が閲覧し、賛成のコメントが多く寄せられたという。

2024年12月には、衆議院の財務金融委員会で中西氏が質問を行い、その後、党内だけでなく立憲民主党や日本維新の会など野党議員からも賛同する声が上がっている。

2024年の免税購入額は約2兆4000億円と推計され、これにともなう外国人観光客への消費税の免除額は約2400億円と試算される。

この分の免除を廃止すれば “新たな税収”となるため、中西氏は「同じだけ買い物がされたとすると2400億円の増収になるはずだ。これは大いに活用していきたい」と期待を寄せる。

一方、観光客が減るのではないかとの懸念があることについて、中西氏は「ある程度の影響はあると思う」としつつも、免税を廃止した場合の消費について、「外国の方に聞くと関係ないという人が多い。10%の免税がなくても買い物するし、『10%の免税はおまけだ』、『ボーナスだ』と言う人が多い。『ボーナスはなくてもいい』という人が多いので影響は限定的ではないか」と強調した。

実現可能性は?“税調”のハードルも

今後は、年末にかけて開かれる党の税制調査会で議論の対象となるかどうかがまず焦点だ。

提言を受け取った小野寺政調会長は、「これから政務調査会で検討する」と述べた一方、税の扱いを決める税制調査会のトップを務める宮沢税調会長は、すでに2025年度の税制改正で決定したリファンド方式に向けて準備が進んでいることに触れ、「そう簡単にいくことではないが話は承った。検討する」と返答した。

ある税調幹部も、税調での議論自体難しいとの認識を示しているが、中西氏は「今年の税調より前に機運を上げ、税調で話し合うところまで持っていきたい」と話す。 

訪日外国人への税負担をめぐっては、党内で国際観光旅客税(出国税)の引き上げ案も浮上している。

政府が2030年の訪日外国人を6000万人に増やす目標を掲げる中で、訪日外国人の税負担のあり方をどうするべきなのか、今後の議論の行方が注目されている。

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