隠し味は“すし酢”くら寿司「ピンクのスープ」開発の裏側 万博で世界の料理を「バズらせたい」 

1970年の大阪万博をきっかけに広まった回転ずし。

およそ半世紀の時を超えて、再び大舞台へ。

リトアニア「シャルティバルシチャイ」ピンクのスープ
リトアニア「シャルティバルシチャイ」ピンクのスープ
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■世界70カ国の味を再現 商品開発の壁

くら寿司 中村重男さん:ことしのバズ料理になってくれたらいいですね。これ(万博)をきっかけに。

長―い回転ベルトに乗せて、世界の料理を「バズ」らせる。

くら寿司の一大プロジェクトを任されたのが、商品開発部の中村重男さん(34)だ。

全国大会常連の強豪校で柔道に打ち込んだ青春時代。得意の背負い投げで何度も一本を奪ってきた。

料理の腕前も、もちろん黒帯だが…、今回課された課題は、世界70種類の味の再現すること。

くら寿司 中村重男さん
くら寿司 中村重男さん

各国の大使館をまわり、本場の味を作り上げていった中村さん。

しかし、大使からダメ出しを受けたことも。

くら寿司 中村重男さん:大使の方に食べていただいて、全然違うということもありましたし、『実際に料理を教えてもらいなさい』と(大使に言われ)、後日、大使館のキッチンでシェフにソースの作り方を教えてもらいました。

あきらめず研究を重ねることおよそ1年。ようやく70種類の世界の料理が再現できた。

しかしそんな時、なんとイランと南アフリカが万博からの撤退を発表。このままでは70種類に2品足りない。

一品は何とか決まったが、もう一品がなかなか決まらない。

大使に試食してもらって研究を重ねた
大使に試食してもらって研究を重ねた

■「日本人にリトアニアを知ってもらいたい」 森と水の国「リトアニア」の大使からラブコール

すると中村さんの元に、ある国から突然ラブコールが届く。

「リトアニアのメニューを開発してくれませんか?」

日本からおよそ8000キロ離れたリトアニア。ヨーロッパの北東部にある、北海道より小さな国だ。国土の4割が森林と4000の湖。森と水の国ともいわれている。

そんなリトアニアがなぜ?

直接、くら寿司に連絡したのは“大の回転ずし好き”のジーカス大使。家族と一緒によく訪れる。

大使はおよそ30年前、日本の大学に留学し、日本の文化に魅了された。

「大好きな日本の人たちに、リトアニアをもっと知ってほしい」と、自ら情報を発信しているが、あることに悩んでいた。

オーレリウス・ジーカス リトアニア大使:リトアニアでは日本のことは、みんな知っています。日本は非常に憧れている国なんですが、日本ではリトアニアの名前はまだまだ(知られていない)ですね。

そんな時、くら寿司が万博で世界の料理を提供するとニュースで知った大使。またとないチャンスだと思ったのだ。

オーレリウス・ジーカス リトアニア大使:10類ぐらいリトアニア料理を出したいんですがいかがでしょうか?(笑)

“大の回転ずし好き”のジーカス大使
“大の回転ずし好き”のジーカス大使

■ピンクの冷製スープ「シャルティバルシチャイ」を日本風にアレンジ “隠し味”は「すし酢」

大使の願いを受け取った、くら寿司の中村さん。

数あるリトアニア料理から選んだのは…?

くら寿司 中村重男さん:こちらがシャルティバルシチャイのメインであるビーツの水煮ですね。

鮮やかな赤の野菜ビーツを使った、ピンクの冷製スープ「シャルティバルシチャイ」。

くら寿司 中村重男さん:じっくり炒めて、玉ねぎの甘みを引き出しています。

さらにビーツとマッシュポテトを加えて軽く炒めた後、本来はケフィアというヨーグルトに似た発酵乳を入れるのだが…。

くら寿司 中村重男さん:(ケフィアは)癖があるので、食べやすいように、うま味と甘みと酸味のバランスのいい、当社のすし酢を隠し味に使っています。

日本人の舌になじむ味に仕上げなければはやらない。中村さんは、十八番のすし酢で勝負にでた。

くら寿司 中村重男さん:おいしいです。自信満々でいけますね。

数あるリトアニア料理から選んだのは…?
数あるリトアニア料理から選んだのは…?

■リトアニア大使に認めてもらえるか? 大使館で試食会

本場の味に慣れた大使に、日本風のシャルティバルシチャイは果たして受け入れられるのだろうか。

オーレリウス・ジーカス リトアニア大使:ようこそいらっしゃいました。こんにちは。
くら寿司 中村重男さん:シャルティバルシチャイの色の服。
オーレリウス・ジーカス リトアニア大使:合わせました。

中村さんが訪れたのは、東京にあるリトアニア大使館。

大使夫妻が見守る中、準備を進める。

くら寿司 中村重男さん:緊張します。ご評価いただくんで。自信はあるんですけど、いざとなると緊張します。

シャルティバルシチャイの色の服
シャルティバルシチャイの色の服

■大使から「一本!」「さっぱりして、なかなかおいしい」 “隠し味”にも感動

くら寿司 中村重男さん:レシピを一生懸命調べて、作って自信もありますので、召し上がっていただけると幸いです。

すし酢を使って再現したリトアニアの味。

大使の評価はいかに。

オーレリウス・ジーカス リトアニア大使:うーん、おいしいです。なかなかおいしいですよ。さっぱりして、ものすごい爽やかな感じなんですよね。

くら寿司 中村重男さん:すし酢には、程よい酸味と甘みと、あとうま味がありますので、それを少し隠し味に使って調整しております。

オーレリウス・ジーカス リトアニア大使:すばらしいですね。日本ではかなり食材が限られているんですよね。リトアニアの食材はないんですが、隠し味も入れてくださいました。うれしいですよね。

くら寿司 中村重男さん:どうでしょう、一本とれましたか、僕のシャルティバルシチャイの味は?
オーレリウス・ジーカス リトアニア大使:一本取られましたよ。完璧です。ありがとうございます。

日本風にアレンジが加えられたピンクのスープ。

万博をきっかけに「バズる」ことはできるのだろうか。

(関西テレビ「newsランナー」2025年3月26日放送)

ジーカス大使「一本取られましたよ」
ジーカス大使「一本取られましたよ」
関西テレビ
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