我々が向かったのは、札幌市北区に住む山口さんのお宅。
ある日突然、庭にあるサツキの木陰に、カモの卵を発見したというのです。
「普段土が絶対にない場所に土があったので『変だな』と。そこに卵が」(カモの卵を発見した山口さん)
カモを見守るべく、山口さんはカメラを設置。そこには、大切そうに卵を温める母ガモの姿がありました。
周辺では時々、カモが飛んでいるのを見かけたといいます。
山口さんのお宅の庭には、こんなにたくさんのカモの卵が。
人間の住む住宅街での産卵は、よくあることなのでしょうか。
「あまり例はないが、川から近ければあり得る」(旭山記念公園職員 皆川昌人さん)
山口さんのお宅は、川から約100メートルほど。この川は、カモが生息するのに適した自然環境が整っており、市内でも有数のスポットとなっているそうです。
母ガモは、その周辺で天敵の少ない産卵地を選びます。
山口さんは「雛が生まれるまで見届けたい」と、毎日数時間ごとにカモの様子を観察し始めました。メモには観察記録がびっしり書かれています。
カメラを設置してから約1か月。
「現在、午前3時30分。『卵がかえりそう』と連絡がありました」(番組ディレクター)
駆け付けた番組スタッフは山口さんとともに、モニターで様子を見守ります。
「あっ、動いた!」(番組ディレクター)
ついに、雛が生まれたようです。
「よかったわ~孵化(ふか)して」(山口さん)
小さくも力強く鳴き声を上げながら、雛たちが顔を出しています。
そして、その数時間後…先ほど生まれたばかりの雛たちを置いて、母ガモが外へ飛び出していきました。
突然の出来事に驚く雛たち。きょろきょろと焦っている様子。すると…
1羽、また1羽と、お母さんを必死に追いかけます。
カモは生まれた時から羽が生えていて、ゆっくり着地ができるため、ジャンプはお手の物。
ですが…初めての外の世界。恐る恐る飛び出していきます。
ようやく全羽揃いました!お引っ越しの始まりです。
「(Q:生まれてすぐ移動はよくある?)すべて揃った場合は移動する。水辺環境じゃないと生活できないのでお引っ越し」(皆川さん)
カモは水辺の植物をエサにしているということで、さっそく近くの川まで移動します。しかし!
「あっ、カラス来た!」(番組ディレクター)
天敵のカラスに襲われてしまいます。
なんとか無事にみんなで庭を抜け出しますが、移動中も危険がいっぱい。命がけのお引っ越しが始まりました。
ここで次の壁。道路への第一歩がなかなか踏み出せないようです…。
勇気を出して…ぴょん!踏み出しました。
ほかの雛たちも見習って、あとに続きます。
「道路に出てきました、どちらへ向かうのでしょうか」(番組ディレクター)
右見て、左見て…車や自転車に気を付けて進んでいきます。
「川の方にやってきました」(番組ディレクター)
山口さんも心配そうに見守る中、川はもう目の前。
力を合わせて、なんとか柵を越えていきます。
さあ、いよいよ川へ。母ガモは躊躇なく飛び込んでいきますが、子ガモたちは右往左往…ためらっている様子。
ようやく1羽、降りていきました!
さあ、あとに続けるのでしょうか?
次々と仲間を追いかけていきます…。
「全員入りました!」(番組ディレクター)
「肩の荷が下りた…。ホッとしました」(山口さん)
これにて一件落着。数々の難所を乗り越え、全羽が無事、川へたどり着くことができました。
もしカモの親子を見かけた場合は、周辺の車や自転車に注意を呼びかけ、間接的にあたたかく見守ってくださいね。