「ちゃんと割りましょう。とりあえず僕、払っておきます」

クレジットカード会社のCMが世間をざわつかせている。

クレジットカードとポイントは切っても切れない関係
クレジットカードとポイントは切っても切れない関係
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■「ポイント」が大きなメリットになることも

数人で食事とお酒を楽しみ、「割り勘」で支払いのはずが、まとめてカード払いした彼が、こっそりポイントを貯めていたという内容。

「この会計で彼がシャレにならないくらいポイントを貯めたことを、他の人たちは知らない」

カード払いした48000円に対して、得たのはなんと5280ポイント。街中での買い物などにも現金感覚で使えるから、5000円超は大きい。

■友人に“ポイント分”還元してなんかモヤモヤ…

ふと思い出した。友人2人と旅行に行った際、私が全員分のホテルを予約。

旅行サイトを利用したので、旅行後に3人分6000ポイントが還元された。

友人たちに連絡すると、1人は「予約してもらったお礼にあなたが使って」。

もう1人は「じゃあ何か送って。果物がいいかな」とのことで、送料込み2000円の果物を探して送ったが、少し持ち出しになった。

ポイントは各自の支払いに対するものだから、品物を送ることはいい。当然の権利だ。

ただ、商品さがしから手続きまで私がやることになったのは、なんかモヤモヤした。

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■いわゆる「幹事特権」法的問題は?

飲食店の話に戻ろう。

確かに昔から「幹事特権」的なものはある。

しかしCMのように、親しい数人の飲食で、割り勘と思わせて、こっそり1人だけ得をしていたと知ったら…かなりモヤる。

そもそも、他人のポイントをこっそりもらうのって、法的な問題はないのか?

「返して」と言われたら、返金義務はあるのか?

日本とアメリカ・ミシガン州の弁護士資格を持つ国際弁護士・牧野和夫氏に話を聞いた。

牧野和夫弁護士
牧野和夫弁護士

■ポイント独り占めは『不当利得』の可能性

牧野和夫弁護士:

例えば、数人で飲みに行き、全員分の会計をまとめてカード払いした人が、支払った全額に対するポイントを独り占めすることは、法的にいうと『不当利得(民法703条)』にあたる可能性があります。

『不当利得』は、「損をした人がいる」というのが要件になります。

ですから、参加者の中に「自分もカードで払って(自分の分の)ポイントを貯めたかった」という人がいた場合は、その人に損失を及ぼしたことになり、『不当利得』になる可能性があるのです。

そして、『不当利得』の返還請求をされたら、参加者それぞれに、ポイントを返還する義務を負うことになります。

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牧野和夫弁護士:

ただし、実際に法的手段をもってポイントの返還請求を行うのは、費用や時間を考えると現実的ではありません。

しかし、法律で定められていることであり、また、今は多くの人が、カード払いにポイントがつくことを認識しています。

トラブルを避けるためにも、まとめてカード払いをするならば、例えばポイント分ぐらいを多めに払うなど、何らかの形で精算しておいた方がよいでしょう。

■大規模宴会の幹事は『不当利得』にあたらない

牧野和夫弁護士:

尚、大規模な宴会の場合は少し異なり、『不当利得』の成立は難しくなります。

幹事は、日程調整や参加者の確認、店の予約、会費の回収など、多岐にわたる準備で大変です。

参加者は、幹事の働きに対して感謝し、采配を任せていますから、どのような支払い方法であっても認めているといえます。

これを「黙示の承諾」といい、明確な意思表示がない場合でも、相手の行動や態度、事情などを判断して一定の合意があったとみなされるのです。

よって、『不当利得』は難しくなります。

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■出張のホテル予約で高額ポイント 個人で使っていい?

Q:旅行サイトを利用してホテルを予約すると、宿泊費の10%以上がポイント還元される
といったケースも珍しくない。仕事で出張のホテルを自分で予約し、自分のアカウントにポイントが還元された場合、プライベートで使用して問題はない?

牧野和夫弁護士:

会社の就業規則や内規(内部規則)で決められていない限り、得たポイントを個人で使用して問題ありません。

法的に何か規制があるわけではないです。

また、経費(ホテル代)の精算は、内規の通りに、支払った金額で普通に行えば大丈夫です。

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■会社の経費で購入した航空券のマイル加算 業務上横領?

牧野和夫弁護士:

フライトによるマイルは、チケットの名義である搭乗者本人にしか加算されません。

会社がマイルアカウントを開設してマイルを貯めることは物理的にできないのです。

会社が航空券の手配をしたとしても、チケットの名義とマイルの加算は搭乗する人になりますから、会社にマイルが加算されることはありません。

そこで会社が損をしたかどうかが『不当利息』の要件ですが、マイルに関しては、そもそも「会社がマイルを貯めることができない」という前提があるので、横領などの罪にはなりませんし、会社に請求権もありません。

法的に「返して下さい」ということは難しいです。

ですから、出張のフライトで得たマイルを、個人的に利用することは、法律上は問題がないと言えます。

ただし、会社が就業規則や内規で定めているルールに違反した場合は、就業規則違反で罰則を課せられる可能性がありますから、事前に就業規則や内規を確認しておく必要があります。

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牧野和夫弁護士:

マイルについては、10年以上前に、アメリカで「出張時のマイルは会社のものだから、会社専用のアカウントを作ろう」といった議論が起きたことがあります。

しかし実際にそのようにしている会社の話は聞いたことがありません。

おそらくですが、会社も管理しようとすると、その分の経費や手間…人を雇ったりシステムを入れたりしなければいけませんから、なかなかそこまで出来ないのだと思います。

社員間の公平性のためにも、航空会社が対応するシステムを開発する必要があります。

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■「ポイ活」で“みんなハッピー”になれるかも

牧野和夫弁護士:

「ポイ活」は、利用者の側から見ると、無償で現金同様に使用できるプレゼントをもらえるというイメージがありますが、会社側からは、利用者の利用履歴を追跡して、今後の宣伝やマーケティングに活かそうとしていますので、決して「無償」ではないということです。

しかし、今後の宣伝やマーケティングに活かしてもらえれば、最終的には利用者にもメリットになりますので、悪徳業者に悪用さえされなければ、前向きに考えれば、みんながハッピーになる制度と言えるでしょう。

うまく活用したいものです。

(牧野和夫弁護士)

(関西テレビ 2025年3月29日)

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