信者による教団への高額献金などが大きな社会問題になっていた旧統一教会について、東京地裁は解散を命ずる決定を出した。高額献金や霊感商法など民法上の不法行為を理由として裁判所が宗教法人の解散を命じたのは初めて。これまでの経緯を追ってみる。
旧統一教会の総裁と写真、崇めるようなメッセージ残した議員も
旧統一教会は1954年、韓国で故・文鮮明(ムン・ソンミョン)教祖が創設した新興宗教。
現在は、文(ムン)教祖の妻である韓鶴子(ハン・ハクチャ=82)氏が総裁を務めている。
韓鶴子総裁(23年3月):
天と人類の前に“勝利者”として誇らしく尊敬される皆さんになれるよう願います(拍手)
信者の中には日本人も多く含まれており、“合同結婚式”などを通じて1990年代には広くその存在が知られることとなった旧統一教会。

一方で、信者による教団への高額な献金…さらには、壺や印鑑などを高額な値段で購入させる“霊感商法”と受け取れる行為が明るみに出るなど、その存在は、一部で社会問題化していった。
そして、事態が大きく動いたのが2022年7月。

参院選の応援演説を行っていた安倍元首相が銃弾に倒れた事件。
銃撃した山上徹也被告(44)は、家族が旧統一教会の信者で、教団に恨みを持っていたと供述。

そして安倍元首相と教団との“関係性”を疑い、犯行に及んだとされている。
かつて、教団関連団体のイベントにビデオメッセージを寄せていた安倍氏。
他にも、教団や関連団体のイベントなどに複数の国会議員が出席していた。
細田元衆院議長(2019年):
安倍総理にも、私は始終話をしておりますので、きょうの盛会を安倍総理にさっそくご報告致したいと考えております。
中には、旧統一教会の韓総裁と写真に収まったり、韓総裁を崇めるようなメッセージを残した議員もいた。
土井亨元衆院議員:
真のお母様 私は国会議員の土井亨と申します。
山本朋広元衆院議員:
マザームーンに先ほど、カーネーションの花束をプレゼントさせて頂きました。
高額献金などが問題視される教団と日本政界との関係に…。

山本朋広元衆院議員(22年8月):
じむ、じむ、事務所のほうにご連絡頂ければ。

山際元経済再生相(22年10月):
非常に申し訳ないんですが、そのことそのものは覚えておらず…。
「根本的な対策が講じられたとは言えない」と指摘
旧統一教会を巡る問題が大きくなるなか、2022年10月、当時の岸田首相が宗教法人法に基づく調査を関係閣僚らに指示した。

そして2023年、文部科学省が東京地裁に、旧統一教会の解散命令を請求するに至った。
この“解散命令”請求に、日本の教団側は“高額献金などには悪質性がない”と激しく反発する。

“統一教会”教会改革推進本部・勅使河原秀行本部長(23年11月):
組織的に改革を行って、その結果献金トラブルもほとんどなくなるような状態になっているわけですから、悪質というのは到底言えない。
さらに、“解散命令”請求を前に、教団トップの韓総裁とみられる人物が、当時の岸田首相を呼び捨てに、憤りを露わにするひと幕もあった。
韓鶴子総裁とみられる音声(2023年6月):
今の日本の政治家達は我々に対してなんたる仕打ちなの、家庭連合を追い詰めてるじゃない。“岸田”を呼びつけて教育を受けさせなさい。
教団側が争う姿勢を示すなか、東京地裁は、2025年1月に実質的な審理を終了した。
そして25日午後、文部科学省側と旧統一教会側双方に裁判所に来るよう伝え、地裁は旧統一教会側に解散命令を出した。

なぜ解散命令が出されたのか…東京地裁の決定によると、2009年、教団側が信者らに法令遵守の徹底を求めた「コンプライアンス宣言」以降も、旧統一教会の組織体質や信者の行動のあり方を大きく変化させるような根本的な対策が講じられたとは言えない、と指摘。

その上で、税制上の優遇措置を受けている法人格を与えたままにしておくことは極めて不適切であり、このような事態への対処としては解散によってその法人格を失わせるほかに適当かつ有効な手段は想定しがたい、としている。

宗教法人に解散命令が出されるのはオウム真理教などに続き3例目となるが、高額献金や霊感商法など、民法上の不法行為を理由として裁判所が宗教法人の解散を命じたのはこれが初めて。
かつての家族が旧統一教会の信者だった男性は…
この決定を受け、林官房長官は25日午後4時過ぎに会見でこう言及した。

林官房長官:
令和5年に文部科学大臣が行った、解散命令請求について、国の主張が認められたものと考えておりますが、今般の東京地裁の決定にかかる対応については、文科省において引き続き必要に応じて適切に対応していく考えであります。
かつての家族が旧統一教会の信者だった橋田達夫さんは、声明を発表した。

元妻が信者で約1億円を献金・橋田達夫さん:
本日、東京地裁が統一教会に対して解散命令を出したことは、統一教会問題の解決に向けて極めて、かつ重大な影響を与えるものであり、心から歓迎します。解散命令が出たからといって、この問題が終わったわけではないです。
一方の旧統一教会側。
代理人を務める、福本弁護士は、東京地裁から出てくる際にこうコメントした。

“統一教会”代理人・福本修也弁護士:
こんな事は、法治主義の国家としてあり得るんですかね。こういうことは。法治国家としてあり得るんですね、こんな事は。
教団側は、即時抗告を検討していると言う。
(「イット!」3月25日放送より)