山形市出身のレーサー・小林利徠斗さん(19)が、4月19日に栃木・もてぎで行われた国内最高峰レース「スーパーフォーミュラ」に初参戦した。デビュー戦とは思えない堂々の走りを見せ会場をわかせた。

F1を夢見た少年が国内最高峰レースデビュー
今から8年前、宮城で行われたレーシングカートの大会。
トップが何度も入れ替わる激しいバトルを繰り広げているのは、この年「全日本ジュニアカート選手権」でシリーズチャンピオンを獲得した山形市の当時小学6年生・小林利徠斗さん。

当時12歳の小林利徠斗さん:
将来はF1レーサーになって世界チャンピオンを目指します。

世界で活躍する夢を語っていた小林さん。あれから8年が経ち…。
4月19日、栃木で開催された「全日本スーパーフォーミュラ選手権」、F1に次ぐカテゴリーとして世界でも注目される国内最高峰レース。
その舞台に、19歳になった小林さんの姿があった。

今回、けがをしたドライバーの代役として抜擢され、目標としてきた国内トップカテゴリーにデビューするチャンスをつかんだ。

レース前、ITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPUL・小林利徠斗さんは、「非常に速い車ですし、その分扱いも難しいですけど、扱えるほどに楽しい車。上手に扱ってレベルの高いドライバーとも張り合えるような実力を身につけたい」と話してくれた。
驚がくの成長スピードでステップアップ
小林さんは現在、1つ下のカテゴリー「スーパーフォーミュラ・ライツ」に参戦しているトヨタの育成ドライバー。

2023年に、フォーミュラレースの登竜門「FIA-F4選手権」でシリーズチャンピオンを獲得し、2024年には「全日本スーパーフォーミュラ・ライツ」初挑戦ながら、いきなりシリーズランキング2位を獲得する目覚ましい活躍を見せ、周囲を驚かせた。

小林さんがF4時代に学びを受けたトヨタのレーシングスクール校長で、日本人として初めてル・マン24時間レースの優勝経験を持つTGR-DCRS校長・関谷正徳さん(2023年取材当時)も小林さんの成長に期待を寄せ、「もっともっと自分を成長させる努力をしていくということは必要。そういうことを怠けなければ、将来世界を目指せる可能性を持ったレーサーだと思う」と語っていた。

最高速度300キロ超え0.869秒差で15位
小林さんが初めて挑戦するスーパーフォーミュラは、スピードはもちろんエンジンのパワー・ブレーキなど、すべてがこれまでとは比べ物にならないほどハイレベルなマシン。

決勝グリッドを決める予選で小林さんが出したタイムは、トップと0.869秒差の15位。
1周4.8キロのコースでたった0.8秒の差だが、最高時速が300キロを超える世界では順位に大きな差が出る。

ITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPUL・小林利徠斗さん:
タイヤをじっくり温めて最後の1周しかアタックできないので、その1周の中でしっかり攻めつつも破綻させないバランスがすごく重要。そこを完ぺきとはいかないが、ある程度しっかり1周まとめることができた。

星野総監督・トヨタ会長も磨きたい逸材と絶賛
初めての予選の結果に、チームの総監督・星野一義氏は「初めてで、乗ったこともなかったのにすごい。トヨタの会長とも『磨きたい』と話をした。出来すぎ!」と高評価だった。

決勝は、スタート直後のコーナーで2台が接触しコースアウトする波乱の幕開け。
小林さんもスタートで出遅れ、順位を最後尾まで落としてしまう。しかし、ここから怒とうの追い上げを見せる。

実況:
さぁ! 小林利徠斗がチームメイトをパスしていった。さぁまた行くぞ、また行くぞ、完全に後ろをとらえた、左側に振る、ここでインをしっかり捕らえました、小林利徠斗!

抜きどころが難しいテクニカルなコースにも関わらず、切れ味鋭いオーバーテイク(追い抜き)を繰り返し、会場をわかせた小林さん。
ルーキーとは思えない大胆不適な走りで、トップカテゴリーでも十分戦える速さを見せつけた。

鋭いオーバーテイク・熱い走りがファンを魅了
小林さんのスーパーフォーミュラ初挑戦は、22台中16位でフィニッシュ。
ポイント争いに食い込むことは出来なかったが、その熱い走りは“この日最も魅力的な活躍をした選手”を選ぶファン投票で、3位に選ばれるほどだった。

ITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPUL・小林利徠斗さん:
完走出来たのはよかったが、内容的には反省すべき点が多い。トップ争いに加わればまた違う世界も見えてくる。こういうレースで走れているのはうれしいし、非常に貴重な経験。今後、もしチャンスがあった時にいつでもいい走りができるように、今回の経験を糧にして準備していきたい。

小林さんは、20日に行われた第4戦にもスポット参戦。
20日の決勝は16位でスタートして順調な走りを重ねていたが、レースを3分の1残した時点で、マシントラブルでリタイアした。
悔しい結果となったが、今回はスポットでの参戦。総監督から「出来すぎだ」と評価された大胆な走りはこれからの伸びが楽しみ。正式に「フル参戦」して活躍することを期待したい。

フォーミュラレース挑戦4年目でつかんだ国内最高峰の舞台。
経験を速さに変えて小林さんの挑戦は続く。
(さくらんぼテレビ)