アメリカ企業が8日、ゲノム編集で1万年以上前に絶滅したオオカミの復元に成功したと報告した。街では科学の進歩による夢を語る声もある一方、倫理の是非を巡り「神の領域に踏み込む」と心配する意見も上がった。
絶滅オオカミ復元にイーロン・マスクも反応
8日、世界を驚かせたオオカミの赤ちゃんを巡る衝撃のニュースに、さっそく賛否が巻き起こっている。

9日のテーマは「ゲノム編集で絶滅オオカミを復元?ソレってどうなの?」だ。
先日、アメリカの企業「コロッサル・バイオサイエンス」が、約1万3000年前に絶滅したダイアウルフを復元することに成功したと発表した。
SFのような話だが、街の人の声を聞いた。
40代:
すごいですね。今は化石になってる恐竜とか、生き返らせることができるかもしれない。「ジュラシックパーク」みたいだなと思います。
40代:
えー!すごーい!
50代:
こういうの(生物)がいたんだなと、見られるのはロマンなのかな。
取材班:
どんな生き物が見たいですか?
50代:
生き物?カッパ?絶滅していて見たいのは、空を飛ぶ恐竜。
使われた技術は、ゲノム編集だ。生物が持つゲノム、つまりDNAの特定の配列を組み替えるもので、具体的には次のように行ったようだ。

コロッサル社によると、まずダイアウルフの歯や頭蓋骨の化石からDNAのサンプルを取り出し、遺伝子情報を解析した。現在生息していて遺伝子的に最も近いハイイロオオカミの細胞に、ダイアウルフの遺伝子の特徴をゲノム編集で組み込んだ。その結果、ダイアウルフの特徴を持つ赤ちゃんが誕生したという。
誕生したオオカミは、生後3カ月から6カ月の3匹で、アメリカ国内の保護区で育てられている。コロッサル社は「科学、自然保護、そして人類にとって大きな節目」と意義を強調した。イーロン・マスク氏もXで「ケナガマンモスのミニチュアペットを作って」と反応している。

実はコロッサル社は、約4000年前に絶滅したマンモスのように「毛むくじゃら」なマウスを誕生させたこともすでに発表している。ゲノム編集によって、ウェーブした金色の毛や寒冷地を生き抜くための脂肪代謝を再現したという。
専門家は生命倫理や動物福祉にも懸念示す
イット!のスタジオでは…
青井実キャスター:
こういった技術はすごいですけれど、いかがですか?
SPキャスターパックン:
すごいですね。僕もマンモスとかオオカミとかサーベルタイガーとか見てみたいですが、技術の進歩が速いとはいえ、倫理とか道徳、哲学の進歩は遅いんです。出来るようになったのは良いんですが、やるかどうか、やるべきかどうかはじっくり議論したいです。
街で絶滅動物の復元について聞いてみると…

60代:
「夢がある」と言えばあるが、自然の摂理でなくなった物はそのままにした方がいいと思います。
40代:
世の中は自然のもの(摂理)で巡り巡っている。絶滅したものは見てみたいが必要ではない。世の中がおかしくなると思う。(気候など合わず)蘇ったところで長生きできないし可哀想。
さらにSNSでも「すごいんだろうが倫理的にどうなの?」「未来の生態系に影響を与えるんじゃない?」「人間が神の領域に踏み込んでいいんだろうか」との声が上がった。
青井キャスター:
ゲノム編集や遺伝子研究に詳しい近畿大学の加藤教授に、今回の発表について伺いました。
近畿大学先端技術総合研究所・加藤博己教授:
あくまでも外見的にダイアウルフに近くなるように、ハイイロオオカミの遺伝子を換えたゲノム編集で、ゲノムを換えた事が今回の報告だと思う。これを「ダイアウルフの復活」とは言いすぎだと思います。

青井キャスター:
ほかにも問題点があるそうです。
近畿大学先端技術総合研究所・加藤博己教授:
例えば自然の中に放すことが出来るかというと、出来ないと思う。自然の中で「遺伝子の汚染」という言い方になるので出来ない。一生涯、人間の管理下で過ごすことになる。生命倫理や動物福祉など、そういった事をいろいろ考慮に入れないといけない。

すでに食品や医療など幅広い分野でも活用されているゲノム編集だが、技術の発展で人類は新しい悩みまで手にしてしまったのかもしれない。
(「イット!」4月9日放送より)