大阪府岸和田市で2023年、飲酒運転で親子2人をはね、82歳の母親を死亡させ、息子に重傷を負わせた「危険運転致死傷」の罪に問われている男の控訴審で、 大阪高裁は男の控訴を退け、1審の懲役12年を維持する判決を言い渡した。

1審の判決で男は裁判所から、「前日夜から複数の飲食店で多量の飲酒をした後、運転し、道中で車を停めて居眠りするなど正常な運転が困難だと認識できたのに、運転を再開し起こした事故で、取り返しのつかない重大なもの」と指摘されていた。

■全盲の息子に付き添っていた母親が死亡 息子「母親を亡くしたのは僕の責任や」
岩井拓弥被告(31)は2023年12月30日午前7時ごろ、 酒に酔って前方注視や車の運転操作が困難な状態で運転し、岸和田市の路上を歩いていた 大久保春江さん(当時82歳)をはねて死亡させたほか、一緒に歩いていた息子の孝之さんに重傷を負わせた罪に問われている。

孝之さんは全盲のマラソンランナーで、事件の朝は母親の春江さんが付き添って練習に行く途中だった。
20歳のころに網膜色素変性症と診断され、35歳のころに完全に視力を失った孝之さんにとって、母・春江さんが目となってくれていた。

大久保孝之さん:
職場まで行くとか慣れたことは自分でやってて、初めて行くときは困難だろうと、よく(母が)気を遣ってくれてました。
僕は涙を流して兄と姉に謝罪をしまして、『母親を亡くしたのは僕の責任や』と。僕が行こうって誘ったからぼくは母親にこんな目に遭わしてしまった。
母親は僕のために尽くしてくれる人だったので。こんだけ涙もろい人間じゃなかったんですけど、なぜか涙が止まらないんです。

■1審で求刑通りの「懲役12年」 被告が「刑が重すぎる」と控訴
1審の大阪地裁堺支部は、「岩井被告が事件の前日夜から複数の飲食店で多量の飲酒をした後、自動車を運転して帰路につき、その道中、対向車線へのはみ出しなどを繰り返した末に路肩で停車し、居眠りをするなど、正常な運転がおよそ困難な状態に陥ったことを明確に認識できたのに、運転を再開し起こした事故で、取り返しのつかない重大なものである」と指摘。
さらに岩井被告が過去にも酒気帯び運転で有罪判決を受けていたのに、飲酒運転を複数回行い、今回の事故を起こしていることから「飲酒運転の危険性を軽視する態度は明らかであり、厳しい非難を免れない」と述べ、検察の求刑通り懲役12年を言い渡していた。
この判決について岩井被告は、「刑が重すぎる」として、控訴していた。

■被害者の男性「刑が重いという前に自分の罪を受け入れて欲しい」
「懲役12年」が維持された判決。涙を流しながら傍聴していた被害者の大久保孝之さんは、岩井被告に対し「判決を受け入れてほしい」と訴えた。
事件で母・春江さんを亡くした大久保孝之さん:
1審の懲役12年を支持してくれたことに感謝しています。事故を思い出して、自分が立ち直らなければいけないと思ってきたが、大切な母親を亡くしたので涙しました。
帰宅したら懲役12年だったと報告したいです。
(Q.一審判決から控訴審判決までの気持ちはどのようなものでしたか?)
事件で母・春江さんを亡くした大久保孝之さん:
被告には刑を軽くしてもらおうという気持ちがあったと思うが、判決は正当だったと思う。1審を支持してくれるものだと思っていた。
刑が重すぎるとして控訴したが、刑が重いという前に自分の罪を受け入れて欲しい。

(関西テレビ 2025年4月18日)