少なくとも247億円に上ったいわき信用組合の不正融資が、波紋を大きく広げている。第三者委員会の調査結果が公表されてから初の営業日を迎え、利用者からは厳しい声が相次いで聞かれた。またいわき市などは、混乱が起きないように相談窓口を設置、対応に追われている。

■利用者「信頼できない」

6月2日、いわき信用組合の一連の不祥事を調べてきた第三者委員会が報告書を公表してから初めて迎えた営業日。
利用者からは「驚きというか、金額があまりに多かったので、そこまでなぜ発覚しなかったのか不思議。信頼できない」「心配は心配。皆さん他の銀行に移しているみたいで、どうしようか考えています」「やはり包み隠さず洗いざらい話して欲しい」との声が聞かれた。

■類を見ないほど悪質

5月30日に第三者委員会が公表した調査結果。
第三者委員会はいわき信用組合の不正融資を200頁に及ぶ報告書の中で「我が国の金融機関の歴史を見ても類例をみないほどに悪質な事案」と位置付けた。
不正融資の件数は1293件、総額は少なくとも247億7000万円。期間は遅くとも2004年3月から2024年11月までの20年にわたると認定された。


■隠ぺい体質

大口の融資先を支援するために、当初行われたのはペーパーカンパニーを通じた“迂回融資”。
その3年後には、預金者の名義を勝手に使い開設した口座を通じた“無断借名融資”という方法に切り替わった。
繰り返された不祥事発生の温床とされたのが、隠ぺい体質だ。
第三者委員会の金田康裕委員は「なぜ多くの役職員が不正を拒否できなかったのか、告発できていなかったのかについては、大きく理由が2つ考えられると思っている。1つ目は特定の人物が人事権を掌握していたこと。そして、もう一つがパラハラ行為による上位下達の組織風土が根付いていたことがあげられる」と指摘した。


■全容解明にはほど遠い

『B資金』・・・組合内部で不正融資はそう呼ばれていたという。第三者委員会の新妻弘道委員長は「その他にも、我々が調べた資料には“C資金”、あるいは“D”といった単語も使われておりまして、これが何を指しておりどういう意味を持つのかというところは全く調査が及んでおりません。不正融資のうち8.5億円から10億円の説明が付かない金額の使途も全く分かっていないという状態。全容解明には程遠いと言わざるを得ない」と話した。

■表裏 特異な金融機関だった

第三者委員会の調査報告書を受けて、会見を行ったいわき信用組合。本多洋八理事長は謝罪した上で「大きな不祥事案を内部に抱えながら、地方創生に資する取り組みを積極的に行う金融機関として、いくつかの外部機関の皆様からも表彰を受けたりしています。そういった“表”と“裏”の二面性を持つ特異な金融機関だったといえます」と話した。
自らも含め9人の役員のうち7人が辞任。経営管理体制を刷新し再発防止に取り組んでいく考えを強調した。


■相談窓口を設置

新体制は6月13日の総代会で示される予定だが、地域経済には波紋が広がっている。
いわき市は、商工会などと連携し6月2日に相談窓口を設置。今回の不祥事を受けて融資中止などを心配する事業者の声などに対応していく方針だ。


■大口融資先の資金繰りを支援?

いわき信用組合から大口融資先へは、限度額の52億円を融資していたのだが、それでも融資先の業績は悪化。万が一経営破綻すると、融資した金が返ってこずいわき信用組合の経営状況にも大きな影響があることから、不正融資で企業を支援していた。

■他人事 いわき信用組合の会見

2時間にわたり行われた会見の中でいわき信用組合の本多理事長は「“オモテ”と“裏”の二面性を持つ特異な金融機関だった」と振り返るなど、どこか“他人事”のように話す場面も目立った。また、笑みも見せる場面も何回かあった。
自らも含め多数の役員が不正に関与しているにも関わらず、当事者意識の薄さを感じる会見だった。


■ハンマーで破壊・手帳を破棄

第三者委員会が「全容解明は程遠い」と指摘するように、第三者委員会の調査にいわき信用組合は決して協力的とは言えなかった。
例えば、“無断借名融資”のリストを管理していたパソコンを、管理担当者は発覚後にハンマーで破壊したと説明。第三者委員会に提出されることはなかった。
また絶対的な存在だったとされた江尻前理事会長は、業務に関する記録などを記載した4年から5年分の手帳とノートを破棄していた。

■刑事事件に発展する可能性も

また、第三者委員会が「成立する可能性がある」と指摘した法律上の問題点は…
・有印私文書偽造罪
・背任罪
・銀行法違反
・個人情報保護法違反
・法人税法違反
・証拠隠滅罪
など多数に上っている。
福島地検いわき支部には告発状も提出されていて、いわき信用組合は「事実として承知していないためコメントのしようがない」としている。
今後、刑事事件に発展するかどうかも注視する必要がある。

いわき信用組合では、6月3日と5日に本多理事長が総代に対して説明を行う予定だ。

福島テレビ
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