岐阜県の世界遺産・白川郷では観光客の急増により渋滞や違法駐車、ゴミ問題などの観光公害が深刻化している。白川村は対策としてツアーバスの駐車場予約制導入の検討。将来的には一般車にも予約制を拡大する方針で、観光と地域の共存を目指している。
団体バス予約制で渋滞緩和狙う白川郷
日本の原風景とも言うべき美しい景色。世界遺産にも登録されている、“合掌造り”で有名な岐阜県の白川郷では、最近、観光客が多すぎるという問題が起きている。

それを解消するため、斬新な対策が検討されているようだ。9日のテーマは「白川郷の混雑対策、駐車場を予約制に…ソレってどうなの?」だ。
9日の白川郷は、ゴールデンウィークが明けても多くの外国人観光客などで賑わっていた。
人口は約1500人で、それに対して2024年は約200万人の観光客などが訪れた。

観光客の受け入れと住民生活を両立させるために国が支援する、観光庁・オーバーツーリズム対策の対象30地域に京都や鎌倉、札幌などと共に選ばれている白川郷。
白川郷付近ではごみのポイ捨てや、無許可で客を乗せる違法な白タク行為など、オーバーツーリズム、いわゆる「観光公害」に悩まされている。特に問題となっているのが「駐車場」だ。
取材班:
午前10時の白川郷せせらぎ公園駐車場です。すでにバスが複数台止まっていて、たくさんの方が白川郷へと歩いて向かっています。

9日も朝早くから、駐車場には観光バスがずらりと並んでいた。そこに向かうまでの道に問題が起きているという。
白川村役場 観光振興課・小瀬智之さん:
多くの観光客が来るため、渋滞が起きる。住民が外に買い物に行けなかったり、自分の私有地に勝手に車を止められて、車が出せないトラブルも起きた。

地図を見ても分かるように、白川郷のメインの駐車場に向かう道路は、ほぼ一本道だ。休日にはこの道路が駐車場に入れない車で大渋滞となり、住民にも影響を及ぼしている。
そのため、白川村ではオーバーツーリズム対策の一つとして、ツアーバスに対して駐車場の予約制導入を検討している。しかし、なぜ対象はバスだけなのか。
白川村役場 観光振興課・小瀬智之さん:
年間で全体の車の4割が団体バスで、半分近くを占めている。そういったところをテコ入れする。周知方法もツアーバスは日本の会社が主なので実行しやすい。

実はすでに白川村では、10月から駐車料金を値上げすることも決まっている。普通車などは1000円から2000円に値上げとなるが、バスなどの大型車は3000円から1万円に、3倍以上の値上げとなる。
この値上げに対し、ツアーバスの運転手は次のように話す。
バス運転手:
大幅値上げはどうなんでしょうかね。1000円2000円の話だったら納得はしますけど、それ以上の値上げは「それいいのかよ」という気がします。
導入済みの駐車料金の値上げにプラスして、さらに予約制も検討されている混雑緩和対策に、住民のみなさんたちからは、様々な意見が出ている。
住民:
観光公害も正直あるので、これ以上増えると困るという部分はある。それも一つの方法なので。
住民:
路上駐車などが出てくるようなら、今後考えないといけない。
2026年度から一般車にも駐車場の予約制導入か
青井実キャスター:
柳澤さん、これは悩ましいですね。

SPキャスター柳澤秀夫さん:
地元の人たちが困ってしまうのでは、観光も何もあったものじゃないと思います。いずれ観光だって破綻してしまいますからね。新しい対策の導入っていうのは、必ず必要になってくると思います。
青井キャスター:
ですから、今日本の各地でいろいろ考えていかなきゃいけないわけです。
SPキャスター柳澤秀夫さん:
あちこちで起きてますからね。
青井キャスター:
実は、白川郷と同じように渋滞に悩まされている静岡市の日本平動物園では、2025年のゴールデンウィーク期間中、試験的に駐車場の「完全予約制」を行いました。その効果を広報の太田さんに聞きました。
日本平動物園広報担当・太田千晴さん:
来園されたお客さまからは非常に好評で、周辺道路の渋滞は全くないような状況になりました。非常に効果はあったと思います。
青井キャスター:
渋滞対策はうまくいったようですが、一方で課題も。

日本平動物園広報担当・太田千晴さん:
どうしても来園者数は減少。昨年に比べて39%くらいの減少がありました。2026年度以降その対策も含めて、どう行っていくか検討したいと思っています。

白川郷での駐車場の予約制導入は、早ければ2026年度から最終的に一般車にも広げていきたいということです。航空・旅行アナリストの鳥海さん、この対策は期待できるのでしょうか?
航空・旅行アナリスト 鳥海高太郎氏:
大きな意味があると思います。長い行列があると、その先のスケジュールが読みにくい。事前予約をすることで、スケジュール通りにある程度動ける。予約のない車は行列にも並ぶことができないという措置を取ることで、渋滞の緩和にも繋がる。そういったメリットがあると思います。
意味があるという先進的な取り組み、オーバーツーリズム対策に効果があるのか注目だ。
(「イット!」5月9日放送より)