菅新政権が発足して1週間。4連休が明けて本格的に政策課題に向き合うことになる。

どのような政策にどう取り組んでいくのか、その行方を探った。

菅内閣発足「東京大会に期待する声に変えていかなければ」

16日に発足した菅新内閣で、橋本聖子五輪相が再任した。
新型コロナウイルスの感染拡大により、来年に延期となった東京五輪・パラリンピック開幕まで1年をきり、大会の簡素化、コロナ対策など、大会を巡る議論は真っただ中だ。

スピードスケート、自転車競技で過去7回、五輪に出場し、“五輪の申し子”とも言われる 橋本五輪相。去年9月に就任し、大会本番も担当大臣として迎える予定だ。

17日、ガッツポーズで写真撮影 森会長・萩生田文科相・橋本五輪相
17日、ガッツポーズで写真撮影 森会長・萩生田文科相・橋本五輪相
この記事の画像(4枚)

安倍政権を継承する菅新政権の下でも「コロナに打ち勝った証として東京大会を開催させる」という従来の方針は変わっていない。菅内閣の発足に、大会準備にあたる職員からは「粛々と準備を進めていくだけ」という声の一方で、「中止の可能性もゼロではないなか、自分たちのやっている仕事は意味のあることなのだろうか…」と、心の葛藤も聞こえてくる。

来年、東京五輪・パラリンピックは本当に開催できるのか。厳しい見方もあるなか、橋本五輪相は再任後の会見で「多くの方々が東京大会に期待するという声に変えていかなければいけない」と強調。翌日には組織委員会の森会長、翌々日には東京都の小池知事のもとを相次いで訪れ、大会の成功に向けた連携を改めて確認した。

コロナ対策の具体化で大会開催への道筋を

9月には政府主導で、大会に向けたコロナ対策を検討する調整会議が立ち上がった。コロナの収束や、ワクチン普及など、来年の状況が見通せないなか、選手の入国管理から、移動手段、選手村や競技会場での感染対策など、すべての場面ごとに、検査や医療体制などを関係者間で検討している。検査の複数回実施や、行動を制限することで、200を超える国・地域から1万人あまりの選手を安全に迎え入れる環境を整え、まずは開催への道筋をつけたい考えだ。

調整会議の関係者は「選手だけであれば行動履歴を追え、検査体制も整えられる」と自信をみせるが、頭を悩ませるのが観客への対応だ。来年大会時の入国制限の状況にもよるが、選手と違い、海外からやって来る何十万人もの観客の行動制限、検査や医療体制への対応は難しく、感染拡大のリスクも高まる。

 
 

水面下では、観客をどこまで受け入れるか、無観客の可能性も含め検討が進められている。選手に対しても行動規定の違反や、検査で陽性となった場合、出場停止などの措置をどうするか…検討課題は山積みだ。

さらに、対策を固めた先に待ち受けるのが、費用負担の問題だ。1年延期やコロナ対策に伴う追加費用は数千億円にも上る見込みで、国際オリンピック委員会(IOC)、組織委員会、東京都、国による議論はこれからだ。3年前、大会経費1兆3500億円の負担をめぐり、交渉は難航したが、再燃が予想される。

開催可否を決めるのは「菅バッハ」

菅首相は23日、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長と電話で会談し、コロナ対策に万全を期しつつ来年の東京大会をしっかりと開催し成功させるよう取り組む方針で一致した。

大会の1年延期は、今年3月、安倍前首相とバッハ会長の電話会談により決定した。ある大会関係者は「イニシアチブは政府にあり、最終的には菅バッハで開催可否を決めるのだろう」と話す。

開催可否を決めるのは「菅バッハ」
開催可否を決めるのは「菅バッハ」

今後の感染状況はまだ見通せないが、先日にはテニスの全米オープンが開催され、大坂なおみ選手が優勝するなど、スポーツ界の明るいニュースも入ってきた。日本国内でも19日からイベントの開催制限が緩和され、プロ野球では観客数の上限が「収容人数の50%」になるなど、感染対策に気を遣いながらも、スポーツを楽しめる日常が少しずつ戻り始めている。

東京五輪・パラリンピックの運営を担う組織委員会幹部は、来夏の開催に向け「世界中でスポーツ大会が行われているなか、知恵を集積し、あとはどう安全にやり抜くか」だと意気込んだ。対策を一つ一つ検討、具体化し、どのような形であれば大会が開催できるのか。五輪・パラリンピックのコロナ対策は、中間整理として年内を目途に方向性が示される予定だ。
 

(執筆:フジテレビ経済部 東京五輪・パラリンピック担当 酒井志帆)

酒井 志帆
酒井 志帆