黒部市の明文堂書店黒部店が、夜間は無人営業となる24時間営業のシステムを導入した。インターネット通販や電子書籍の普及で全国的に書店が減少する中、地域の読書ニーズに応える新たな取り組みだ。
県内34店舗が消えた10年、生き残りをかけた"無人化"への挑戦
県内でもこの10年で34の書店が姿を消した。ネット通販の普及や電子書籍の台頭による「本離れ」が背景にある。そんな厳しい状況の中、黒部市の明文堂書店黒部店は先月から新たな挑戦を始めた。

「当店は20時より無人営業に移行いたします。20時から現金のお取り扱いができなくなりますので、お早めにお会計をお願いいたします」

午後8時を過ぎると、店内からスタッフの姿が消える。しかし、明かりはついたまま。店は閉まらず、24時間営業を続けている。
LINEで入店、キャッシュレス決済で深夜も本が買える仕組み

夜間の入店方法は意外にも簡単だ。通信アプリLINEで店頭に表示された2次元バーコードを読み取ると、自動ドアの鍵が開く。店内に入れば、通常営業時間と同じように本を手に取ることができる。
購入の際はセルフレジでのキャッシュレス決済のみ。入店時の読み取り情報や店内に設置された防犯カメラが盗難対策となっている。
黒部店の濱松真吾店長は「首都圏では無人の本屋さんがポツンポツンと増えてきています。新しいことに挑戦していかなければいけないという声が社内にもありました」と話す。
工場勤務者や忙しい人々に好評、月平均10人が夜間利用

同店は以前、周辺の工場で働く人たちのニーズに応えるため、コロナ禍前は午前0時まで営業していた。しかし、人件費が課題となり、今回の無人営業システムの導入に踏み切った。
「子供のノートを買いに来ました。今、子どもが必要だと気づいたので急いで買いに来ました」
「帰りが遅いので、深夜も営業しているのは助かります」
取材当日も、夜の時間帯に様々な事情を抱えた客が訪れていた。ある女性客は「家事を終わらせて暇になったので来ました。ネットだと数ページしか見られないけど、書店だと深く立ち読みして購入を検討できます」と話す。
導入から1ヶ月が経過し、平均して10人ほどが夜間の無人営業時間帯に来店しているという。
「地元のお客様に『便利になったね』と言っていただけるのが、我々の一番の目標です」と濱松店長は手応えを感じている。
ネット書店や電子書籍の利便性が高まる中でも、実際に本を手に取り、パラパラとページをめくって選びたいというニーズは依然として存在する。明文堂書店黒部店の挑戦は、地域の書店が生き残るための新たな道を示す試みとして注目されている。