不信任決議を受けた秋田・鹿角市の関厚市長が2月5日、市議会を解散した。不信任決議案提出のきっかけは、関市長のパワーハラスメント疑惑を調査していた第三者委員会が市長のパワハラを認定したことだった。しかし、それ以前から市長と市議会との間には溝があり、その溝は様々な出来事を経て少しずつ深くなっていた。

市長就任からパワハラ疑惑発覚までの経緯

鹿角市の関市長は、2021年6月の市長選挙で初当選を果たした。その後、前の市長が官製談合事件で逮捕・起訴され、残された課題の解決に追われる日々を過ごした。そして就任から2年後の2023年、関市長の言動に議会が疑問を投げかける出来事があった。

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鹿角市の道の駅かづのを運営する第三セクター「かづの観光物産公社」で、仕入れ先が偏っていることや情報管理を問題視した関市長が、2023年9月の株主総会で社長の解任を提案した。

公社の株を過半数以上持つ市の提案だったため社長の解任が決定したが、議会は「事前説明がない」などと疑問を呈した。

これが発端となり、関市長と議会の対立が表面化。両者は協議を重ねたが、議会は「納得する説明が得られなかった」として、関市長に対する辞職勧告決議案を可決した。

その後、公社に関する関市長の発言の根拠について議会が調査を進め、その過程で関市長から職員に対するパワハラ疑惑が浮かび上がった。

本格調査でパワハラ認定

市は2024年7月、全職員を対象としたアンケート調査を実施した。その結果、約3割が「パワハラを疑う言動を受けた」、あるいは「見た」と答えた。

この結果を受け、関市長は「このような事態を招いたことを市民の皆さまに深くおわびするとともに、この報告を真摯に受け止め、深く反省し、職場としてのハラスメント防止対策に全力で取り組んでいく」と表明した。

当時、関市長は一部の発言を認めて謝罪した一方で、「抜き書きされている」などと主張する場面もあり、議会では進退を問う声が相次いだ。

鹿角市議会(2024年9月)
鹿角市議会(2024年9月)

鹿角市議会・金澤大輔議員(2024年9月当時):
(第三者委で)パワハラと認定されたらけじめをつけて辞める覚悟があるのか。
鹿角市・関厚市長:
透明で公正な市政を目指すことについて、多くの方に付託を受けて取り組んできている。大きな公約の実行を踏まえ対応したい。
鹿角市議会・金澤大輔議員:
全然透明じゃない、真っ黒ですよ。けじめどうします。

さらに第三者調査委員会が立ち上げられ、関市長の言動について調査を実施。12件をパワハラと認定した。

報告書の中には「こういうとき、霞が関では誰かが責任を感じてビルの上から飛び降りたりする」という発言があったことが明記されていた。委員会は「職員が死に値すると弾劾したものと受け止めても仕方ない。明らかに業務の適正な範囲を超えている」と結論付けた。

この結論に対し、関市長は「パワハラと認定されたことを大変申し訳なく思っている」と話す一方、「内容等で説明した部分が入っていない部分がある」と反論する部分もあった。
そして、「市の改革に向け、不退転の決意で頑張っていきたい」と述べたものの、議会は反発を強めた。

市長の不信任可決、議会解散へ

児玉悦朗議員は「あまりに大量のパワハラ行為と衝撃的な内容が第三者委員会で認定されたことで、この状態のままでは予算審議など市長に対して質問などできるものではない」と議会で主張、1月30日、議会はついに市長に対する不信任決議案を提出し、賛成多数で可決した。

不信任の決議を受けて関市長は、辞職か議会の解散かの選択を迫られた。

そして2月5日、関市長は「決まりました、議会を解散するということで」と、議会解散を選択。解散通知書の提出をもって、全ての議員が失職した。

議会解散を選択した理由について、関市長は「決議案について2025年度予算案の採決後にとお願いをした。議会が審議を放棄したのであれば、もはや議会とはいえない。したがって解散し、改めて民意を問いたいと考えている」と述べた。

新年度の予算案を審議する重要な位置付けの議会初日の不信任騒動で、予算成立のめどは立っていない。

議会解散を受け、中山一男前議長は「市長には、議会が不信任決議案を出した意味を重く受け止めてほしい」とコメントした。

解散によって市議選が40日以内に実施されるが、任期満了の場合に予定されていた日程と同じ、3月2日告示、9日投開票となる見通しだ。

選挙後、速やかに臨時議会が招集される見通しで、再び同じ顔触れが集まるとは限らないが、失職した議員の中に再び不信任決議案を提出しようという動きがあるのは事実だ。

もう一度不信任決議案が提出・可決された場合、関市長は失職する。失職した場合は50日以内に選挙が実施されるため、任期満了に伴う6月の市長選は前倒しとなる。

関市長は、仮に失職した場合どうするかは明言を避けたが、現時点で3人の新人が出馬の意向を示している。このうち2人は5日に失職した前の議員だ。

混乱のまま新年度迎えるか

市議選後、議員の顔ぶれが変わる可能性が高いほか、その後すぐに市長選となれば、混乱が続いたまま新年度に突入する可能性がある。

新年度予算案などの審議ができない以上、今後の市政、そして市民生活に少なからず影響を及ぼすことは避けられない事態となっている。市長と議員が歩み寄り、建設的な話し合いができなければ、同じことが繰り返されるかもしれない。

この事態をどう乗り越えていくのか、市民をはじめ多くの人が注視している。

(秋田テレビ)

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