南シナ海の上空で18日、フィリピン航空機と中国海軍ヘリが異常接近し、わずか3mの距離まで迫った。フィリピン側は警告したが、中国側は応じず、約30分間緊張が続いた。背景にはスカボロー礁の領有権問題があり、中国は実効支配を主張、フィリピンは反発している。専門家は、両国の不信感が続く中、領土問題の解決は困難な状況と指摘する。
危険な距離での飛行の背景に領有権を巡る問題
18日、南シナ海の上空でフィリピンの航空機と中国海軍のヘリコプターが異常接近した。

緊張が続いている両国だが、今回はわずか3mの距離まで近づき、あわや大事故になるところだった。双方が非難しているが、なぜこのような危険な事態が起きたのか。
近くを飛ぶヘリコプターは、飛行機の窓から肉眼でもはっきりと見えるほどだ。航空機の副操縦士はヘリコプターに対し呼びかけた。

航空機の副操縦士:
中国軍ヘリコプター、こちらフィリピン政府漁業水産資源局。あなたはあまりにも近くを飛行しており、非常に危険であり、我々の乗組員と乗客の生命を危険にさらしている。我々の飛行機から離れてください。

フィリピン当局の警告に対し、中国海軍のヘリコプターはそのまま近くを飛び続ける。記録のためか、カメラで航空機を撮影している様子も見られた。

フィリピン当局によると中国海軍のヘリが航空機の上から、さらに左側から接近し、わずか3mの距離まで近づいた。航空機の翼とヘリコプターが今にも接触しそうな距離だ。航空機に同乗していたAP通信によると「約30分間にわたって緊張が続いた」という。
両国の危険な距離での飛行は、なぜ続いたのか。背景にあるのは領有権を巡る問題だ。
拓殖大学 海外事情研究所・富坂聰教授:
スカボロー礁全体は、中国とフィリピンが領有権を争っていることで非常に有名な場所です。
中国とフィリピンそれぞれの主張が対立
スカボロー礁はフィリピンのEEZ=排他的経済水域の内側にある岩礁だ。

中国が2012年から実効支配をしていて、

周辺の海域では何度も両国の船による衝突が起きている。
拓殖大学海外事情研究所・富坂聰教授:
中国が支配しているといった場所に入ったりしなければ、(領有権を)認めてしまうことになるので挑発する。これを本当に激しいものにしていこうという意図は両方にはないけれど、ただそれを解決していこうという意味では、お互いがかなり不信感を持っているので、簡単にはいかない。
互いに譲れない領土問題。18日、中国軍は法に基づいて警告し、追い払ったとしている。

中国軍:
フィリピン側の航空機が中国政府の許可なく中国の領空に侵入した。中国の主権への深刻な侵犯だ。
一方、フィリピン当局は国際的な航空規則に違反し「この無謀な行動はパイロットと乗客の安全に重大な危険をもたらした」と非難している。
(「イット!」2月19日放送より)