高知県立美術館が所蔵する油彩画「少女と白鳥」が贋作であると判断された。約30年前に1800万円で購入したこの作品は、ドイツの画家ハインリヒ・カンペンドンクの作とされていたが、実際には贋作画家として知られるヴォルフガング・ベルトラッキ氏によるものである可能性が高いという。
調査最終報告で「贋作と判断しました」県が正式発表
高知県は3月14日、県議会危機管理文化厚生委員会において、県立美術館所蔵の絵画について「贋作と判断した」と発表した。

高知県文化国際課の澤村則和課長は「調査の最終報告を受けまして、県及び美術館としては当該作品は贋作であると判断しました。またこの作者は、ヴォルフガング・ベルトラッキの可能性が高いと考えています」と報告した。
科学調査が暴いた贋作の証拠「銅とチタン」の存在
この贋作疑惑は2024年6月に浮上した。美術館は京都大学の専門家に依頼し、同年10月から科学的な調査を進めてきた。

調査の結果、作品に使用された絵の具に、制作時期とされる1910年代には一般的ではない成分「銅」や「チタン」が含まれていることが判明した。これらの成分は、ベルトラッキ氏が贋作制作で頻繁に使用していたものだという。

さらに、作品の裏側に貼られている「来歴」と呼ばれるラベルが、ベルトラッキ氏による偽造であることも明らかになった。

安田篤生館長は調査の途中経過について「残念ながら可能性としては贋作であることが高いと今の時点では言える」と述べていた。
本物を誰も知らない…専門家も見抜けぬ作品に「得難い体験だった」
この絵画は1995年、名古屋の画商が世界で最も歴史が長いオークション「クリスティーズ」で落札し、翌年に高知県立美術館が購入した。しかし、カンペンドンクの「少女と白鳥」については、制作したという文献はあるものの写真は残っておらず、本物を”誰も知らない”作品だった。

高知県立美術館の奥野克仁学芸員は、この事態について「ご心配をおかけした皆さんには本当に申し訳ない」としながらも、「専門家が何人かかってもその作品を偽物だと看破することができなくて、結局、科学的な調査にしか頼ることが出来なかったというぐらい力を持った作品に相対することになって、ある意味では得難い体験だった」と語った。

今後、県は購入先の画廊に対し返金の請求を念頭に交渉する方針を示している。また、経緯を含めて2025年夏頃に作品を一般公開する予定だ。
(高知さんさんテレビ)