「自分のペースで勉強ができて負い目を感じることがない」。通信制高校に通う2年生の言葉が印象的だ。この10年で生徒数が1.6倍に増加し、今や全国でおよそ10人に1人が選択する通信制高校。富山県内でも昨年度は891人が学び、5年連続で増加傾向にある。定員割れの県立高校が多い中、なぜ通信制高校が選ばれているのだろうか。
「温かい雰囲気」で学びの場を提供

開校から6年目を迎えたさくら国際高校富山キャンパスでは、生徒数が年々増加し、現在は47人の高校生が学んでいる。通信制高校はさまざまな事情で毎日通学することが難しい生徒のための学校だが、同校は週3回の「対面授業」にこだわりを持っている。

午前11時から始まる50分授業を1日4コマ受けるカリキュラムが組まれており、この4月に入学した1年生たちは新しい環境での学びを始めている。ある1年生は「見学に来た時に温かい雰囲気だったので選んだ。中学生の時に学校に行けなかったので、学校に行けることが楽しい」と話す。

通信制高校では3年間で国語や数学、英語など74単位を取得することで高校卒業の資格を得られる。さくら国際高校では学習だけでなく、スポーツレクリエーションや音楽鑑賞会など全校生徒で取り組む行事も数多く開催されている。
不登校増加と中退者受け入れ

通信制高校の生徒増加の背景には、不登校の増加があると指摘されている。富山県内では小・中・高校生あわせて3255人が不登校となり、過去最多を記録した。

また、県内で高校を中退した生徒は296人と近年増加傾向にあり、そのうち約半数が「学校に馴染めない」「授業が合わなかった」といった学校生活・学業不適応を理由としている。

さくら国際高校富山キャンパスの高和正純校長は「保護者や生徒本人が自分自身のことを考えている。こういう状態だったらどこがいいのかを考える、その選択肢として通信制高校に焦点が当たるのでは」と分析する。
同校では1年中編入を受け付けており、在籍していた学校の単位を引き継いで転入することも可能だ。これにより、さまざまな事情で学びの場を失った生徒たちに新たな機会を提供している。
通信制高校だからこその学び

高和校長は通信制高校の価値について「中学校へ行けなかったとしても、進む方向性を明確化し、社会で役立つ場面を見出していく。通信制高校だとか言って見下されることは全くない」と強調する。
「自分の生き方を考えて、特技長所を伸ばして、社会勉強をする。他の高校にない、通信制高校の有利な部分」と通信制だからこそ学べることの多さを指摘する。
一方で教育の専門家からは、通信制高校で受験のハードルが低く「楽そうだから」などと安易に入学する生徒が増えるのではないかという懸念も示されている。

さまざまな事情を抱えた子どもたちの受け皿、居場所として重要な役割を果たす通信制高校。生徒たちの多様なニーズに応える選択肢として存在感を増す一方で、教育で何を重視するのか、高校教育の在り方が問われている。