同性カップルの「結婚」は認められないのか。

民法の規定が違憲かどうか争われた裁判の控訴審で、大阪高等裁判所は「合憲」としていた1審大阪地裁の判決を見直し、「違憲」と判断した。

各地で起こされている同様の裁判では、4つの高裁が「違憲」とする判断を示していて、1審で合憲と判断された大阪で、どのような判断が下されるのか注目されていた。

大阪高裁に入る原告たち
大阪高裁に入る原告たち
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大阪高裁は判決で、「同性婚を許容していない現状が、個人の尊厳を著しく損なう不合理なもの」として、憲法24条2項=「婚姻の自由」に違反すると指摘。

また、「同性カップルは、異性カップルが受ける法的利益を享受できず、区別した取り扱いを受けるのは、法の下の平等に反する」として、憲法14条=「法の下の平等」にも違反すると判断した。

3月25日大阪高裁は「違憲」判断
3月25日大阪高裁は「違憲」判断

原告の1人は判決前の取材に、「(高裁判決は)99パーセント『違憲』と思ってるけど、1パーセントで『合憲だったらどうしよう』って怖いです。同性カップルに育てられる子供も増えました。ちゃんと認めてほしいです。国が動くような判決を言ってほしいです」と訴えていた。

高裁の「違憲」判断を受けた原告カップル
高裁の「違憲」判断を受けた原告カップル

■「同性婚」認められない法律は「憲法違反」として関西の当事者たちが提訴

京都市などに住む3組の同性カップルは、「同性同士の結婚が認められない法律は、憲法で定める『法の下の平等(14条)』や、『婚姻の自由(24条)』に違反している」として、国を訴えている。

原告たちは、裁判所に「憲法違反」と認めてもらうことで、法律が変わるきっかけにしたい考えだ。

【原告の1人 坂田麻智さん】「同性愛者ということで、少なからず負い目を持って日々過ごしてきているんです。同じ権利が与えられていない。私たちはここにいるし、同じ社会に住んでいるし、身近にいる存在なので、これ以上いないことにはしないでください。ちゃんと存在を認めたうえで、必要な制度や理解を社会全体で進めてほしい」

原告カップルのうちの1組・坂田麻智さん(46)とテレサさん(41)
原告カップルのうちの1組・坂田麻智さん(46)とテレサさん(41)

■当事者たちの思い 同じ「家族」なのに「異性夫婦の家庭」との違い 「同じように扱ってください。それだけ」と訴え

6年前の提訴から思いを訴え続けてきた、原告カップルのうちの1組・坂田麻智さん(46)とテレサさん(41)。

連れ添って17年、京都市の一軒家で暮らす2人はご近所でもカップルとして「公認」されている。

3年前、テレサさんが友人から精子の提供を受けて女の子を出産し、いまは2歳の娘と「親子3人家族」だ。

しかし、同性同士のカップルの間の子供ということで、法的には大きな違いがある。

法的に親として認められるのは出産したテレサさんだけで、麻智さんに親権はない。テレサさんと結婚ができず、法的には“赤の他人”だからだ。

坂田麻智さん:(出生届に)私には書くところがないと。母のところの欄にテレサだけ。(法務局に)『私は名前を書けないんですか』と聞くと、『男性ではないので書けない』と。

さらにテレサさんがアメリカ国籍であることから、娘は日本国籍がなく、出生届に漢字が登録できないという事態にも直面した。

坂田テレサさん:『漢字は登録できません、外国人なので』って言われて。漢字も最初の文字は、麻智のお母さんの名前から一文字を借りてつけた名前なので、名前の件は全然、何も知らなかったから、『それもか…』って…。

娘と3人暮らし
娘と3人暮らし

“親と認められない”麻智さんには育休も認められず、異性カップルでは当たり前のことでも、2人にはできないことがたくさんある。

坂田テレサさん:(こうしたことを)知っているのに、なんで子どもを産んだのか疑問を持つ人はいると思うんですけど…、本来は『2人親で子どもで3人家族』っていうシンプルなことなのに、なんでシンプルにできないんだろうなって不思議に思ってる。

また、家族のうち誰かに何かがあったとき、「家族」として病院で病状の説明などの対応をしてもらえるのか、不安を抱えている。

坂田テレサさん:パートナーに親権がないから何かがあったら、本当に娘は大丈夫なのか、ちゃんと法的に守られるのか不安がすごくあります。

坂田麻智さん:私は本当に特別なこと何も訴えてなくて、(男女の夫婦と)同じように扱ってください。もうそれだけなんですと思っている。

娘を育てる2人
娘を育てる2人

■国は「結婚は子供を産み育てる男女を保護するもの」と主張

裁判で、原告たちの訴えに国は、「結婚は子どもを産み育てる男女を保護するもので、同性婚は想定されていない」と主張し続けてきた。

そして3年前、大阪地方裁判所で迎えた、1審の判決。下された判断は「合憲」だった。

地裁は「異性カップルとの差は、婚姻類似の制度や他の手当てで緩和できる」などとして、憲法違反にはあたらないと判断した。

到底納得できない内容に、坂田さんたち原告は控訴。他の地域で開かれた同様の裁判の応援にも駆け付けてきた。

1審の大阪地裁「合憲」の判断
1審の大阪地裁「合憲」の判断

■同様の裁判は全国で すでに4つの高裁が「違憲」と判断

同様の訴訟は全国で行われていて、地裁では判断が分かれていたが、札幌、東京、福岡、名古屋の4つの高裁は、いずれも明確な「違憲」判決を出した。

さらに、地裁判決では「同性カップルを法的に保護する制度が何もないことが違憲(違憲状態も含む)」という判断だったのが、高裁判決では、「男女と同じ結婚制度でないと憲法違反は解消できない」などと踏み込んだ判断も続いている。

全国で「違憲」判断相次ぐ
全国で「違憲」判断相次ぐ

■大阪高裁の判断を前に当事者たちは

判決が言い渡される3月25日、裁判を前に坂田さんたちが取材に、高裁の判断への期待を語っていた。

坂田麻智さん:(高裁判決は)99パーセント『違憲』と思ってるけど、1パーセントで『合憲だったらどうしよう』って怖いです。また(1審のように)合憲が出たら立ち直れない。

坂田麻智さん:自分たちだけじゃなくて判決の影響は大きい。当事者もたくさんいるし、亡くなった人もいるし、これから生まれてくる当事者もいます。同性カップルに育てられる子供も増えました。ちゃんと認めてほしいです。国が動くような判決を言ってほしいです。

坂田テレサさん:大阪地裁の判決はショックが大きすぎて。その後(の判断)は、『違憲』ばかりだったから、今回は期待しています。どんな判決がでても国が動いてくれないと変わらないから、強く立法を動かす内容が入ってほしいです。子供のことも、不利益があるからちゃんと現実をみてほしいです。

判決を前に期待を語った2人
判決を前に期待を語った2人

(関西テレビ 2025年3月25日)

関西テレビ
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