サントリーはジン市場拡大に向け、55億円を投資し生産能力を2.6倍に強化する。人気ブランド「翠」をリニューアルし、「六」では四季を表現した限定商品を展開し、将来的に世界一を目指す。専門家は「日本らしさ」というアイデンティが、差別化のポイントになると指摘する。

生産能力2.6倍に…ジン市場拡大へ大規模投資

ジン市場の拡大をけん引してきた、サントリーによる新たな一手とは。

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桜がデザインされたグラスの中の透き通った宝石のような液体「ジンソーダ」。

砂川萌々菜記者:
サントリーが今日打ち出したのは、ジンを強化する新戦略です。

18日、国産ジンのリーディングカンパニー「サントリー」が発表した新たなジンの戦略。

日本のジン市場は、直近5年間で約3.5倍に拡大。さらにサントリーの推計では、2030年には、2024年と比べて約1.8倍になるという。

さらに若年層の酒離れが指摘される中、ジンは若い世代ほど人気があり、20代、30代の4人に1人は缶のジンソーダを月に一度以上飲み、通常のジンも20代の約18%が飲んでいる。

サントリー大阪工場・矢野哲次 工場長:
2026年にかけて55億円の設備投資で、新たなスピリッツ・リキュール工房を建設し、生産能力を2.6倍に増強します。

サントリーが誇る2つのジンブランド「翠」と「六」。

食事と一緒に楽しめるお酒として人気を博し、2020年の発売から10倍以上の売り上げに成長した「翠」は、初めてのフルリニューアル。香りを強化しつつ、後味のアルコール感を低減する。

ほんのり桜の香りと甘みのある「六」
ほんのり桜の香りと甘みのある「六」

砂川萌々菜記者:
こちら春限定のジン商品なんですが、香りを嗅いでみると、ほんのり桜の良い香りがします。甘みもあって、口当たりもかなりなめらかです。

約60カ国で販売され、世界第3位のプレミアムジンとなった「六」。

日本ならではの素材を使う強みを生かし、春には「桜」と夏には「茶」の特徴を際立たせ、日本の四季を感じられる季節限定商品を販売し、将来的には世界1位に上り詰めたい考えだ。

サントリー スピリッツ本部・塚原大輔 本部長:
素材と製法が、ジンについては非常に自由度が高いお酒ですので、いろんな作り方ができ、いろんな提案がお客様にできるかなと思っています。

世界でも注目の“ジャパニーズジン”市場拡大へ

「Live News α」では、一橋ビジネススクール教授の鈴木智子さんに話を聞いた。

堤キャスター:
今、ジンソーダが人気になっていますよね。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
2022年に発売されたサントリーの「翠ジンソーダ缶」をきっかけに、ジンソーダという新しいジャンルが若者たちに支持され、各社の参入が相次ぎました。

この際に、平野紫耀さんなどを起用して、おしゃれな飲み物であるというイメージが確立されたように思えます。

さらに、健康志向の現代にマッチしているお酒であることも見逃せません。痛風の原因となるプリン体も0に近く、ソーダで割れば、ハイボールと同じように糖質をあまり気にせず、飲むことができます。

堤キャスター:
実は、日本のジンは世界でも注目されているようですね。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
はい。世界のジン市場は拡大することが予測されています。世界最大のジン市場であるイギリスで一時期、ジンバブルのような需要の盛り上がりがあり、今後はアメリカでブームが来るとみられています。

ジンは、文化と歴史を融合できるお酒であり、日本らしいジャパニーズジンを強く訴求できると、世界でプレゼンスを獲得できる可能性が高いです。

日本の美学と職人技がジン市場に独自の価値を創出

堤キャスター:
今後ジャパニーズジンをさらに広げていくには、どんなことが鍵になるのでしょうか。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
ジンは、原材料のボタニカルの選び方や蒸溜方法によって個性を出せます。例えば、サントリーのジャパニーズクラフトジン「六」には、桜の花や柚子など、日本の四季が生んだ6種類の「和の素材」が使用されています。

ここで使われている原料は、海外では馴染みがないものもあるはずですし、顧客のリテラシーを高める取り組みは大切になります。

堤キャスター:
日本の個性が海外で受け入れられると良いですね。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
「日本らしさ」というアイデンティは、大切な差別化のポイントになります。美味しいジンと美しいボトル、そして麗しいストーリーの組み合わせによって、日本そのものを感じてもらい、価格に見合う価値を生むことが必要です。

日本のクラフトマンシップが感じられる逸品が、世界で支持されることを期待したいです。

堤キャスター:
サントリーはハイボール人気を仕掛けて、それを定着させた企業でもあります。これまで培ってきた技術と知見を生かして、日本ならではの美味しさをもっと世界に届けられたら良いですね。ジャパニーズジンの挑戦の行方を注視していきたいです。
(「Live News α」2月18日放送分より)