2025年5月12日。長崎・対馬市の観音寺。多くの檀家が迎えるなか、1台のトラックが到着した。

13年前に盗まれた観世音菩薩坐像

トラックに載せられていたのは1体の仏像。その仏像は、長崎県の有形文化財「観世音菩薩坐像」だ。この日、13年振りに観音寺に再び安置された。

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観音寺の前住職、田中節孝さんは「こんな事件があったとは思えないほど、穏やかな風景になった」と胸を撫でおろす。

事件が起きたのは、13年前の2012年10月。観音寺に安置されていた観世音菩薩坐像が、韓国の窃盗団によって盗まれたのだ。

事件発生から3カ月後、韓国警察は窃盗団を拘束。仏像も見つかり、当然、日本の関係者は、観音寺に返還されるものとみていた。

しかし韓国・忠清南道にある浮石寺が「仏像は600年以上前に日本の海賊が略奪した」と所有権を主張。返還に”待った”をかけたのだ。

その後仏像の所有権を巡っては韓国内で裁判に発展。2023年10月、韓国の最高裁判所は「仏像の所有権は対馬の観音寺側にある」と結論付け、日本への返還が決定したのだ。韓国では、“お別れ”の法要が営まれた。

ようやく“帰国” かつての場所に

判決から1年半が経った5月10日。仏像はようやく“帰国”。13年ぶりに、かつて置かれていた場所に返ってきたのだ。

その姿を目にした観音寺の田中前住職は「やっぱり安心しましたね。13年が、一瞬にして消えてしまった感じがします。まるできのうのことのように…、悪夢だったと…、次の朝起きたら『あぁ、夢だったんだ』と…。そういう気がしますね」と静かに語った。

仏像は、6月15日まで対馬博物館で特別公開されている。

(テレビ西日本)

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