仏壇を現代の生活スタイルに合わせて作り直すリノベーション。その技術を能登半島地震の被災地でも生かしている職人が秋田県湯沢市にいます。北陸で身に付けた技で恩返しをしようと、被災した仏壇の修繕などに力を尽くしている職人を取材しました。

湯沢市川連町で仏壇の製造や修繕を行っている1950年創業の「新平堂」。得意としているのは、古くなった仏壇をリノベーションする「リノベ仏壇」です。

「リノベ仏壇」とは、仏間に据えられた昔ながらの大きな仏壇を、元の面影を残しながら現代の生活様式に合わせてコンパクトに作り直したものです。

「仏壇の伝統というものが廃れるのではないかと考えた。処分をしないで残していけないかとリノベーションを始めた」と話すのは、新平堂を経営する高橋恒仁さん(66)。(※高橋さんの「高」は「はしご高」)

父親から会社を引き継いだ高橋さんは、時代とともに生活スタイルが変化し、仏壇を“売る”機会より“処分する”機会が多くなったことを危惧して「リノベ仏壇」に思いが至りました。

北陸や東京で修業を重ねた高橋さんの塗りや組み立てなどの技術は、より繊細な作業が求められる小さな仏壇づくりにも生かされています。

2024年1月、北陸地方を襲った能登半島地震。地震の被災地で高橋さんの技が発揮されました。

台のところに水が入ってきて、塗りがめくれてしまっている仏壇。

地震から数カ月後、高橋さんのもとに石川県の仏壇メーカーから、被災した仏壇の修繕依頼が届きます。

「修業時代、技術を学んだ北陸に恩返しをしたい」と高橋さんはすぐに被災地へ向かいました。

被災地で活動する高橋さんに、仏壇の持ち主から「家族との思い出を大事にしたい」という切実な思いが寄せられました。

新平堂・高橋恒仁社長:
「私が若い時からお世話になっている。輪島などの職人が技術を教えてくれて、ずっと仕事をしてきた。いまの新平堂があるのは北陸3県のおかげ」

高橋さんは被災した住宅から仏壇を預かり、修繕のほか、新たな住宅に合うようにリノベ仏壇として再生しました。

新平堂が能登半島地震の被災地から依頼された仏壇の修繕やリノベーションは、これまでに20件ほどに上っています。新たな形に生まれ変わった仏壇を持ち主に届けると、涙を流しながら感謝されることもあったそうです。

新平堂・高橋恒仁社長:
「先祖への思いが強い人からは『本当にありがとう』と言ってもらった。仕事をやってきて本当によかったと思う」

大雨や地震など毎年のように日本各地を襲う自然災害。高橋さんは自身が身に付けた技を、被災した人たちのために役立てたいと考えています。

「若い時から一流の職人に教えてもらってつくってきたので、全国の職人の技を吸収していると思っている。どんな仏壇がきても、どんな頼み事にも応える自信はある」と話す高橋さん。

リノベ仏壇として生活様式の変化に対応した新平堂の匠の技。被災者の思いにも応える高橋さんのその技が光を放っています。

秋田テレビ
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