ドジャース・大谷翔平選手の元通訳・水原一平被告に、大谷選手の口座から約26億円をだまし取った銀行詐欺などの罪で日本時間7日、禁固4年9カ月などの量刑が言い渡された。
水原被告が裁判長へ送った手紙を読み解くと、そこには“独特なロジック”による弁明が綴られていた。

水原被告から裁判長への手紙に書かれていたこと

これは、一連の裁判で、検察が証拠として提出した運転免許証。

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写真の人物は…「IPPEI MIZUHARA」。若かりし頃の水原一平被告だ。

検察は2008年、当時23歳の水原被告がカジノを訪れた際に、この免許証を提示したと確認。
全米30以上のカジノを調べた結果、水原被告の利用が確認できたのはこの1回だけだとして、こう指摘した。

検察:
水原被告側は、長年のギャンブル依存症が、犯行の原因だと主張している。だが、長年の依存症を示す証拠はない。

大谷翔平選手の口座から、約26億円をだまし取った銀行詐欺などの罪に問われた水原被告。

ギャンブル依存症などを理由に減刑を求めていたが、結果は検察の求刑通り、禁錮4年9カ月。
減刑を認めなかった裁判長は、“あるモノ”への不信感を露わにした。

裁判長:
水原被告の手紙には間違った説明が多く、重要な事実が省かれていると考えます。
法廷では、嘘を話してはいけません。私はこの手紙を信用できません。

それは、水原被告が1月、裁判長に宛てた3枚の手紙。

情状酌量を求める“最後の一手”だったはずが…内容を読み解くと、検察に否定された長年のギャンブル依存症だけではない、いくつもの“ほころび”があった。

(水原被告の手紙)
私は、あなたが判決を下す際に寛大さを求めており、刑が慈悲深く、懲罰的ではないことを嘆願しています。

その冒頭から、裁判長に「寛大さ」を求めた水原被告。
ここから、“独特なロジック”による弁明が綴られる。

「低賃金で困窮」と主張するワケとは

(水原被告の手紙)
私が、法律に反する行動をとった動機は何だったのかを話す必要があります。
2017年後半から、私は大谷翔平選手の通訳兼マネージャーとして働きました。私自身の人生だけでなく、家族の人生も犠牲にし、彼を最優先にしてきました。

(水原被告の手紙)
通常、日本の野球選手が渡米する際には複数のスタッフが同行します。
しかし、翔平が連れてきたのは、私1人でした。そのため、様々な業務をサポートすることになりました。

まず、水原被告が訴えたのは、大谷選手をサポートする業務内容。

あくまで水原被告の主張だが、24時間呼び出しに応じられる体制で、トレーニングから日常生活、CM撮影の日程調整まで、多岐に渡ったという。

(水原被告の手紙)
郵便受けの確認、自転車の修理、犬の病院やトリミングの手配、彼の結婚に向けた契約や打ち合わせに必要な日米の弁護士の調整を手伝うなど、雑務も日常的にこなしていました。
シーズン中より、オフの方が忙しくストレスも多いと感じていました。

そして、水原被告が言うには…

(水原被告の手紙)
給与が著しく低いと感じていました。
しかし私は、毎年更新される1年契約だったため、不満を言って解雇されるのを恐れて黙っていました。

手紙によると、大谷選手のエンゼルス時代、水原被告の年俸は約1290万円から3800万円。
これに加えて大谷選手本人から、シーズン中は月約2万円。
球団から給料が入らないシーズンオフは、月に約40万円が払われていたという。

それでも、低賃金で困窮していたと主張するワケは…。

(水原被告の手紙)
彼の日常生活のニーズに応えるため、彼の自宅近くに家を借りなければならず、家賃が高額になりました。
さらに、妻が永住権を取得する2023年まで、彼女は90日ごとに日米を行き来しなければならず、飛行機代を負担する必要がありました。
また、彼女が日本に滞在している間は二重の家賃を支払わなければなりません。

激務の一方、金銭的な負担も大きく、時に家族や友人から借金をするほど困窮していたと主張した水原被告。

大谷選手を取材し、水原被告とも懇意にしてきた小谷記者は、手紙について…。

フルカウント・小谷記者:
読んだ時、本当に信じられない感情になりました。
(水原被告と)2015年から接してきた人間だったのに、こんな人間になってしまうんだなっていうか、ずっと大谷選手の凄さだったり、そういったような話していたので、サポート生活が苦痛だった、ストレスだったですとか、給料が低かったとか、とても感じなかったので。
その水原被告が本当にこんなこと思ってるのかなって。我々と接してるのも苦痛だったのかなとか。

当時は、仕事の辛さも、金銭的な余裕の無さも感じたことはなかったという。

異変感じた年に水原被告が出会っていた「ギャンブル胴元」

一方で、今思えば、水原被告にある変化が起きていた…。

フルカウント・小谷記者:
ずっと電話だったり、携帯と向き合って。通路でよく頻繁に電話するケースっていうのはかなり、エンゼルスの後半の方からかなり増えてましたので。何か我々とも接したがらないというか…。

水原被告に異変を感じたという2021年。
まさにこの年、水原被告が裁判長に宛てた手紙では、ギャンブルの胴元に出会ったと明かしていた。そして…。

(水原被告の手紙)
2024年初頭まで、彼が「違法なブックメーカー」だとは知りませんでした。
私はお金に困り果てていて、これが自分を助ける手段になるかもしれないと愚かにも考え、彼のウェブサイトでスポーツベッティングを始めました。

ここから水原被告は、さらなる“独自のロジック”を展開する。

(水原被告の手紙)
気がつくと、ギャンブルで借金は膨れ上がり、それを返済する唯一の方法が翔平のお金を使うことだと。
罪悪感を覚えましたが、当時はそれが唯一の解決策に思えたのです。ギャンブルで勝つことで借金を返済し、翔平に返すしかないと考えていました。

3枚の手紙の中で、水原被告は、大谷選手のサポート業務が時間もお金もかかる仕事だったため困窮し、ギャンブルに救いを求めた…。
そして、大谷選手のお金にまで手を付けるしかなかった…と主張。

さらに、手紙の後半では妻にも言及。

(水原被告の手紙)
彼女は、私の経済的困窮に気づいていませんでした。
なぜなら私が、彼女のストレスと不安を避けるために、隠していたからです。
私たちはまだ、いつか子どもを持ちたいと希望していますが、服役が長期に渡れば致命的になると感じています。
結果を受け入れる準備はできています。ただ、少しでも寛大な判決をお願いしたいと思っています。

「手紙の内容が真実であるという説得力なかった」

こうして、情状酌量を求めた水原被告。

だが、7日 量刑言い渡し裁判を傍聴した現地ディレクターが見たのは…。

ディレクターリポート:
判事からの質問が、とても厳しく追及されていたということが印象に残りました。

裁判長はまず、手紙の内容について水原被告の代理人弁護士を追及した。

裁判長:
ストレスがあったということですが、どんなストレスですか?

弁護人:
経済的なストレスです。

裁判長:
金銭面でのストレスということですね。検察の資料によると、水原被告は球団から十分給料を受け取り、大谷氏からも支払われていましたよね?歯の治療代も大谷氏に払ってもらったと書かれていますが…?
水原被告の妻が日米を行き来する飛行機代がかさみ、生活費を圧迫したとのことですが、検察の資料によると、ファーストクラスの飛行機代を出していたのは、大谷氏ですよね?

弁護人:
(大谷氏が) ある程度は支払っていたと思います。

裁判長:
検察の調べでは、大谷氏が水原被告の家賃を支払っていた、とありますが?

弁護人:
少なくともある一定の期間は(大谷氏が) 支払っていたと思います。

代理人弁護士が明確に反論できない中…裁判長は、手紙のこの内容にも疑問を呈した。

(水原被告の手紙)
ギャンブルで勝つことで、翔平に返すしかないと考えていました。

裁判長:
水原被告はギャンブルで勝った時も大谷氏にお金を返していませんよね?
大谷氏の「郵便物の確認」という業務は、銀行から届く明細書などを、本人に見られないようにするためではありませんか?

結果、減刑はされず、禁錮4年9カ月。

傍聴したフルカウント・小谷記者は、水原被告について…。

フルカウント・小谷記者:
ちょっと血が通ってないような、無表情というか。
いつも球場の時は、挨拶したら必ず返してくれるような方でしたし、もう本当に…本当にショッキングな瞬間でもありましたね。

この量刑に、水原被告の手紙はどう影響したのか?
現地・カリフォルニア州の元裁判官・ウォーカー氏は…。

ウォーカー元裁判官(カリフォルニア州連邦地方裁で裁判官を21年間務める):
手紙は、自身の違法行為をできるだけ正当化できる機会でしたが、うまくいきませんでした。

ウォーカー元裁判官(カリフォルニア州連邦地方裁で裁判官を21年間務める):
手紙の内容が真実であるという説得力が何もなかったので、さらに墓穴を掘る結果になってしまいました。

そして裁判後、検察側は…。

検察:
大谷氏は、この事件の被害者です。
彼は水原被告に利用され、食いものにされました。

検察:
水原被告は嘘をつき、だまし、盗みを働いたのです。

厳しい言葉を投げかけられた水原被告…手紙がどこまで真実かはわからないが、この言葉は本心であると願ってやまない。

(水原被告の手紙)
私は翔平を野球選手としても人間としても本当に尊敬しています。

(水原被告の手紙)
彼の私への信頼を裏切ったことを、心からお詫び申し上げます。
(「Mr.サンデー」2月9日放送より)