大阪・関西万博のシンボル「大屋根リング」を閉幕後、どう活用するのか、議論されています。

1970年の大阪万博で展示されたモノはどうなったのか、“その後”を追跡取材しました。

今回の万博のシンボルといえば全長2025メートルの長さを誇る大屋根リング。

その大屋根リングを「万博のレガシー」として未来にどう残すかが、いま議論されています。

■1970年に開催された大阪万博では「太陽の塔」がレガシーに

1970年に開催された大阪万博。代表的なレガシーとして残っているのは開催地でいまもそびえたつ「太陽の塔」です。

その近くで行われているイベントでは、1970年の万博を彩ったスタッフのユニフォームや、イタリア館で飾られていたフレスコ画の複製品などが展示され、当時のパビリオンの様子を知ることができます。

【千葉からの来館者】「ソ連館とか今ないじゃないですか。逆に新鮮な気持ちで見られる」

【10歳で大阪万博を見た人】「(記憶に)残ってるけど、やっぱり断片的でしかないので、ここを見て思い出しました」

■カンボジア館「一番安かったから落札できた」今は集会所に

これらの展示以外に各地に散ったパビリオンは今、どうなっているのでしょうか?

取材班がまず見つけたのはカンボジア館。神戸市内に移設されたという情報をもとに向かってみると…。

【記者リポート】「黄色い屋根が見えますね。住宅街にこれだけひとつ異彩を放ってます」

住宅街に現れたのは高さ12メートルを超える黄色いトンガリ屋根。当時のカンボジア館と建物の形はほとんど変わっていません。今は、神戸市広陵町の集会所となっています。

【広陵町自治会 田中收会長】「万博が終わった時に、パビリオンは全部落札されているんですね。カンボジア館が一番安かったから落札できたと」

■改修費約2700万円を住民らで負担し守り抜く

敷地内には万博で展示されていた物も数多く残っていて、建物は地域の人たちが毎日、様々な活動で利用しています。

【広陵町住民】「ここはパビリオンと言われていますね。集会所だけどパビリオンと呼ばれている」

かつて老朽化で建て替えの話も出ましたが、改修費およそ2700万円を住民らで負担し、守り抜いてきました。

【広陵町自治会 田中收会長】「(町の)みんなが自由に使って、みんなが誇りに思う。こういう使い方がレガシーとして残っていくんかな」

■ウルグアイ館がラーメン店になっているという情報が

万博レガシーは他にもあるのか。調べてみると、ウルグアイ館が兵庫県の丹波市でラーメン店になっているという情報がありました。

(Q:昔のウルグアイ館を使ったラーメン店がある?)
【街の人】「ちょっとこの北側になるんですけど全部壊されて、どこにいったか分かりません」

かつてラーメン店があった場所を案内してもううと、今は普通のガソリンスタンドに。住民らに聞き込みを続けると、ラーメン店のオーナーだった男性の家族を見つけました。

当時、妊娠中で万博には行けなかった宮垣敦子さんのために、夫の健さんがウルグアイ館など3つのパビリオンを買ってラーメン店などに改装したそうです。

【宮垣敦子さん(82)】「(夫が)小耳に挟んで帰ってきたんです。万博売りに出よるでって言って。この田舎でだとちょっと走り過ぎた感じで…夢もありながら、資金的には苦しかったですけどね」

■ウルグアイ館はラーメン屋から万博マニアのもとに

その建物はいまどこに?

【宮垣敦子さん】「解体して、やいやい言いはったのが池田の方。分けてほしいって。『僕の青春なんですよ』って」

早速、取材班はウルグアイ館を譲り受けた男性が住む大阪府池田市へ。

【記者リポート】「ウルグアイと書かれている家がありますね!ここですね」

ウルグアイ館の現在の持ち主、白井達郎さん。

16歳の時に訪れた1970年の万博に魅力されて以来、万博マニアに。

【白井達郎さん(70)】「捨てちゃうと言うから、もったいないと思って。ラーメン屋時代に赤く塗っちゃったんです。ラーメン屋っぽく。それを塗り直して、元に戻したんです」

■50メートルの巨大な「モミの木」は…

他にも「万博レガシー」について聞いてみると…

【白井達郎さん】「カナダのブリティッシュコロンビア州があるんですけど、そこがモミの木で、鶴見のお寺に使われていると聞きました」

こちらが当時、カナダのブリティッシュ・コロンビア州パビリオンで話題となった50メートルの巨大な「モミの木」。

■50メートルの巨大な「モミの木」がお寺に

「モミの木」がある念法眞教総本山金剛寺で、見せてもらいました。

【桶屋良法さん】「ここが全部『樅の木廊下』と申しまして…」

「モミの木」が使われていたのは20メートルを超える廊下の床。

人々の悩みや苦しみなどが”もみとれるように”、その願いのもと万博閉幕後に売りに出されたモミの木を買い取ったということです。

(Q:55年たってもきれいですね)
【桶屋良法さん】「みんなが磨きますここへ来たら嬉しいから」

■「モミの木」は喫茶店にも

そんな「モミの木」が残されている場所は、喫茶店にも。

その名も「もみの木」。6年前に閉店していましたが、店主の息子さんと連絡が取れ、かけつけてくれました。

(Q:モミの木はどれですか?)
【川畑慶和さん】「これです。万博のモミの木のカウンター。そしてブレンドコーヒー、通な方がいろいろここで会話があったわけですけども」

「モミの木」は喫茶店のカウンターに使われていました。

55年前、洋服店を営んでいた父の川畑年見さん。

万博の工事関係者から服の採寸の依頼があり会場に向かったところ、巨大な「モミの木」を見て一目惚れしたのだそうです。

その後、つてを頼ってなんとかモミの木を手に入れ喫茶店を開きました。

【川畑慶和さん】「きょうだい3人育ててもらったっていうことで、やっぱありがたい木ですね」

父が亡くなるまでの47年間、愛されてきた「もみの木」。

しかし今、慶和さんにはある悩みが…

【川畑慶和さん】「並大抵な気持ちじゃ残せない。残らないと思います。後に引き継いでいくというふうなこと、私からしたら十字架を背負わされたようなそんな気がしますよ。でもそれだけ残す価値はあるとは私は思っています」

55年の時を経ていまも愛される万博レガシー。大阪・関西万博は未来にどのような形で残り続けるのでしょうか。

■大阪・関西万博でもリユースマッチング

開催中の大阪・関西万博でも、すでにリユースされる予定が決まっています。

ルクセンブルク館は、大阪・交野市の市内に建築予定の子供・子育て関連施設で一部建材を使用予定です。

また、大阪ヘルスケアパビリオンは、建物の一部をそのまま残すか敷地内で移築し、民間事業者所有で運営を検討しているということです。

万博サーキュラーマーケット「ミャク市」では、パビリオンやトイレの移築先を募集しています。

建材・設備のリユースマッチングもしていて、ミャクミャクマンホールは1枚8万5423円~、ベンチ5台で12万7552円~、入札を受け付けています。

【関西テレビ 神崎博報道デスク】「大屋根リングも丸ごと出品されています。そのまま残したいという財力と土地をお持ちの方は、ぜひ『ミャク市』で入札してほしいと思います」

(関西テレビ「newsランナー」 2025年5月7日放送)

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