【吉原功兼キャスター】「ついに来たぞキルギス」

中央アジアの国「キルギス」。中国の西、山々に囲まれて大自然が広がる国。キルギス政府から招待されるという思わぬ機会に恵まれ、今回の取材は実現しました。

名産・蜂蜜のおいしさの秘密。ベールに包まれた遊牧民の暮らし。さらに想像を超える国をあげての“挑戦”。

キルギスの知られざる素顔を、スタジオから飛び出した「newsランナー」吉原キャスターが取材しました。

■吉原キャスターがキルギス政府から招待された理由

そもそも、なぜキルギス政府から招待されたのか。

ことし1月、万博開幕に向けて取材していた吉原キャスター。日本語が堪能なキルギスパビリオンの担当者・アジスさんと出会いました。

名産の蜂蜜を試食させてもらい、意気投合した2人。
【吉原功兼キャスター】「おいしいですね」
【アジスさん】「まいう~?」
【吉原功兼キャスター】「まいう~まいう~」

吉原キャスターの何気ない投げかけが、万博での蜂蜜試食にも結び付きました。
【吉原功兼キャスター】「キルギスパビリオンで蜂蜜が食べられるんですか?」
【アジスさん】「あ~ちょっと難しいかもしれませんが、頑張って何かをしましょう」

その後、アジスさんは「newsランナー」に何度も出演し、一連の報道が政府の目にとまったことで、「キルギスを紹介したお礼」として招待されたのです。

■「キルギス」ってどんな国?

旧ソビエト連邦から1991年に独立したキルギス。中国の西に位置する内陸国で、街では多様な歴史や文化を感じられます。人口は大阪府よりも少ない約700万人。多くがイスラム教徒です。

関西空港から飛行機を乗り継いで15時間。夜中に到着した吉原キャスターをアジスさんが出迎えてくれました。

【アジスさん】「ようこそキルギスへ!みんな待っています。政府の招待で、吉原さんをみんな待っています」

翌朝、首都ビシュケク市内を散策します。

【吉原功兼キャスター】「何かヨーロッパを思わせる感じですよね。立派な像です。馬に乗りながら、王様でしょうか、剣をもっています。こういうシーンを見るとかつてキルギスがソビエト連邦の一部だったことを何となく感じます」

■吉原キャスターとアジスさんを結び付けた「蜂蜜」おいしさの秘密

キルギス最大の市場「オシュバザール」には、いたるところに蜂蜜の店があります。種類も豊富です。

ここでアジスさんが息子のアイベック君(6)と一緒に来てくれました。万博で味わった特産の蜂蜜も持ってきてくれました。

【吉原功兼キャスター】「アイベック、みんなで食べよう。味はどう?」
【アイベック君】「まいう~」

どのように作られているのか、アジスさんの案内で蜂蜜が取れる場所へ連れて行ってもらいます。

【吉原功兼キャスター】「蜂蜜が取れる場所って、これからどれぐらいかかるんですか」
【アジスさん】「大体2時間くらいです。少し遠いですけど」

【吉原功兼キャスター】「一面花畑で蜂もいっぱい。刺されませんか?」
【アジスさん】「いい人だから刺されないです」

到着したのはカザフスタンとの国境近く、高山地帯にある花畑。そこで迎えてくれたのが、アジスさんのお兄さん・アスカルさんでした。アジスさんとそっくりです。アジスさんの実家は代々ここで白い蜂蜜を採取しています。

高原に咲くのはピンクの「ホーリークローバー」。

【アスカルさん】「ホーリークローバーだけこういう白い蜂蜜を出しています」

蜂がこの花の蜜を吸うことで、蜂蜜は白く、香り豊かになるのだそうです。

【吉原功兼キャスター】「(蜂の巣箱の)中を見せてもらうことはできますか?」
【アスカルさん】「(だめだめだめ)」

実は、開けられない理由に、おいしさの秘密が隠されていました。蜂蜜はもともと蜂が冬を越すための“ごはん”になるもの。蜂にストレスを与えずに過ごさせて、冬を超えて残った蜂蜜だけを採取しているのです。

【吉原功兼キャスター】「蜂が気持ちいい状態で蜜を運ぶ。だからより味が伝わるということなんですね」
【アジスさん】「兄のフィロソフィー(哲学)です」

「白い蜂蜜」が貴重でおいしい秘密を知り、心して味わわなければいけないと思った吉原キャスターでした。

■遊牧民の家「ユルタ」

吉原キャスターはさらに山奥へ。キルギスの国土の90パーセントが標高1000メールト以上で、「中央アジアのスイス」と呼ばれています。

4月に万博・キルギスパビリオンの説明をしてくれたアジスさんは、こんな話をしてくれていました。

【アジスさん】「キルギスにいらっしゃればいい。『ユルタ』という遊牧民の家で寝ると、1時間だけでも、すぐストレスがなくなります」

本当にキルギスの山奥で、年々減ってきているという遊牧民が暮らす「ユルタ」を建ててもらい、本当に眠ってしまいました。

【吉原功兼キャスター】「自然と溶け込むような感じで落ち着きますね。日本では味わえない日常ですよ」

朝から取材に付きあってくれたアジスさんも夢の中です。

■アジスさんの正体そしてキルギスの国家戦略「ITを広めたい」

【吉原功兼キャスター】「本当にキルギスのいいところたくさん分かりました。アジスさん、こういうことを万博で伝えたかったんですね」
【アジスさん】「そうですね…。でも本当に言いたいのは、ITを広めたいですね」
【吉原功兼キャスター】「IT? ITというイメージがキルギスに正直ないですが…」

キルギスの“違う顔”を見るべくやって来たのは「ハイテクパーク」。アメリカやドイツなど500社ほどのIT企業が加盟する、政府が設置した機関です。

【アジスさん】「彼はアメリカの有名な会社です。ヘッドクウォーターはペンシルベニアで、200人の労働者がキルギスで勤めています」

(Q.海外の企業がハイテクパークに加盟するメリットは何ですか?)
【加盟企業の従業員】「ここは税金が5パーセント以下で低いし、優秀な人材がいるからです」

加盟企業には法人税などの優遇があり、キルギス国内でのIT産業の活性化が狙いです。このハイテクパークのCEOを務めるのはアジスさん。万博だけでなく、キルギスのIT産業を作ってきた第一人者だったのです。

ここでは技術開発もしています。例えば会話が可能な小さなAIロボット。

【吉原功兼キャスター】「関西テレビってどんなテレビ局ですか」
【AIロボット】「関西地方の主要な放送局の一つで、『報道ランナー(newsランナーの以前の番組名)』などの人気番組があります」
【吉原功兼キャスター】「ちょっと違います。『報道ランナー』って言いました。アジスさん『newsランナー』に変えてくださいよ」

整っているのは、制度だけではありません。ハイテクパークに加盟している企業は、24時間稼働している施設の中で、どの国の企業も時差を気にせず働けるようになっています。充実した設備で、20代の若きエンジニアたちが活躍しています。

【吉原功兼キャスター】「(想像していたものに)追いついていない、キルギスの現実に。遊牧民体験や蜂蜜取ったりして、そのあとここ来て、『同じ国?』みたいな」

アジスさんは、ここに至るまでの道のりを話してくれました。

【アジスさん】「20~25年前は石油・石炭がない。若者は仕事がなくて海外に出てしまって、仕事を作ろうという気持ちがあって、インターネットを通じて仕事を見つけようと。若者にチャンスがあるでしょうと少しずつ頑張ってきた」

熱い思いが今の形になったのです。

■キルギスの副首相が話す万博にかける思いと狙い

取材最終日。大統領府の内部を訪れました。海外メディアが入るのは初めてだそうです。

出迎えてくれたのはエディル・バイサロフ副首相です。

【吉原功兼キャスター】「ニュースを見ていただいたということで、いかがでしたか」
【エディル・バイサロフ副首相】「私だけではなく、キルギスの国全体が感動しました」

「newsランナー」を見て「国が感動した」と話してくれた副首相。日本で開催される今回の万博は特別だといいます。

【エディル・バイサロフ副首相】「今年は日本とキルギスにとってターニングポイントとなります。 ともに成長することで、投資、ジョイントベンチャーや教育機会が増えるでしょう」

さらに見据える未来について語ってくれました。

【エディル・バイサロフ副首相】「(IT産業を通して)キルギスの若者が国に残り、また世界の若者をキルギスに引きつけることが我々の願いです。キルギスに住みながら、世界のために仕事してほしい」

いま国が一丸となって成長しようとしています。

■万博の持つ力で国を越えて人の輪が広がる

3泊5日の弾丸取材も終了、アジスさんともお別れです。

【吉原功兼キャスター】「出会いがあったから僕はここにいます。この関係を続けていきましょう。ありがとうございました」

吉原キャスターは、「アジスさんとの出会いから、多くの人との出会いにもつながって、人の輪が広がっていったのは、万博の持つ力だと改めて実感しました」と言います。

万博は人と人、国と国との交流の場でもあります。万博をきっかけに海外の要人が来日し、いわゆる万博外交が繰り広げられますが、キルギスのバイサロフ副首相も来日していて、6月4日に林官房長官と経済関係などについて会談をしたということです。

こういった広がりも万博の一つの魅力だと言えるでしょう。

(関西テレビ「newsランナー」20205年6月5日放送)

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