14年前、交通事故で長男を亡くした母親が交通安全啓発のためのマスコットを作り、地元の交通安全団体などに寄贈を続けている。「無事帰る」という意味を込めたカエルのマスコットには、自分のように悲しい思いをする人がいなくなるように、との願いが込められている。

14年前、交通事故で長男を亡くす
福井県大野市の坪尾豊美さん(59)は2011年4月、長男を交通事故で亡くした。坪尾さんの長男は進学先の大学がある愛知県内で、友人が運転する車の後部座席で事故にあい、車外に放り出されて亡くなった。シートベルトは着けていなかった。

事故から10年が経った2022年、心に一区切りをつけた坪尾さんは交通安全を啓発するマスコット作りを始めた。外出先から無事に「帰る」ことを願い一つ一つ毛糸で編み込んだ「カエル」のマスコットだ。以来、毎年、市内で交通安全活動に取り組む協議会に寄贈を続けている。2025年も大野警察署で寄贈式が行われ、100個のマスコットを手渡した。

全席でシートベルト着用が義務
2008年の道路交通法改正により、全席でのシートベルトの着用が義務化されている。警察庁とJAF(日本自動車連盟)によると、後部座席のシートベルトの着用率は福井県は47.4%で、全国平均の45.5%を若干上回っているが、半数にも達していない。
「事故って本当に突然」と坪尾さん。「元気で行ったはずなのにそこにもういないというのは悲しみでしかない」。カエルのマスコットには『シートベルト全席着用』のメッセージ添えられている。「“車に乗ったらシートベルト”と思ってもらい、悲しい交通事故を防いでほしい」という坪尾さんの強い願いが込めらている。

坪尾さんの交通安全への願いが込められたカエルのマスコットは、大型連休中の啓発活動でドライバーらに配られることになっている。