ランドセルやマグカップといったかわいいグッズの数々。これらはすべて「ゴム」でできている。長崎の会社が手掛けるアイデアあふれる商品開発をきっかけに、地域を盛り上げる動きが始まっている。
ゴムの意外性が「仕事の楽しさ」につながる
商品を手掛けるのは、西彼杵郡長与町にあるゴム加工会社「津野田ゴム加工所」だ。

半導体の製造や新幹線の空調設備などに欠かせない工業用のゴム製品を中心に、樹脂や化学製品などから1日に約250種類の幅広い製品を作っている。

アイデアグッズの仕掛け人は津野田ゴム加工所の社長、津野田幹太さん(43)。津野田社長はある時、ロケットのカバーの内装をスポンジで作らせてもらった。意外性が面白いと感じ、これをきっかけにアイデアグッズ制作の虜となった。
社員にも仕事の楽しさを感じてもらいたいと持ちかけた。開発部門の宮昭太郎さんは「したいことをさせてもらえるので、そういう面ですごくいい環境だと思う」と話す。
自前で「型」を作り 次々にゴム製品を形に
津野田社長は、モノを作りたいという情熱をそがないように、否定的なことはとあまり言わないようにしている。

やりがいを持つことを大事にする社長の想いは採用にもつながり、いま一緒に働いている人たちは「モノづくりをしたい」とSNSをきっかけに集まった仲間たちだ。

工場では4年ほど前に3Dプリンターを導入し、金型の加工が自社でできるようになったため、様々な「型」を生かした製品が作れるようになった。しかし、形を整えたりするには高度な技術が求められるため、職人の存在は欠かせない。

職人の池上美絵さんは「ちょっとでも線が入ったりすると商品がダメになってしまうので、細かいところが大変です」と話す。
ゴム製品を働く場につなげる
アイデアグッズの製作は地元の活性化にもつながっている。

JR長与駅にあるカフェで販売されているオシャレなマグカップも、もちろんゴム製品だ。柔らかいけどしっかりした素材で、割れないのでお土産として購入する人も多い。

シリコーンゴム製のマグカップは、地元・長与で1667年から約200年続いた長与皿山の「長与三彩」という図柄をモチーフにしている。

「地元の文化を地元から発信したい」という津野田社長のこだわりが形となった。

カフェは町内の社会福祉法人「光彩会」が運営している。色付けの作業などはこの法人が運営する就労支援施設に依頼をしていて、障害者の収入にもつなげている。

現在手掛けているのはシリコーンゴムの「お香」だ。長与町特産品「ミカン」をモチーフにしている。
津野田社長は「誰でも何かのきっかけで仕事ができなくなることはあると思う。こういう事業者さんがあるおかげで皆さんのセーフティーネットになるような、そういった事業者を応援できるようなプロダクトを一緒に作っていきたい」と話す。
観光列車が停車する注目の駅でゴム製品を販売
長与駅には2024年3月から、長崎と佐賀をめぐる観光列車「ふたつ星4047」が停車するようになり、ホームでは地元の特産品が販売されている。

お香も1月に販売を始め、この日は台湾からの観光客が香りと思い出を持ち帰っていた。

津野田社長は「長与町には働く場所があまりない。企業自体がないので、そういう受け皿になれるような会社になっていきたい。関係人口をどんどん作っていくことで皆で盛り上げることができれば」と語る。変幻自在に製品を生み出す津野田さんの取り組みは、地域の人と共に長与の魅力アップに大きくつながっている。
(テレビ長崎)