最大震度6弱を観測した2005年3月の福岡県西方沖地震から20年を迎えた。福岡市の真下には、最も危険な「Sランク」に位置づけられている「警固(けご)断層」が走っている。私たちはこのリスクにどのように向き合えばいいのだろうか。

「地震の日のことは鮮明に覚えている」
地震発生を知らせるサイレンと共に高台に避難する住民たち。福岡県西方沖地震の発生から20年の節目となった21日、福岡市西区の玄界島ではマグニチュード7.2規模の地震を想定した訓練が行われた。

訓練に参加した島民の一人、松田政人さんは当時大学生。「20年間は本当に長い期間なんですけれども、あっという間だったように感じますし、地震の日のことは本当に今でも鮮明に覚えている」と振り返る。

2005年3月20日に発生した「福岡県西方沖地震」は最大震度6弱を観測し、133棟の住宅が全壊。死者1人、負傷者は1087人に上った。松田さんが暮らす玄界島をはじめ、福岡市を中心に大きな被害が出た。

警固断層南東部は最も危険な「Sランク」
この地震を引き起こしたのは玄界灘から筑紫野市まで伸びる「警固(けご)断層」のうちの北西部だ。一方、福岡市中心部の真下を通る南東部の断層では、長きに渡り、地震は起きていない。もしこの「南東部」が動いた場合、市内の多くで震度6強の揺れが発生し、実に1000人以上の死者が出ると想定されている。政府の特別機関は30年以内に地震が起きる確率について警固断層南東部を最も危険な「Sランク」と位置づけている。

クレーンゲームの景品も帰宅困難者に提供
そこで懸念されている問題の1つに帰宅困難者の発生がある。警固断層南東部を震源とする直下型地震が起きた場合、福岡市は中心部の天神地区だけで2万人を超える帰宅困難者が出ると想定している。

その打開策の1つとなりそうなのが4月24日に開業を控えた「ワン・フクオカ・ビルディング」(通称・ワンビル)だ。地下には食料や飲料水を保管する備蓄倉庫が設けられ、災害時には555人が3日間過ごせる態勢が取られている。

ワンビル同様、再開発プロジェクト「天神ビッグバン」で新たに建設された福岡大名ガーデンシティや天神ビジネスセンターなどのビルでも、市の働きかけで対策が進んでいる。

また、複合レジャー施設「ラウンドワン福岡天神店」でも帰宅困難者を最大で323人受け入れることにしている。カラオケやボウリング場のスペースに避難してもらい、フードやドリンクに加えクレーンゲーム機の景品なども災害時は無料で提供することにしている。「普段は皆さん楽しく遊ばれている場所だが、災害時にも安心して来られる場所にしたい。少しでも皆さんの心が休まれば」と小林雄大支配人。しかしそれでも天神地区で現在確保できている一時滞在施設の収容人数は16320人と市の目標の8割ほどにとどまり、さらなる拡充が急がれる。

20年前の教訓を娘に伝える
松田さんは被災当時、自宅が半壊し、家族と共に福岡市内の体育館で避難生活を強いられた。それから20年、復興した島で暮らす今も防災訓練に毎年参加し、娘の紗果ちゃんに当時の教訓を伝えている。「地震が起きたらどうする?」とたずねると紗果ちゃんは「まずは、揺れがくる前に逃げるとか」。

いつどこで起こるかわからない大地震。「私も経験した身として、今まで当たり前だった景色がほんの数十秒で一変してしまう。自分の命や家族の命をどう守るのかだったり、地域のためにどういったことができるのかというのを考えながら過ごすことが大事だと思っています」。
