特集です。
言葉がつまる同じ言葉を繰り返すなど、発話障がいの1つとされる吃音。
広島市立牛田中学校の放送部が話し方をからかわれた経験を乗り越え、目標に向かって努力する同級生を描いた映像作品が賞を受賞しました。
≪グランプリ受賞作品 「THE BRAVE」 提供:牛田中学校放送部≫
「では次、池岡君」
(池岡大燿さん)
「僕は小さい頃から吃音があります。吃音とは言葉がスムーズに話せない。文章をすらすら読めない症状のことで100人に1人いると言われています。吃音は連発と難発と伸発の3種類があります」
(生徒と池岡大燿さんが説明)
「連発とはカ、カ、カラスのように最初の音を繰り返してしまうことです。
難発とは…カラスのように最初の音が出にくいことです。
伸発とはカーラスのように音を伸ばしてしまうことです」
中学生の放送部が作ったこの作品は市民映像祭のグランプリに輝きました。
牛田中学校 広島市東区
<チャイム>
中学3年生の放送部員、池岡大燿さん。グランプリを受賞した作品の主人公です。
この日も、昼の校内放送が始まります。
<放送前の練習>
【池岡大燿さん】
「歯と口の健康習慣です。よくかんで食べることは虫歯予防にとても大切です。かむことは歯を丈夫にし、あごも発達させます。いけるかな」
池岡さんにとって校内放送は何度経験しても緊張を感じます。
<校内放送の本番>
【池岡大燿さん】
「6月4日から10日は歯と口の健康習慣です。よく噛んで食べることは虫歯予防にとても大切です。かむことは歯を丈夫にし、あごも発達させます。脳が刺激されるので、頭の働きもよくなります。よくかんで食べましょう」
吃音がある池岡さんが放送部に入ったのには理由があります。
【池岡大燿さん】
「入部した初めに言った。自分が吃音ということを。言うのは抵抗があった。吃音の人はしゃべるのが難しい。自分からしゃべる所に行くことは少ない。苦手だからこそやってみたい。
≪グランプリ受賞作品 「THE BRAVE」 提供:牛田中学校放送部≫
「小学校の頃はよく真似をされました。その頃自分は吃音という言葉も知りませんでしたし、そういう人は自分だけかと思っていました。自分だけ変わっているんだと。そして、このしゃべり方を仕方ないとあきらめていました」
(母・池岡貴子さん)
「小学生の頃は吃音をからかわれることが多かったので、息子が涙ながらに話をしてくれたときは悲しかった。周りに吃音を相談したとき母親である私の接し方がいけないのではないかと言われたこともあったので、親の接し方が吃音とは関係ないと分かっていても自分を責めてしまったり、息子に申し訳なく思ったりすることが多かった」
【池岡大燿さん】
「吃音を知らないし、仕方ないという気持ちもあった。でも嫌だなという気持ちはありました」
放課後、放送部はコンテストに向けて練習をしています。
【池岡大燿さん】
「鎮めたまえ、荒れ狂う流れを…」
池岡さんにとって朗読は簡単なことではありません。
池岡さんはこれまでの経験を元に話しやすい方法を考えました。
【池岡大燿さん】
「か行とた行が苦手。発音しやすいように口をどんな形にするか、腹式呼吸をやる。文字ごとに、全部どの発音方法がいいか考えました。練習したことが本番に出せない。緊張して。そこが難しい。普段の練習で発音しやすいように表を作りました。
≪グランプリ受賞作品 「THE BRAVE」 提供:牛田中学校放送部≫
「部活選びを迷いました。放送部に入りたいと思っていたが、とても勇気がいること。吃音がある僕が入部したら迷惑をかけてしまう。自分自身も苦労すると思った。
それでも入部を決めたのは自分の表現の仕方を見つけたいと思ったから。僕は人と話すことが好き。傷ついても人と接したい。自分を表現したい。僕でしか表現できないことがきっとある。それを見つけていきたい。それは勇気がいることでも、その勇気を持ちたい。同じ吃音がある人に放送部や話せる場所に入れるというのを伝えてあげたい」
からかわれ、悩み続けた自分の話し方。
それでも人と話したい吃音のある。自分だからこそできる表現をきょうも探し続けます。
<スタジオ>
新川さん、人口に対する吃音のある方、比較的多いようにも感じます。
そういった意味で社会全体での理解っていうのが当然必要になってきますよね。
【コメンテーター:JICA中国・新川美佐絵さん】
「本当に池岡さん強い方だなって思ったんです。中学生でからかわれたことを再現するって本当に苦しいし、相手を憎んで終わってしまっても仕方ないはずなのに、それを発信していく。私たちが知らないからこそ、もしかしたら無意識にしてしまっている差別もあるかもしれない。当事者の方がこうやって正確なことを伝えてくれるって本当に大事だし、ありがたいことだなと思いました」
【コメンテーター:元カープ・山内泰幸さん】
「表現することが好きということで、苦手なことに挑戦しているってこと素晴らしいですし、自分が先頭に立って、こういうものがあるんだよって教えてもらっているような感じがします」