東京電力は5月30日、福島第一原子力発電所2号機での使用済み核燃料の取り出しに向けて、核燃料をつかんで取り出すためのクレーン設備を、取出し用に設けられた作業用の部屋にあるレールに搬入完了したと公表した。

第一原発2号機の使用済み燃料プールには、使用済みの核燃料587体と、未使用の燃料28体の、合わせて615体の燃料が保管されていて、専用の容器に格納したうえで建屋の外にある「共用プール」に移動させる計画。
取り出し装置を動かすための“レール”の設置は2025年3月に完了。クレーン設備は神奈川県の工場から海上輸送され、5月24日に福島第一原発への搬入が完了していた。
東京電力は2026年度のはじめにも取り出しを開始したいとしている。

2025年4月末の時点で、1・2・5号機の使用済み燃料プールに残されている使用済みの核燃料は2000体あまり。事故で溶け落ちた核燃料=燃料デブリの取り出しと合わせて、この核燃料を取り出し安定した状態で保管することが課題となっている。

また、2025年4月には、事故後2回目となる燃料デブリの試験的取り出しが行われたが、2回の採取量を合わせても約0.9g。第一原発には880tの燃料デブリが残ると推計されていて、まだその10億分の1程度と、取り出し完了までの道は遠い。

原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)の更田豊志 廃炉総括監(元原子力規制委員会委員長)は、5月20日に福島県福島市で開かれた報道記者との懇談会で「デブリ取り出しが廃炉の本質ではない」と指摘したうえで、使用済み核燃料を早く地上におろすことや、今後起こりうる地震に備えて使用済み燃料プールの水を抜く作業を早急に進めるべきとした。

一方で、「個人的な意見」と前置きしたうえで、「2051年に燃料デブリの取り出しが完了しているはずがない」「間違いなく無理だと思っている」とし、「本格的な最初の一つかみがそのころにできていたらいいかなというくらいの気分」との見解を示している。

国と東京電力は2051年までの廃炉完了を掲げていて、2024年に実施された事故後初めての燃料デブリ採取の着手をもって、廃炉は最終段階の「第3期」へと入った。

福島テレビ
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