2025年1月22日午前6時半ごろ、JR郡山駅前で横断歩道を渡っていた19歳の女性が車にはねられ死亡した。女性は大学受験のために福島県郡山市を訪れ、この日が試験の当日だった。車を運転していた男の呼気からは、基準値を超えるアルコールが検出され、酒気帯び運転などの疑いが持たれている。

事故から1週間 死を悼む人々

事故から1週間が経った1月29日、警察が事故現場付近の道路を通行止めにし、さらに詳しく捜査を進めていた。その近くでは、奪われた命を悼み花が供えられていた。その花は日々、増えている。

事故から1週間 現場を通行止めにして捜査が行われる
事故から1週間 現場を通行止めにして捜査が行われる
この記事の画像(10枚)

現場の近くにある善導寺の住職・中村宜孝さんは事故の翌日、発起人となり亡くなった横見さんの供養をした。「郡山に住んで学びたいという思いとか、きっと来年には、成人式も控えていたのだと思う。そういった思いや夢が絶たれてしまったのは非常に残念でなりません」と中村さんは話す。

事故翌日 中村さんが発起人となり供養が行われる
事故翌日 中村さんが発起人となり供養が行われる

事故を起こす前日、会社の飲み会に参加すると家族に話していたという容疑者。調べに対し「市内の飲食店で約6時間にわたり酒を飲んでいた」などと供述している。

飲酒運転をなくす 被害者家族の思い

「息子が生きていたら30歳ですね。どういう風になっていたかというのは、今でも思います」と話すのは、飲酒運転の車による事故で息子を亡くした山本美也子さん。
2011年2月9日、福岡県粕屋町で当時高校1年生だった息子の寛大さんと友人が歩道を歩いていたところ、飲酒運転の車にはねられ死亡した。

福岡県粕屋町 事故があった現場
福岡県粕屋町 事故があった現場

山本さんは「被害者の方は、いつもルールを守っている。我が家もそうでしたけど、とにかく普通にルールを守っていただけなのに命が奪われてしまう。本当に理不尽そのもの」と話し、福島県・郡山駅前での事故を受け飲酒運転への憤りを改めて感じている。

NPO法人はぁとスペースの理事長を務める山本美也子さん
NPO法人はぁとスペースの理事長を務める山本美也子さん

福岡県では飲酒運転を見かけた場合、110番通報を義務づける独自の条例が整備されている。山本さんは「交通事故が起こってしまうのは、動いている者同士、防ぎきれないことはあると思う。ただ飲酒運転だけは0になるはず」と話し、飲酒運転への取り締まり強化はもちろん、学校や職場などでアルコールの怖さを伝えることが必要と考えている。

感覚と数値に違い

「酒を飲み、自宅で休憩したあと車を運転した」調べに対し、こう供述しているという容疑者。飲酒をした後、体内にアルコールはどのくらいの時間残るのか?医師の立ち合いの基、検証をした。

福島テレビ・氏家彦斗記者による検証
福島テレビ・氏家彦斗記者による検証

500ミリリットルの缶ビール3本分を摂取。呼気から検出されるアルコールが、6時間後にどの程度あるかを調べた。飲酒後の呼気からは1リットルあたり0.3mgのアルコールが検出された。これは酒気帯び運転・基準値の倍に相当する。

500ミリリットルの缶ビール3本分を摂取 飲酒後の結果
500ミリリットルの缶ビール3本分を摂取 飲酒後の結果

6時間後、被験者は「飲んだ直後のふらつきも消え、かなり頭もすっきりしている」と話すが結果は、呼気1リットルあたり0.15mg。6時間が経過しても数値は半減に留まった。

6時間後の結果 酒気帯び運転の基準値は0.15mg/l以上
6時間後の結果 酒気帯び運転の基準値は0.15mg/l以上

検証に立ち会った「おおひら内科クリニック」の大平俊一郎院長インタ「頭がすっきりしていると言っていたが、それが結局酒気帯びの0.15mg/lという呼気濃度。頭がすっきりしてるいからもう大丈夫だと思わないでほしい」と話す。

睡眠中はアルコール分解が遅くなる

個人差はあるが20gのアルコール量(ビール500mlや日本酒1合、ウイスキーダブルなど)を摂取すると、分解には約3時間半かかるという。また、睡眠中はアルコールの分解が遅くなるため、夜遅くまで飲んだ場合、翌日の運転は危険だ。

20gのアルコール量 分解に約3時間半
20gのアルコール量 分解に約3時間半

おおひら内科クリニックの大平俊一郎院長は「判断力の低下や注意力の低下、情報処理能力の低下などがある。運転をするならお酒を飲まない。翌朝運転することがあったら飲まないというのが一番いい」と話した。

判断が曖昧な危険運転致死

事故直前に、少なくとも3カ所の信号を無視し、制限速度の時速40キロを超えるスピードで交差点に突っ込んだとみられる容疑者。「急いでいたから信号無視をした」などと供述している。警察は危険運転致死の疑いも視野に捜査を進めている。(2025年1月29日時点)

信号を無視し横断歩道に進入する容疑者の車
信号を無視し横断歩道に進入する容疑者の車

この危険運転致死については、どんなケースが該当するかは曖昧で、適用のハードルの高さや裁判所の判断のばらつきが、問題視されてきた。
2025年1月28日に鈴木法務大臣は、危険運転致死傷罪に関し速度や体内アルコール濃度など要件の明確化を、2025年2月の法制審議会に諮問すると発表した。今後法律の改正に向け、議論が進められる。

(福島テレビ)

福島テレビ
福島テレビ

福島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。