2024年の夏以降、「令和の米騒動」として全国的な問題となっているコメ不足。秋になって新米が出回れば、値段も落ち着くはずと期待されていたが、年が明けても全く価格は下がらず“高止まり”のままだ。家計を預かる主婦たちからは、「いつ収まるのか?」「なんとかして欲しい!」と悲鳴と共に怒りの声が上がっている。
“出し渋り”コメ高騰の要因か
福岡市のスーパー「エムズ美和台店」。店長の久松浩一さんが「また来月くらいからコメの値上げ申請が来ております」と頭を抱える。「県産米の『夢つくし』は、5キロ200円~300円くらい売値が上がると思う」と今後の見通しを語った。

そもそもコメの価格の高止まりは、なぜ続いているのか?久松さんは「農家があまりコメを出さないという状況を聞いている。“出し渋り”というか…」とやや言いにくそうに実情を話す。更に「コメは全くの不作とかではなく、出荷する所が制限をかけたりして、潤沢にモノが入ってこないのが1番の値上がりの原因」と付け加えた。

「恵方巻」も“シャリ”高騰で値上げ
コメの価格高騰は、季節の行事にも影を落している。2025年の「節分」は、2月2日。節分といえば「恵方巻」を食べる習慣が全国的に広がっているが、福岡市内の寿司店でも値上げに踏み切る店がある。

福岡市の「福ずし」では、七福神にちなんでエビやウナギなど7種の具材を使用した「恵方巻」を提供している。注文は完全予約制で、価格は税込み900円。前年の780円から120円値上げしたという。

「米をはじめ、全ての食材が値上がりしたので、上げたくはなかったが苦渋の選択です」と話す店主の溝上雄一さん。ノリや魚介類など恵方巻きに必要な具材は、軒並みの値上がり。特にコメの価格高騰は、酢飯が必需品の寿司店にとって大きなダメージだ。「コメは、寿司にとって命みたいなもの。だから品質を下げる訳にはいかない」と苦しそうに語った。

国が初の“備蓄米放出”検討
コメの値上がりの影響は、日々の生活で利用者の多い“コンビニ弁当”も直撃している。大手コンビニチェーンの「セブン-イレブン・ジャパン」は、おにぎりや弁当、それぞれ14種類を1月末以降、順次値上げする。

おにぎりは最大28円値上げされ、「塩むすび」は、108円が128円に引き上げられる。弁当も最大60円の値上げ。「若鶏のジューシー唐揚げ弁当」は、530円から580円に引き上げられる。

全国的にコメ関連商品の値上げの動きが広がる中、国は、初の“備蓄米放出”の検討を発表した。「新しいコメが出てくれば、市場が落ち着くという見通しを農林水産省として持っておりましたが、今年に入っても高い状況が続くのではないかという予測がある。安定的に食料を供給する義務が農林水産省としてはある」と江藤農水相が強い決意を示した。

“備蓄米放出”とは、コメの流通が滞っていると判断される場合、JAなどの集荷業者に対し、買い戻すことを条件に政府の備蓄米を販売できるようにするというもの。流通不足の解消のため備蓄米を活用するのは、今回が初めての試みとなる。
“備蓄米放出”でコメ値下がりする?
備蓄米が放出された場合、店頭での販売価格はすぐに下がるのか?宇都宮大学農学部の小川真如助教は「備蓄米が放出されると集荷業者と卸業者との取引価格、過熱した状態が収まるだろうとは思う。ただ、消費者にとっては、恐らく価格は、すぐに下がるものではないと思う」との見通しを示した。

更に、このタイミングでなぜ国が“備蓄米放出”に踏み切るのか?小川助教は「特に危惧されているのは国産米離れ」だと指摘する。国内の流通段階でコメの品薄が続き、価格上昇が続く中、コメの民間の輸入量は、過去最高レベルにまで上がっている。今後も国内産のコメ価格が高いままなら『もう輸入米で良い』と考える国民が増えてくる。そうした考えを抑える狙いもありそうだ。
物価高騰の中、これまでコメだけがずっと安すぎたので、コメ農家は苦しんでいたという実情もある。なので備蓄米が放出されても、かつての『安すぎた状態』にまでは戻らず、今、出回っている『高すぎるコメ』よりは安くなるのではと予測されている。

果たして「令和の米騒動」と呼ばれる異常な状況は、いつ収束するのか?農水省の“備蓄米放出”を検討する審議会は、1月31日に開催される予定だ。
(テレビ西日本)