花王が、日焼け止め市場のグローバル展開を目指し、独自の技術を駆使して新商品を開発。従来のUVカット成分の問題を解決し、さらっとした使用感を実現した。世界市場に向けて規制や地域の習慣に対応した製品を提供し、2027年までに60の国と地域、2030年には1000億円の売上を目指す。

花王が日焼け止めの新技術で世界市場に挑む

世界で売れる日焼け止めを目指した。

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訪日外国人が日本で購入する商品として、「日焼け止め」が売り上げを伸ばしている。

花王ヘルス&ビューティケア事業部門 アジア(国際)事業推進部・神谷光俊部長:
市場に関しては、既にグローバルで1.6兆円ほどの規模があるとみています。世界中のお客様に我々の価値、それから、技術を通して価値や商品で実現させて頂きたい。

これまでグローバル展開の戦略として、薬事規制や関税などがEU・アジア型(化粧品)やUS型(医薬品)のように国や地域によって異なることから、世界同時展開が難しかった日焼け止めだが、花王は今回、同じ商品でありながら、それぞれの規制や地域の習慣に合わせて開発・展開するという。

さらに今回の新商品は、従来のみずみずしい使用感を生かしつつも、花王独自の“新たな技術”が詰め込まれている。

紫外線を防御するUVカット成分は水に馴染みにくいこともあり、これまで多くの成分を配合できなかった。しかし、新たに開発した独自技術で、従来品よりUVカット成分を多く含むことに成功。

実際に花王独自のUVカメラで見てみるとーー。

研究員:
日焼け止めは紫外線を吸収するので、このように黒く写る形になります。

記者リポート:
大分真っ黒に。しっかり守られているということなんですね。

UVカット成分が多くなったことで、むらなく紫外線から守ることを可能にした。さらにーー。

記者リポート:
従来品の方はちょっとぬるっとした感触があります。新しい方はさらっとしてて、しっとりした感触があります。従来品と比べると、ぬるぬるした感じは全然ないですね。

湿度に応じて変化する新たな【ポリマー】を配合することで、地球温暖化による高温多湿な環境にも、さらに対応できる質感を実現したという。

今回の新商品で、これまで日本にはなかったグローバルスタンダード商品にしようという狙いがある。

花王ヘルス&ビューティケア事業部門 アジア(国際)事業推進部・神谷光俊部長:
アメリカでは強い会社、メーカー、ブランドはなかなかアジア、ヨーロッパでは強くないですし、逆にアジア・ヨーロッパの会社は、アメリカではあまり強くないということがある。ただ単に商品を売るということではなくて、世界中のお客様に貢献できるという思いが我々のエネルギーとなっておりますので、我々の技術を使って世界に打って出ていきたいと思っています。

花王は2027年までに60の国と地域への展開と売上350億を目指すとしていて、さらに、2030年までにスキンプロテクション事業全体で1000億を目指したいとしている。

UVケア市場拡大の中で「信頼性」が選ばれるポイント

「Live News α」では、一橋ビジネススクール教授の鈴木智子さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
紫外線、やはり気になりますよね。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
はい。花王が日焼け止め製品で、世界戦略を加速させている背景には、UVケアが世界で拡大する成長産業であることがあります。

米国では、1時間ごとに2人以上が皮膚がんで亡くなっているという報告もあります。紫外線から肌をガードすることは、健康を守ることにも繋がるため、この需要を取り込もうという訳です。

堤キャスター:
消費者に選ばれる日焼け止めのポイントというのは、何かあるんでしょうか。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
消費者からすると、日焼け止め製品は使うまで本当に良いか分からない、といった悩みがあります。シーズンが終わってから日焼けしていなかったと、効果を実感することもあるのではないでしょうか。

そういった意味では化粧品の中でも、機能面をしっかりとコミュニケーションすることが求められています。マーケティング的には、ブランドに対する信頼が効いてくる製品でもあります。

差別化は日本の「強さ」と「やさしさ」

堤キャスター:
その信頼はどこか来るのでしょうか。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
スキンケア機能の高さが、差別化の鍵になります。具体的には、紫外線を防ぐ高い防御力と肌への使い心地の良さを両立させるのは難しいとされてきたのですが、この課題の解決に向け、各社がしのぎを削っています。

最近では紫外線を防ぐ効果が持続するように、UV防御を回復させる機能や美白やシワのケア、敏感肌への対応など、肌をケアする高機能化も進んでいます。

堤キャスター:
日本の日焼け止め製品が、世界で歓迎されるための鍵は何なんでしょうか。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
インバウンド客の日本土産で日焼け止め製品の人気は高く、これが国内販売を押し上げているとの指摘もあります。

ただ、グローバル製品を展開する際に超えなければならないハードルとして、国ごとに違う成分規制があります。それを花王が独自開発した技術でクリアした製品を世界で売っていこうとしている訳です。

紫外線を防いでくれる「強さ」がありながら、肌への「やさしさ」がある日本製品が、世界の人々に支持されることを期待したいです。

堤キャスター:
日常的に肌に使うものだからこそ、効果はもちろん、つけ心地や手軽さはとても重要です。気になる価格を含めて、目的や好みによって選択肢が増えると嬉しいですね。
(「Live News α」2月13日放送分より)

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