食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。
特別編の今回は、ドラマや映画が大人気『孤独のグルメ」』の原作者・久住昌之さんをスペシャルゲストに迎え、普段飲み歩く吉祥寺界隈でハシゴ酒をする。
『孤独のグルメ』誕生秘話や一人飲みの極意、人生と食など、とことん語り合う。さらに簡単にできてお酒もすすむ、久住さん自慢のおつまみレシピを伝授してもらう。
家庭的な小料理屋「牛若丸」
まず2人がやってきたのは、吉祥寺と三鷹の間にある井の頭通り沿いにある、久住さんオススメの小料理店「牛若丸」。

母・朝賀眞理子さんと息子の喜史さん、親子2人で営み、今年で開店から25年目を迎える、地元に愛される店だ。

衣はサクサク、とろっとチーズがとけ出す磯辺揚げや、甘辛い自家製ダレで煮込んだネギたっぷりのチャーシュー。たけのこや玉ねぎのシャキっとした食感がたまらない熱々のしゅうまい。その家庭的な雰囲気と料理目当てに、連日多くの人たちが訪れる。

植野さんが「子供の頃は食べられなかったものが、お酒を飲むようになって食べられるようになったものがある」と話すと、久住さんもうなずき、「光りもの、ゴボウは子供の時意味がわからなかった。飲むようになって嫌いだったものが好きになるのはうれしい。世界が広がる感じがする」と食の話で盛り上がる。
また、久住さんは手書きのメニューだけでお酒がすすむこと、「よっチャーハン」などメニューを妄想して楽しむこともしているとのこと。さらに地方に行く機会が多いという久住さんは、その土地ならではの野菜があまり注目を集めていないことから「その土地の野菜を食べる」など、“ひとり飲み”の極意を教えてくれた。
雑居ビルの3階にある居酒屋「大茂」
2軒目で向かったのは、吉祥寺駅のすぐ近く、吉祥寺駅から徒歩1分、雑居ビルの3階にある居酒屋「大茂」。久住さんが30年以上通うこの店の店主は大嶋良尚さんと、妻の繭香さん。夫婦二人三脚で営み、吉祥寺で開店して50年だという。

使い勝手の良さや、気の利いたおつまみが豊富にそろうことから、仕事帰りのサラリーマンにも人気の店だ。

備長炭で丁寧に焼く串焼き、青じそを鶏肉で包んだつくね、肉厚でプリプリのイカの一夜干し。新鮮なワタリガニから出る旨みと、豆板醤とオイスターソースで甘辛く味付けした春雨炒め。どれも“飲んべえ”の心をくすぐるものばかり。